映画『ホムンクルス』スペシャルインタビュー 映画監督・清水崇さん

カルト的人気を誇る山本英夫の人気同名漫画を綾野剛主演で映画化した『ホムンクルス』が4月2日(金)より期間限定公開。記憶も社会的立場も失った主人公の名越(綾野)が、研修医・伊藤(成田凌)から頭蓋骨に穴を空ける手術“トレパネーション”を受けたことによって運命が狂っていく様を描く。映像化は不可能だと言われていた本作のメガホンを取ったのは『呪怨』シリーズをはじめ、ジャパニーズホラーの巨匠として国内外で活躍している清水崇監督。インタビューでは、映画化されるまでの裏話や個性豊かな俳優陣の印象などを語ってもらった。

「良い作品にしたいという気持ちのぶつかり合いが面白かった」

――原作と出合った時に興味を惹かれた部分はどこですか?

具体的な精神を具体的にビジュアル化して見せているという思いっきりの良さですね。意外とありそうでなかった作品だなと思いました。内容的にSFやモンスターものに行くのかと思いきや精神間での人とのやりとりが展開される。ある意味では戦いなんですけど、自分との葛藤も含めて何かそっちの方に行こうとしているところに興味を覚えました。言ってみれば中年男のバディものですし、「少年ジャンプ」だったら“戦い”や“友情”に持って行かれがちだけど、決してそっちには行かない。精神世界のセンチメンタルなやりとりがちゃんと繰り広げられていく点が面白いですよね。

――原作ファンの間でも映像化が難しいと言われていた作品です。映画化が決まるまでには、どんないきさつがあったんですか?

「ビッグコミックスピリッツ」編集部からの依頼で原作者の山本(英夫)先生と対談をすることになって、原作の存在を知ったんです。原作者の山本先生本人からコミックスいただいて……贅沢ですよね。それが初対面だったんですけど、たまたまお互いの事務所が歩いて5分ぐらいのところにあって。一緒に酒を飲みに行くようになったんです。その頃は、まだ連載中で「映画化したらいいね」とか「その時は監督をお願いしますよ」なんていう軽口レベルの話をしていて。それが10年ぐらい前ですかね。その後、映画化の話が少しずつ動き出して「あぁ、ホントにやるんだな」って思っていたら二転三転。まさか、こんなに大変な10年もの企画開発を経るとは思わなかったです(笑)。やはり、それだけ難しい題材なんだと思います。

――対談から映画化が実現するまで10年の月日が流れたんですね。

今回、映画ができるまで尽力してくれた人たちは数えきれないぐらいいます。主人公の名越を綾野くんが演じるとか、伊藤役の成田くんがスケジュールを合わせてくれたとか。いろいろなことが重なって完成しました。今振り返ると、必要な10年間だったのかなと思います。

――原作の世界観を映像化する上で苦労したことは?

連載時は女子高生がルーズソックスを履いていた時代だったこともあり、原作に通じているテーマを変えずに、時代背景を今に合わせながら映画用にアレンジする作業は大変でした。原作のファンはたくさんいらっしゃるし、僕もその中の一人。あの原作を1時間半、2時間の映画にするのはかなり難しいんですよ。「組長(内野聖陽)のエピソードは外せない」「女子高生1775(石井杏奈)の話を入れなくてどうするんだ」と、いろいろな意見が出たんです。もちろん、それは僕も強く感じていましたから。それでも削らねばならないエピソードや描写もあって……原作に登場しないキャラクターも含めて映画用にアレンジしながらどうやって帰結させるのかということに一番苦心しました。

――脚本は清水さんを含めて3人で担当されたんですね?

いや、脚本に関してはほとんど内藤瑛亮さんと松久育紀さんが書いてくれたようなものです。僕は現場に向けて、土壇場で直したという感じ。とは言え、かなり変えてしまったんですけど(笑)。僕だけではなく綾野くんからのリクエストやプロデューサーの意見などもあったりして。内藤さんと松久さんの許可を得てから直して、それを確認してもらうという時間がなくなっていき、もう途中からは、こっちに任せてもらえないかと頼み込んで。10年ぐらいずっと作ってきた脚本家の2人には本当に申し訳ないなと思いつつ、現場でも手を入れていきました。

――その修正作業も試行錯誤の繰り返しでしたか?

そうですね。綾野くんは綾野くんなりに主役として「自分はこう思う」という意見があって、僕も監督としてこんなふうに作っていきたいという思いがある。お互いに良い作品にしたいと思っているからこそ譲れなかったりして。そのぶつかり合いは面白かったですけど、それを撮影しながら、まとめていく作業はものすごく大変で、三宅プロデューサーにも助けてもらいました。

――そんな中で、名越と伊藤というキャラクターを描く時に心掛けた点は?

名越と伊藤のパワーバランスですかね。綾野くんが演じる名越は、自分の芯がいったい何なのか分からなくなっている男……しかし、綾野くんは今勢いも存在感もあり過ぎる位の俳優。一方、成田くんが演じる伊藤は、自分の理念や研究対象に向かって突き進む力を持ちながら、彼も自身を掴めずにいる。そんな二人が接触すればするほど、名越は以前以上に自身を取り戻し、伊藤の方がどんどんブレていく。その反比例のバランスをどうやって見せるのか。綾野くんや成田くんといろいろ話しながら撮りました。二人とも自分の考えをしっかりと持っていて。あ、こういう部分があるから人気があるんだなって思いました。

――内野聖陽さん、石井杏奈さん、岸井ゆきのさんが演じたキャラクターにも注目ですね。

名越に深層心理をえぐり出される組長を演じた内野さんにCGが絡むシーンの説明をしたら「監督、申し訳ないけどCGとか全然分からない。自分なりにやってみるから、後はお任せします」と言われ、「そこは大丈夫ですよ」と。CG合わせって、気持ちでやる芝居と都合や間合いが大変ですからね。でも、完成した作品を見てもらった時に、内野さんが一番分かりやすく感心してくれたんです。「こんなにヒューマンな話だったんですね」って(笑)。もちろん、台本を読んでいるから内容は分かっているんですけど、どんな画で、どんな感情のシーンになるのか? 特に内野さんの役回りは前半だったので、映画全体への想像が追いつかなかったんだと思います。「こういうのもいいですね!」って子どものようにハシャいでる姿がかわいかったです(笑)。「渋くて、かわいいオヤジ……なんていいな」と。次は内野さんとコメディをやりたいと思いました。女子高生1775役の石井さんは原作に合わせて髪をバッサリ切ってくれたんです。その思い切りの良さもそうですし、結構きわどいシーンも面白がって飛び込んでくれました。メインキャストの中では一番年下だったんですけど、一番大人で賢い人だなという印象です。生粋の女優ですね。岸井さんが演じた謎の女は原作に出てこないキャラクターで僕のたっての希望でお願いしました。脚本がどんどん変わっていく中で、どう演じたらいいのか困惑したと思うんですけど、自分なりに考えながらしっかりと役柄を捉えて体現してくれました。

――では、最後にメッセージをお願いします。

映画を見終わった後、自分の中に何かを探すような感じになってくれるとうれしいです。自分の"ホムンクルス"はどんな姿なのか?と恥ずかしくいたたまれなくなるような読後感を味わってもらえる作品になっていたらいいなと思います。年齢、性別問わずいろいろな方たちに観ていただけたらうれしいです。

――ありがとうございました!

作品情報

映画『ホムンクルス』4月2日(金)より期間限定公開
https://homunculus-movie.com/

    

    

    
    
あらすじ

累計発行部数400万部超えの山本英夫による同名コミックを実写映画化。車上生活を送る記憶喪失の男・名越進(綾野剛)の前に、奇抜なファッションに身を包んだ研修医・伊藤学(成田凌)が現れる。伊藤に懇願され、名越は頭蓋骨に穴をあける「トレパネーション」の手術を受けることに。第六感が芽生えると言われる「トレパネーション」は、名越に人間が異様な姿に変貌した世界を見せる。伊藤はその現象を「他人の深層心理が、視覚化されて見えている」と説き、異形たちを「ホムンクルス」と名付けるのだった。

キャスト・スタッフ

出演者:綾野剛成田凌岸井ゆきの石井杏奈内野聖陽
監督:清水崇
脚本:内藤瑛亮松久育紀清水崇
原作:山本英夫「ホムンクルス」(小学館「ビックスピリッツコミックス」刊)
配給:エイベックス・ピクチャーズ


撮影:島村緑 取材・文:小池貴之
(C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ


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