二人へのインタビューが行われたのは6月14日、ちょうど旧暦の5月5日で、中華圏では端午節といって日本でいう端午の節句をお祝いする日。台湾では肉粽を食べる日だったことから二人には粽を食べたかどうかの話から聞いてみたわ。
歐陽:今日はよろしくね! 今日は端午節だけど二人は粽食べた?
ハンク:食べたよ。
アーロン:食べてない。
ハンク:アーロンは食べてないんじゃないかな。
歐陽:どうしてアーロンは食べてないって思うの?
ハンク:だってあれはカロリーを摂取するものだから、アーロンはそういうものは食べないはず。
アーロン:そうそう! ハンクが答えてくれた(笑)
ドラマ撮影の裏話を大公開!
一番大変だったところはどんなところ?
ハンク:苦労したところ……大きな苦労はなかったんだけど、僕にとっていちばん大変だったのは「疲労」かな。一か月っていう限られた時間の中で撮影を終えなきゃいけなかったからスケジュールが普段の撮影よりも過密で、アーロンと僕は基本的に家に帰ってから休む時間が3時間しかなかったんだ。3時間休んでそして次の撮影に向かうっていう感じ。だから苦労したっていうとその時間のところだけかな。睡眠時間と休む時間。他は、撮影での苦労は感じなかった!
アーロン:そうだね、ハンクが言った通りスケジュールは結構詰まっていたから、その日の撮影が終わると「じゃあ、また後でね」って言って別れる。3時間くらい休んでまた家を出ることになるからね。時間の部分以外で苦労をそんなに感じなかったのは、僕たちが撮影に集中できていたからだと思う。アドレナリンが出てる感じっていうか。そういうテンションだったから毎日の撮影に集中して望めた。それにスケジュールが密で一日の撮影時間が長くなる、撮影のシーンが多くなるってことは事前に知ってたから、心の準備はできていたんだよね。
歐陽:体調の管理はどうしてたの? 休める時間が1日3時間だけじゃ大変だったと思うんだけど。メイキングなんか見てると、そんなふうには全然見えなくて、二人とも楽しそうにみえたわよ?(笑)
アーロン:そう?(笑)
ハンク:僕はクランクアップから一週間くらいがすごく疲れてた(笑)
アーロン:後遺症だね(笑)
ハンク:そう、どんなに寝ても寝たらない感じ(笑)
アーロン:ママはさっきメイキングの感じがリラックスしてるように見えたって言ってたけど、僕らは集中できていたし、それに焦れば焦るほど撮影がうまくいかないってことを知ってるからね。スケジュールや時間はテンションが掛かったものだったけど、僕らはリラックスしている必要があった。時間のプレッシャーが頭にあり続けると結局よくないんだ。
歐陽:緊張してたって何の役にも立たないってことなのね。アーロンが前回のライブで言ってた「一生懸命」、自分がその瞬間に持てる力を全部出し切るっていう感覚かしら。
アーロン:そう、力を出し切った後は仲間、チームを信じること。石磊はもちろんだけど、監督、副監督、照明…みんなを信じること。
それから僕にとって印象が深かったところは、まだ話したことないんだけど、ドラマ後半にある、石磊を探して走り回るシーンで、実は履いてた革靴が合ってなかったんだ。歩くたびに足の裏が裂けそうになる感じがして、あれは大変だったな。
BLを演じるために準備したことは?
歐陽:アーロンは5年ぶり、ハンクはBLを演じるのは初めてということなんだけど、撮影前に何かほかの作品を見て参考にしたことはある?
ハンク:二作品くらいみたんだけど、直接的に「参考にした」ってことはなかったよ。その作品を見たことで自分の「約・定」を演じるうえでの解釈が変わったとかそういうことはなかったな。僕は僕の解釈でBLを演じようと思った。自分の心から自然と出てくる、相手への愛情には性別は関係ないと思ったから。
アーロン:確かに、自分の解釈で表現できることが一番「特別なこと」だよね。
ハンク:例えば「受」と「攻」の話でも、そんなにはっきりと分ける必要もなくて、石磊の性格は割りに「ストレートにものを表現する人」だし、自分の石磊に対する解釈で演じることが大事かなと思ったんだ。
アーロン:(親指を立てる)。
歐陽:そうね、ことが起きるときは自然に起こるものよね(笑)
二人:そうそう。
歐陽:アーロンは? この5年BLを注意してみてたりした?
アーロン:「約・定」撮影の前には(日本語で)「チェリまほ」は見たよ。でも僕も石磊の考え方と同じで、自分を一つの枠の中に押し込んだりすることで表現上の制限がかかってしまうようなことになるのは避けたかった。金予真は横暴で、そのことに対する説明もしないような人だけど、でも「横暴ディレクター」っていうのはこういうものだっていう固定観念をもつのは良くないと思って、もう一つ僕の考えを加えてみたかった。
金予真はニッケルアレルギーで完璧主義、それに少し潔癖なところもあるから、僕は――ちょっと古いんだけど――1997年の「恋愛小説家」を見たよ。(主人公には)日常生活でも強烈な完璧主義と潔癖があって、そういう部分って金予真にとっても彼の人生に大きな障碍となるものだと思うし、それでこの映画を見て完璧主義や潔癖の表現を参考にしてみたんだ。
歐陽:なるほどね、みんなメイ
キングを見て知ってると思うけど、アーロン本人には潔癖なんてないんだものね?(笑)
二人:(笑)
アーロン:その通り!(笑)
歐陽:そうか、自分にない部分の表現っていうことで参考にしたのね。
アーロン:そう、まずは、「なぜ完璧主義なのか、なぜ潔癖なのか」を理解しないと。そうして一つの視点を手に入れることができればそこから改めて完璧主義と潔癖を見ることができるからね。
潔癖についてはネットでも調べたりしたけど、どういうふうになったら気持ち悪さを感じたり鳥肌が立ったりするのかとか。(潔癖には)いろんなことに自分のやり方が必要で、電気のスイッチは3回押して消すとか、蛇口は何回まわして開けるとか、それぞれの人の、自分の生活の儀式みたいな、ほら、横断歩道を渡るときは絶対に白いところしか踏まないとか、左右の一歩一歩で最後は必ず左じゃなきゃいけないとかね。
歐陽:二人は自分にはそういうこだわりある?
ハンク:ないな。
歐陽:全然ないの?
ハンク:うん、ない(笑)
アーロン:僕は部屋のどこに何を置くっていうのには結構こだわりがあって、勝手に動かされるのはあんまり好きじゃないけど、そんなに強いこだわりはないな。
二人の出会い
金石CPの距離の縮め方
歐陽:二人は役が決まってからどうやって仲良くなったの?
アーロン:もちろん最初はお互いにそんなに親しいわけじゃなかったけど、「本読み」のころからだんだんお互いに分かってきたっていう感覚があったかな。
ハンク:(大きく頷く)。
アーロン:少し話しただけだったんだけど、「あれ、結構気が合いそうだな」って思えて。
ハンク:うんうん。
アーロン:共通の話題もあったしね。
ハンク:僕らはプロモーションで顔を合わせることが多かったけど、アーロンがどういう生活スタ
イルで過ごしてるか、僕はものすごくよく分かってるから。
アーロン:そうだね、よく分かってる。
ハンク:そう、よく分かってるから共通の話題もあるし、話せば話すほどに仲良くなれた。
歐陽:共通の話題って?
ハンク:そう、すごくいっぱいあるんだ。
歐陽:例えばどんなものがあるの?
ハンク:普段どういう店で食事するかとか、僕ら二人とも行ったことがある店でどの店がどうだとかさ(笑)
アーロン:そうそう。僕らの生活範囲がかぶってた時期があって、すごくローカルな話ができたりしたんだ。
ハンク:そのあたりの人しか知らない店だね。
アーロン:麺専門店とか夜食(宵夜)の店とか、そのあたりのトップ3の店とかね。
歐陽:じゃあ、それって二人だけの世界だわね。
二人:その通り(笑)
歐陽:そうね、「二人だけが知ってること」っていうのは二人の距離を縮めるのに一役買ったでしょうね。
ハンク:そう、最初のその共通点がスタートだったんだけど、その後は随分話せたな。
アーロン:前から知ってる人に会ったみたいな感覚かな。だから仲良くなるために何か特別なことをする必要なんてなかった。
本読みの後で連絡先を交換して、何か考えたりしたことがあればお互いにシェアしたり、お互いの意見を交換したりしたんだ。
前半はここまで!
どうだった? 休息に充てられる時間が3時間って、とにかくびっくり。やっぱり大変なんだね。あたしは二人と話してとにかく二人とも誠実だと感じたわ。あたしが適当に(おい)聞いてることにも時間をかけて考えて、真摯に答えてくれてるのをひしひし感じた。人となりが如実に表れてるって感じね。二人の「距離の縮め方」もなんだか普通の男の子って感じがしない? 親近感あるよね。ものすごく自然に、無理なく仲良くなっていったんだろうなって想像できる。撮影って大変なのね……。あたしには想像もできない世界だけど、やっぱりプロフェッショナルなんだなって、話を聞いて改めて思ったわ。
次週後半部は、ハンクが日本での生活について、アーロンは演技との向き合い方について話してくれた部分をお届け。お楽しみに!
作品紹介
Be Loved in House 約・定~I D
あなたと僕の約束は愛することになるための定め
創業約10年の「精誠スタジオ」は、業績が悪く存続の危機にある。その経営権を買い取った金予真(ジン・ユージェン)が新任のアートディレクターに就任。しかし、その就任初日にスタジオの空気が一変してしまう出来事が起こる!「シングル規約」なるものが貼り出され、社内恋愛禁止、結婚したら解雇、と書かれていた。これは間もなくプロポーズしようとしていた王靖(ワン・ジン)と白筱倩(バイ・シャオチエン)を危機に陥れるものだった。スタジオの社員たちは石磊(シー・レイ)のリーダーシップのもと、この新たなアートディレクターに抗議する。しかし一向に埒が明かず、「シングル規約」を廃するために秘密の計画を実行するのだった…。石磊は金予真に張り付き、この横暴なディレクターの恋愛の証拠を掴もうとする。だがさまざまな巡り合わせの結果、鋼鉄の暴君ディレクターが、孤独と、過去の恋に傷ついた心を抱えていることを知る。石磊の金予真に対する好奇心は、次第にかき立てられていく…。
出演:アーロン・ライ、ハンク・ワン、ウェイポー・リァオ、ユー・ジェエン、ディーン・リー、スタン、フェアリー・ヤオ、エイミー・アイ、リン・ジャーヨウ
監督:ジアン・ビンチェン
脚本:ジーディエン
執筆者情報
歐陽ママ
早稲田大学大学院修了。論文のテーマは台湾の文化。
2012年から2013年にかけて台湾で生活、日本語の先生などしてふらふらする。
新宿二丁目では新型コロナの影響もありあたふた。今は新しいお店をオープンしようと画策中。
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