近年、中国のエンターテインメント界が活気づいている。映画市場をみれば、映画の都と称されるハリウッドを擁する北米(アメリカ+カナダ)とトップの座を争うまでになった。アメリカの映画産業の業界団体、MPA(Motion Picture Association)が発表したレポート「THEME REPORT 2021」によると、興行収入では2020年に続いて2021年も中国が世界一に躍り出た。
ドラマも多くの作品が製作され、動画配信サービスが普及した影響もあって日本のみならず世界各国で楽しまれている。美男美女のキャスト陣によるラブロマンス、男性同士の熱い友情を描くブロマンス、重厚な時代劇、アクションもの…と実に多彩にそろう。
それを支えているのが、経済的成長も背景にした巨額の製作費だ。中国にはアジア最大級といわれる所を含め、豪華なセットを組める大きな撮影スタジオがいくつもある。衣装や小道具も、見事な刺繍や美しい宝石などが施されている。また、衣装などのデザインや撮影スタッフに、有名映画に参加する名匠といわれる人々の参加も可能となり、映像のクオリティそのものがグンと上がることに。それらが視聴者を魅了する要因となる。
では、実際に莫大な製作費が投じられた作品をご紹介していきたい。なお、金額については、日本向けの各ドラマ公式サイトなどを参照した。
『上陽賦~運命の王妃~』は、ハリウッド映画でも活躍する国際派女優、チャン・ツィイーが初の連続ドラマ進出を果たし、製作期間に4年をかけた超大作。総製作費は、中国ドラマ史上最高額と謳われた『長安二十四時』の150億円を上回る、約170億円とされる。ハリウッド大作映画では200~300億円のものもあるが、本作も相当高額。この予算によってアカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされたウィリアム・チャンなど映画界の一流スタッフも集結して製作され、俳優陣、衣装、セット、映像までが美しい相乗効果を生みながら、人気小説を原作とした国と民のために戦う王妃の壮大なフィクション時代劇が繰り広げられる。ツィイーが着る、風になびく美しい生地のドレスの数々にうっとり。
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明の時代を生きた孝恭章皇后をモデルに描いた『大明皇妃 -Empress of the Ming-』の総製作費は100億円。歴代皇帝が暮らした紫禁城の再現や3000着を超える衣装、モンゴル平原での戦いなど大迫力の戦闘シーンを実現した。
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同じく総製作費100億円かけられているものに、中国トップスターのヤン・ヤンが主人公を演じた壮大なファンタジー時代劇『神龍<シェンロン>-Martial Universe-』やアクション時代劇『蒼穹の剣』がある。
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宮廷を舞台にした『如懿伝~紫禁城に散る宿命の王妃~』は、アメリカで優れたテレビドラマなどに贈られるエミー賞の中国版といわれる国劇盛典で4部門受賞した名作で、総製作費は96億円だ。歴史学者など専門家が監修し、物語の重要な舞台となる建物を、実際にセットを建築する力の入りよう。ジョウ・シュン演じる主人公をはじめ、女性キャラクターたちの高貴さがあふれる衣装も目を見張る。
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『九州縹緲録~宿命を継ぐ者~』は、架空の世界“九州”を舞台にしたシリーズのひとつ。総製作費は約83億円で、かっこよさにほれぼれする甲冑など特注衣装は1万点を超えるという。また、6.5万平米にも及ぶセットも造られ、圧巻のスケール。運命に翻弄される王子、阿蘇勒(アスラ)の物語を崇高に盛り上げる。
製作費がかけられている作品は、歴史ものがほとんど。実在、架空、どちらにしても時代や世界観を表すための美術の精巧さが鍵になってくる。それによって物語の説得力が増し、細やかな見応えにも引き付けられる。歴史ものは長編作も多いが、細部まで凝ったつくりをじっくりと堪能してはいかがだろうか。
(文・神野栄子)
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