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「風の谷のナウシカ」の世界と“歌舞伎”の世界の絶妙な融合

「風の谷のナウシカ」の世界と“歌舞伎”の世界の絶妙な融合
(C)2020 松竹株式会社
新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』

『風の谷のナウシカ』といえば、1984年3月に公開された宮崎駿監督が手掛けた劇場版アニメをすぐに思い浮かべることができる人も多いのではないだろうか。元々は、宮崎監督が1982年からアニメ雑誌に連載したSFファンタジー作品で、1995年に完結した。中断期間がありつつも12年にわたる長期連載となり全7巻で完結している。

劇場版アニメが1984年に公開されているところからも分かるように、原作の全てを描いているわけではなく、2巻の途中までの話を、劇場版のために設定や展開を脚色して作り上げられている。劇場版アニメは今なお多くの人に愛されている名作であることは間違いないが、原作はその世界観をさらに発展させ、スケールの大きな物語になっているので、こちらも絶大な支持を得ている。

そんな『風の谷のナウシカ』が2019年に新作歌舞伎として上演された。スタジオジブリ関連の作品では初となる歌舞伎舞台化で、名作と日本の伝統芸能の融合ということで大きな話題となり、チケットは即日完売となった。この『新作歌舞伎 風の谷のナウシカ』のすごいところは、劇場版アニメではなく、全7巻に及ぶ原作を取り上げていること。昼夜二部公演で構成され、上演時間は6時間にも及ぶ超大作となった。

巨大な産業文明は「火の7日間」と呼ばれる戦争によって滅び、大地のほとんどに巨大な蟲が棲息していて、有害な瘴気を発する菌類の森「腐海」に覆われている。それでも人間同士の争いはやむことがなく、常に「トルメキア王国」と「土鬼(ドルク)諸侯国連合」の2大国が対立。主人公・ナウシカは、風を操る民が住む辺境の小国「風の谷」の族長の娘で、人々が恐れる腐海や蟲を愛し、心を通わせ、腐海が生まれた謎を解き明かしたいと思っている。

ナウシカを演じるのは尾上菊之助。優しくてリーダーシップとカリスマ性のある少女ナウシカを凛とした演技で表現。ナウシカの師であるユパを演じるのは尾上松也。動きなどがアニメから飛び出してきたかと思えるくらい忠実な場面もあり、舞台の上でも存在感を示している。トルメキア王国の皇女クシャナを演じるのは中村七之助。容姿端麗で武術にも優れた女性。指揮官として絶大な信頼を得ており、ナウシカに負けないカリスマ性を持つ。ナウシカは「深く傷ついているが本当は心の広い、大きな翼を持つ優しい鳥」とクシャナを評している。ナウシカと正反対の性格に思えるクシャナ。劇場版アニメでは、いきなり風の谷にやってきて、軍事協力を要請するなど、悪役というか、敵キャラ的な存在に見えていたが、原作では他の王位継承者たちから毒を盛られそうになったり、幼い頃から危険な目に遭ってきたこともあり、冷たい人間に思われるかもしれないが、トルメキアの兵士たちからは慕われていたところも描かれている。アニメでは見えてこなかったクシャナの過去や本、原作をベースにする新作歌舞伎では見ることができ、ナウシカと対になるもう一人のヒロインとして描かれている。

「腐海」や「王蟲(オーム)」「巨神兵」、ナウシカが乗っている「メーヴェ(凧)」など、異世界的な要素が多く、日本の伝統芸能である歌舞伎の“和”の世界観や雰囲気とは異質なものに思えるが、実際の舞台の演出、衣装などを見ると双方の世界観がうまく融合しているのを感じ取ることができる。王蟲や巨神兵、メーヴェなどは原作に忠実な形で登場しているが、衣装は通常の歌舞伎で見られる“和”テイストのデザインがベースになっており、バランス良く、違和感なく、しかし新鮮さも感じられるものに仕上がった。セリフ回しや所作などは歌舞伎の特徴をそのまま生かしており、和楽器による音楽も効果的で、新感覚で楽しめる“歌舞伎”となっている。

(文・田中隆信)

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舞台 歌舞伎 新作歌舞伎 ジブリ 宮崎駿
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