物語は政略結婚から始まる。瑞王府の二女である沈梓(しんし)が、皇帝から鬼将軍と揶揄(やゆ)される楚修明と結婚することを命令される。しかし、悪名高き男に嫁ぎたくない二女は母親と結託して、異母姉妹の沈錦にその役を押し付けてしまう。もちろん沈錦もそんな結婚はしたくはないが、身分が低いために家の中で虐げられている母親を助けたるため、嫁に行くことを決意するのだった。
一方、国境にある永寧府の将軍・楚修明は、鷹族からの度重なる襲撃への対応に追われていた。そのため、政略結婚で嫁に来るものは間者(スパイ)であると思い込み、沈錦にも冷たい態度をとる。沈錦は敷地の奥の屋敷に閉じ込められるが、大人しく言うことを聞いているだけの娘ではなかった。
幼い頃から異母姉妹に嫌がらせされてきた沈錦は、賢い上に行動力があり、あらゆる鍵をやすやすと開けてしまう技術の持ち主。なぜこのような仕打ちを受けなければならないのか理解できない沈錦は、自分自身と侍女の肉肉(じくじく)の身を守るために屋敷の鍵を解除し、楚修明に直談判に行くのだった。
何があってもへこたれず、予想だにしない行動をとる沈錦に振り回されていく楚修明。彼女の破天荒さに手を焼くが、チャーミングな沈錦は楚修明の部下の楚修遠(そしゅうえん)や豹子頭(ひょうしとう)、屋敷の家来たちの心を掴み、次第に愛されていく。
間者の疑いが晴れてからの二人の道のりは、まるでジェットコースターだ。沈錦が愛を告白したかと思うと楚修明から離縁状を突きつけられたり、その理由を知るために沈錦が楚修明の軍に新兵として潜り込んだり。かと思えば、沈錦が昔馴染みの皇軍統領・蕭粛(しょうしゅく)と親しく話しているのを見て、楚修明がかんしゃくを起こすなど、幾度となくピンチが訪れる。どこから見てもお互いに思い合っているのに、ある事情から沈錦を簡単に受け入れられない楚修明と、彼の誠実さを知り、思いを募らせる沈錦。二人とも頑固者ゆえになかなか結ばれず、寄せては返す波のようにくっ付いては離れていく。
苦難を乗り越えた末にようやく結ばれた際には、ほっと胸を撫で下ろすことだろう。何をしでかすか分からぬ妻に振り回されつつも彼女を愛する楚修明は、外では厳しい将軍さまだが、二人だけの寝所では沈錦に腕枕をしながら意地悪なことを言って、逆に沈錦を困らせるなど、ラブラブ度が増していく。ゆっくりではあるが、しっかりと結ばれていく姿にほっこりするはずだ。
だが、政府のなかには優秀な楚修明を妬み、しつこく失脚をもくろむ重巨がおり、二人の生活にはなかなか平穏が訪れない。固い絆で結ばれた二人が、幾度も訪れる危機にどう立ち向かっていくのか。破天荒な花嫁がいるため、その道筋は想像し得ない。そして、鬼将軍がどれだけデレデレになるのかも予測不可能。どんな結末にたどり着くのか、最終話まで目が離せないだろう。
(文・及川静)
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