本作は、多くの作品が映像化されている人気作家・伊坂幸太郎の「マリアビートル」を原作に、『デッドプール2』のデヴィッド・リーチ監督が映像化したもの。
東京発の超高速列車“ゆかり号”が舞台。久しぶりに仕事復帰した殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)は、“アタッシュケースを盗んで次の駅で降りる”という簡単な仕事を引き受けるが、幸運を運ぶと言われている“てんとう虫”という名前にもかかわらず、不運の連続で列車から降りられない。それどころか次々に強敵(殺し屋)に襲われるというアンラッキーなスパイラルから抜け出せない状況に
今回、注目したいのが“日本原作の物語が洋画になることで見えてくる別の世界観がある”ということ。“ゆかり号”は新幹線をイメージすることができ、東京を出発して、新横浜、名古屋、京都へと進んでいく様子が、なんとなくの時間の経過も含めて日本で生活している人なら想像することは難しくないはず。もし、日本で製作されていたとしたら、もっとリアリティのある映像や演出になっていたであろう。
しかし、ハリウッド映画になったことで、いろんな呪縛から解き放たれて、とことん荒唐無稽な物語になっている。東京や京都などの地名は出てくるけれど、架空の都市みたいなもので、夜に出発して朝方に到着するなど、時間軸もいい意味でユルめ。機関車トーマスのところは原作に忠実だったりするが、その他のジャパニーズカルチャーを誇張した部分などは邦画では描けない世界観だったりする。
生徒会長のダオンは名門の家庭に生まれ、周囲の期待を裏切らないように生きていた。そのためにはイヤな頼みも断れず、自分の本心にフタをしてきた。そんなダオンの武装を解いてくれたテギョンに、どんどん惹かれていくのだった。
昔から勝手に描かれた日本のイメージがハリウッド映画に登場することがよくあったが、この作品に関しては、あえて誇張して描いているように感じる。そういう“非現実”的な日本というのもエンターテイメント性の高い映画だからこそ味わうことが可能である。
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日本の小説などを原作とした洋画作品の中から、他にもオススメのものをピックアップしよう。一つは『名探偵ピカチュウ』。人気ゲーム「ポケットモンスター」はテレビアニメや劇場版アニメとして多くの作品が生み出されていて、キャラクターも含めて人気が確立されているが、実写化は初めて。公開された当時、気になっていたのは実写に合成された3DCGによる立体的なポケモンたちの姿。原作とはイメージが違っていたかもしれないが、違和感があったわけではない。ピカチュウなどはアニメではツルツルっぽい質感だが、この作品ではフサフサの毛が生えている。それがなびく感じを含めて、ピカチュウのかわいい部分が感じられる造形になっていた。キャラクターの捉え方も含めて、日本人が描くアニメのピカチュウと洋画におけるピカチュウの違いを見比べてみるのもきっと面白いはず。
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もう一つオススメするのは、マーティン・スコセッシ監督による映画『沈黙-サイレンス-』。『タクシー・ドライバー』『シャッターアイランド』などを手がけた巨匠が映像化したのは、作家・遠藤周作の「沈黙」。原作と出会ってから約25年の月日が流れ、ようやく完成に漕ぎつけたというこだわりの作品だという。遠藤周作が生涯のテーマの一つとしていた“キリスト教”。日本における“キリスト教”の見方と外国での見方はやはり違うものがあるように感じる。信仰における負の部分を描いた作品なので賛否はあると思うが、イギリスの作家グレアム・グリーンが賞賛した小説を、アメリカ人の監督が描くことによって、小説の中にある主題も見えてくる。
3作を例に挙げたが、日本原作のものを海外視点で描くと、気付かされることも多いので、ぜひ違う世界観・価値観を体感してもらいたい。
(文・田中隆信)
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