こんな時代だから必要とされる、悪を悪で駆逐するアンチヒーロー「模範タクシー」シリーズ

アンチヒーローものとして人気となった韓国ドラマが、シーズン2まで制作されている「模範タクシー」シリーズだ。

不条理な犯罪に自身や家族が巻き込まれ、世の中からも法からも見捨てられた孤独な人が命を絶とうとしたとき、「生きてください。復讐代行します」というステッカーが目に入る。そこに書かれた連絡先に電話をすると、1台の「模範タクシー」がやって来る。

ソウル市内を走るタクシーには、オレンジ色やシルバーの車体の「一般タクシー」と、10年以上無事故の優良ドライバーが運転する黒塗りの「模範タクシー」がある。韓国の「必殺仕事人」たちがアジトにしているのは、タクシー会社。その地下の秘密の車庫には、見た目は年季が入っているが、ハイテク仕様に改造された「模範タクシー」がスタンバイしている。タクシーは、どこにいても怪しまれることのない絶好の隠れ蓑なのだ。

タクシー会社の社長チャン・ソンチョル（キム・ウィソン）は、犯罪被害者支援団体“青い鳥財団”の代表も務める慈善家の顔を持つ人物。復讐を実行するのは、陸軍特殊部隊出身のタクシー運転手キム・ドギ（イ・ジェフン）。ドギをヘルプするのが整備を担当するエンジニアのパク・ジノン（ペ・ユラム）とチェ・ギョング（チャン・ヒョクジン）、そしてハッカーとして活躍するのが、経理担当のアン・ゴウン（ピョ・イェジン）。4人がチームを組んで復讐を行うが、実は彼らも全員が犯罪に関わる辛い過去を持っており、自分たちのような人を救うために復讐請負人となった。

エピソードの中には、パワハラ、いじめ、振り込め詐欺、盗撮、不同意性交、不動産詐欺、独居老人を狙ったものなど、日本でもよく話題に上がる身近に潜んでいる犯罪が多い。1エピソードが3～4話で構成され、最後に全話を通した大テーマが解き明かされる。

シーズン1には、キーパーソンとしてソウル北部地方検察庁の熱血検事カン・ハナ（イ・ソム）が登場。法を武器に真正面から悪と対峙する彼女と、犯罪を憎む思いは同じだが、解決手段が違う模範タクシーの面々との関係性の変化が見どころだ。

そしてシーズン2の『復讐代行人2～模範タクシー～』では、平凡な生活に戻っていたメンバーたちが再集結。新シーズンではなんと活躍の場を海外にまで拡げて、スケールアップ。その海外で、シーズン1でキム・ドギに恋心を抱いた特殊詐欺組織のボス、リム女史が再登場したり、ボケ役の整備士2人が実は意外なエリートだったりと、シリーズで見ているファンにはクスリとなる場面も。シーズン2には一筋縄ではいかない最強の敵が登場。後半には韓国で話題となった「バーニングサン事件」を思わせるエピソードが登場し、ナイトクラブを舞台に死闘が繰り広げられる。

シーズン1は主演のイ・ジェフンの最優秀演技賞を筆頭に、『SBS演技大賞2021』で大賞6冠を受賞。同時間帯視聴率1位、最高視聴率16％を記録している。シーズン2は最終話でなんと瞬間最高視聴率25.6%をマークし、2023年に放送されたミニドラマシリーズの最高視聴率1位に輝くなど、その面白さを数字が実証している。また、『ペントハウス』のキム・ソヨン、『悪の花』のムン・チェウォンなど豪華女優陣が意外な役でカメオ出演しているほか、『わずか1000ウォンの弁護士』のナムグン・ミンがドラマの役のまま登場していることも話題となった。「シーズン3」制作の噂もある大人気シリーズ「模範タクシー」の運行に、ぐいぐい引き込まれること間違いナシ！

（文・坂本ゆかり）