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『PAPA & DADDY』歐陽(オウヤン)ママの注目作品紹介

『PAPA & DADDY』歐陽(オウヤン)ママの注目作品紹介
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今月も台湾から素敵なドラマをご紹介。BLではない、LGBT枠でのドラマ。同性婚合法化が達成された台湾での一組のゲイカップルが描かれる。等身大でありながら等身大でない、ドラマの持つ力が発揮された良作よ。今月は台湾のゲイバー事情も交えていろいろ考えたことをまとめてみました!
目次

作品紹介

PAPA & DADDY

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結婚の先にあるもの PAPA & DADDY

台湾で同性婚が認められたのが2019年5月24日。歴史的な一日よ。あたしも自分のことのように嬉しかったの覚えてるもの。それに対して本作は2020年制作、2021年配信ということで、合法化後の世界が描かれているのね。あら、よく聞くわよね? 「結婚はゴールじゃない、二人で一緒に歩き始めるスタートなんだ」云々、美辞麗句はいくらでもかぶせることができるけど、どうなのかしらね。例えば、台湾では5月に結婚ができるようになったわけだけど、なんと6月には一組目の離婚カップルがでたというから驚き! 結婚生活が何年続けば離婚しても驚きじゃないのかっていうと年数は関係ないのかもしれないけど、離婚もできちゃう同性婚合法化「後」の世界があるってことよね。

出演:メルビン・シア、マイク・リン
監督:ナンシー・チェン
脚本:ナンシー・チェン

お馴染みの監督が描く台湾のゲイカップル

ゲイカップルと結婚、子育て

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本作が描く大きなテーマの一つは「子育て」。あたしは正直言って全く想像すらできないんだけど、でも思い返してみると……「結婚」ということに関しても台湾で合法化されるまでは全く意識すらしてなかったわ。台湾で結婚ができるようになって突然結婚に興味がわいたのかっていうとそういうことでもなくて、「結婚するかしないか」と、「結婚できるかどうか」が別の問題だっていうふうに認識を改めるきっかけになったの。当然、「するかしないか」の前には「したいかしたくないか」っていう話もあっていいわけだけど、したいかどうかを越えて、一つの権利として「できるかどうか」が問われているのだということはとっても納得がいったのよね。そんな結婚という日本ではまだ議論すら本格的に始まっていないことが一つの前提として描かれているのはやっぱり単純にうらやましくなるわ。

監督はなんと『HIStory4 隣のきみに恋して~Close to Youの陳怡妤!

今年は『We Best Love、『Be Loved in House 約・定~I Do』、『HIStory4 隣のきみに恋して~Close to You』そして9月17日から先行配信が始まる『隔離が終わったら、会いませんか?』(あたしもちょこっと出てます。お楽しみに!)と台湾BL大豊作の年なわけだけど、その中でも『HIStory4 隣のきみに恋して~Close to You』にドはまりしたって人、少なくないはず。ええ、あたしもしっかりドはまりしましたよ、はい。本作の監督を務めるのはその『HIStory4 隣のきみに恋して~Close to You』の監督を務めた陳怡妤なの! それだけでも楽しみになるってもんよね。だけどあたしが見終えた感想は……まるで違った作品だってこと。それだけこの監督が、作品の色や描きたいことを汲み取り具現化する力を持っているということなのだと感じた。作品ごとに色がはっきりと出る監督もいるけど、それぞれに味わいが異なるのももう一つの魅力よ。


台湾のLGBT社会?

ロケーションの中心の一つ「VERSO」

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本作の主人公の一人ダミアン(演:謝佳見)はビストロのVERSOというお店の経営者なんだけど、あら、あたしここ見覚えある。台湾行けばよく行くお店なのよね。ドラマでVERSOとして使われたお店の名前は「Fairy」っていうの。MRT國父紀念館から歩いてほどない小さな通りにあるお店で、普段はゲイバーっていうよりはおしゃれなショットバーの雰囲気で営業してる。ちょっと台湾のゲイバー事情を話しておこうかしら。台湾でゲイバーなんてなかなか行ったことないと思うけど、あたしの本拠地新宿二丁目にあるようなゲイバーって台湾では少数派なの。林森北路にはカラオケがあるいわゆる日式のバーもあるんだけど、ふつうは西門町にある紅樓のあたりのショットバーやクラブに行くことになる。一つ所に集まってないのが特徴かな。一緒にゲイがいれば基本は女の子もウェルカムだし、その辺結構日本とは雰囲気違うと思うわ。ただね、ここの「Fairy」のロングアイランドアイスティー(長島冰茶)、すんげえ濃いから気を付けてね。あたしは一杯でノックアウトでした。

台湾のLGBTカップルの日常

主役のダミアンとジェリー(演:林輝瑝)は言わずもがなゲイカップルだけど、実は本作はGaGaOOLala創始者の林志傑をモデルにしているのよ。アメリカ帰りで教養があって、(たぶん)お金もあってイケメンで、すんなり(に見える)若いイケメン彼氏を見つけてって、どこにでもいる「私やあなた」たちの物語とは言えないかもしれない。だけど、特定の背景を持つ人物を描いていながら彼らが台湾にごく普通にいるカップルに見えてくる不思議。特定の背景は、ドラマで生き生きとする人間が描かれるのに普遍的に必要な要素であるだけで、実際には二人がぶち当たる「子育てと社会の共生」という課題や、あるいは結婚合法化とは別の次元で存在し続ける「親へのカムアウト」の問題など、「私やあなた」たちがいままで/これから、向き合ってきた/向き合うかもしれないイシューが内包されているのね。やっぱりエンターテイメントの力ってすごいわ。

LGBT当事者として、一人の視聴者として

同性婚が合法化された台湾社会で「まっとうに」生きるってどういうことなのか、一人のゲイとして台湾にいること、そして日本に生きるあたしたち、そんな大きなことをいろいろ考えたりするドラマだったわ。ドラマじゃいいマンション住んでるし、お商売順調そうだし、単純に「あら、いいわね」って思わなくもないけどさ、乱暴に言うとそんなことは瑣末なことでしかなくて、LGBTとして生きることのリアリティは十分に描かれてると思う。日本とつい比較しちゃいたくなるけど、台湾だって同性婚は突然降ってわいたわけじゃない。台湾にも「同性婚を認めれば人口減少を招いて滅びる」って大真面目に主張している人たち、ホントにいたんだから! 孫文が言ってたわよ、“同志仍需努力”って。「私とあなた」たちの社会がほんのすこしでもよくなりますように!

執筆者情報

歐陽(オウヤン)ママ

早稲田大学大学院修了。論文のテーマは台湾の文化。
2012年から2013年にかけて台湾で生活、日本語の先生などしてふらふらする。
新宿二丁目では新型コロナの影響もありあたふた。今は新しいお店をオープンしようと画策中。

Rakuten TVで視聴する

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