台湾BL『僕らも知らない僕らーUNKNOWNー』の周囲もトキめく弟のブラコンっぷり（※ネタバレあり）

血の繋がらない兄弟の切ない愛を描いた、台湾BL『僕らも知らない僕らーUNKNOWNー』。義兄弟とひと口に言っても、魏謙と魏之遠は実に悲しい過去を背負った兄弟だ。もともと二人は、全くの他人同士だった。幼い頃に両親を亡くした謙は、さらに幼い妹の小宝（シャオバオ）を食べさせていくために必死に生き、チンピラの手先になったこともあった。そんなある日、謙は路上で生活する少年を見かけて気遣うようになる。おそらく自分と同じような境遇の少年を放っておくことができなかったのだろう。

時には包子を袋ごと少年にあげてしまうこともあった魏謙は、ある時、彼を家に迎え入れる。そして、之遠（ジーユエン）と名付け、小宝と同様に家族として育てていくのだった。だが、その道のりは平坦なものではなかった。謙がチンピラの使い走りをしていた時はまだ良かったが、大きくなるにつれて暴力的な汚れ仕事も任されるようになった。深みにハマるほど組織から抜けることが難しくなっていったが、謙は家族のために足を洗うことを決める。もちろんタダでは難しく、謙は之遠を人質に取られた状態で組織の人間と決闘することになり、文字通り体を張って之遠を守りつつ、組織を抜けた。

その後、勉強のできた謙は友人たちの助けを得ながら大学を卒業し、妹と弟を見事に育て上げる。そして、友人と共にアプリを企画するスタートアップ企業を起業した謙は、今まで以上に仕事に邁進している。まだ学生ではあるが、兄同様に成績優秀になった之遠もプログラマーとして出入りし、兄をバックアップ。謙は寝食そっちのけで仕事に集中してしまうタイプのため、仕事以外でも手の掛かる存在なのだ。

謙は強靭な肉体を持っているにも関わらず、肺炎になって倒れていたこともあり、その度に之遠は病院に駆けつける。また、会社でも食事を用意するだけでなく、サプリメントをわざわざ出して飲ませたり、ベンチでの仮眠を促したりするなど、とにかく献身的。部下たちもニヤついてしまうほどのブラコンっぷりだ。兄の謙もされるがままで、その光景は何とも微笑ましいが、之遠の行動の裏には大きな秘密が隠されていた。

実は、之遠は兄として以上に謙を愛していたのだ。誰にも言えない之遠の気持ちは行き場を失い、どんどん彼のなかで膨らみ続けてしまったのだろう。そして、謙に之遠も認めるほど魅力的な女性が近づいた瞬間、彼は気持ちを隠しきれなくなる。之遠は第５話冒頭で謙に恋愛対象が男性であることを告白していたが、その後、会社での女性投資家が現れたパーティーの席で悪酔いし、本音を漏らしてしまうのだ。

大きく膨らみ過ぎた之遠の愛情は彼の手に余り、気持ちを告げられた謙も受け止めきれず、悩み苦しむ。その間の二人の表情は、見る者の胸を締め付けるほど切ない。その後、謙は之遠をアメリカに留学させることを決意する。それは之遠が謙にとっても大切な存在であるからこその選択だと思うが、理由はそれだけではないようにも見受けられる。全12話後半にて、謙が抱えているその辺りの事情も明確になりそうだ。また、之遠が台湾を離れたことで、どんな成長を見せてくれるのかにも期待したい。

兄の謙を演じるクリス・チウ（邱宇辰）は、歌手としても活躍する芸歴16年目の中堅俳優。今回は理系のメガネ男子を演じているが、決闘シーンでも分かる通り、鍛え上げられた上腕二頭筋の持ち主で、そのギャップも魅力だ。1990年10月生まれの33歳で、之遠役のシュエン・ホアン（黃宏軒）より７歳年上。撮影現場では、役同様にまだ演技経験の少ないシュエンをリードしていたようだ。シャープな印象のクリスに対して、シュエンは甘い目元が特徴的で、カップルとしての相性も抜群。ドラマ後半では、二人が生み出す“ケミ”にも注目したい。

（文・及川静）