あらゆるギャップに驚く、イケメン俳優・ナット主演のタイBL『私こそが最美のプリンス様！～I’m The Most Beautiful Count～』

ナットといえば、2020年のBLドラマ『Oxygen』での孤独な大学生ソロ役で注目を浴び、その後も「PIT BABE」シリーズでのウェイ／クリスなど、その美貌を生かしたクールな役どころを演じることが多かったが、今回演じるプリンスはフォロワー300万人を誇る人気オネエアイドル。表情も手の動きも賑やかで、声も全くの別人。そのギャップに驚かされるが、前髪を完全に下ろしているので知らずに見ると同一人物だと気付かないかも？それほど見事な没入っぷりを見せている。

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ナット演じるプリンスがなぜこれほどの人気を誇っているのか。その理由はドラマの舞台設定にある。プリンスが暮らしているのは、性別にそぐわない振る舞いをすると罪に問われるセーンヤー国。そこで彼はゲイであることを隠さすに堂々とアイドル活動をしている。もちろん彼を批判する者もいたが、多くの人が自分に正直に生きる彼に引かれて人気を博していたのだ。

そんなプリンスが、ある日突如倒れ、歴史の授業で勉強した何百年も前の時代にタイムリープ。そして、失恋が原因で亡くなった自分とうり二つのウォーラデートの体に乗り移り、時代の渦に飲み込まれていく。と聞くと深刻な物語に思えるが、物語のベースはコメディ。この時代でも同性愛は禁止されているものの、プリンスはオネエキャラ全開で自分らしく生きるために奮闘していく。それと同時に、追放されている国王の兄コーソンと役人のバンジョンに思いを寄せられ、プリンスは2人の間で揺れることに。革命に、恋に、と大忙しだ。

プリンス／ウォーラデートを取り巻くのは、「PIT BABE」シリーズにも出演していたキャストたち。筋肉ムキムキの武闘派コーソンは、「PIT BABE」シリーズでナット演じるウェイ／クリスと互いに思いを寄せていたにも関わらず、決して結ばれることのなかったピートを演じたピンことオブニティ・リーラヴェッチャブタが。恋のライバルのバンジョンは、ライバルチームのウィーナーを演じたポップことパタラポール・ワンロプシリ。ほかにもウォーラデートの使用人ジェートを若手レーサーのディーン役だったリーことアスレ・ワッタナヤクルが演じるなど、若手俳優陣が多数登場している。

オネエ系アイドルが過去にタイムリープして、サバイブするという少々ぶっ飛んだ設定の時代劇だが、その根底には同性愛を禁止してきた歴史を覆そうとする壮大な目標が隠されている。プリンスはコーソンといい感じになりながらも同志たちと徒党を組み、時の権力者に立ち向かっていくのだが、法律や慣習、人々の意識をどう変えていくのか？ナットの変身っぷりや一見ふざけているのに深い物語など、あらゆるギャップを楽しみながら視聴したい作品だ。

（文・及川静）

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