幻の中国BL『ハイロイン』のリメイクドラマは、友愛も家族愛もエモーショナル!!

主人公の蘇御（スー・ユー）と呉比（ウー・ビー）は同じ公立高校の同級生だが、対照的な家庭環境で育ってきた。蘇御は幼少期に両親が離婚し、父親と二人暮らし。その父親はお人よしでだまされやすく、生活は常に苦しいがご近所さんの母娘と助け合いながら、家族円満に暮らしている。勉強ができて成績は常にトップのため、別れた母親は彼を私立高校に入れたがっていた。一方、呉比は富豪の息子だが、父親との仲は最悪。呉比は母親が亡くなったのは父親のせいだと思っているため、ずっと許せずにいるのだ。最近、父親が再婚したことも気に食わず、義母のことも嫌っている。しかし、父親は義母の息子のことも気にかけ、成績が優秀だというその子を呉比と同じ私立校に入れようとする。そのため、呉比は家を出て一人暮らしを始め、学校も叔母に頼んで公立校に転校したのだった。

ところが図らずもそこで、2人は同級生に。転校早々、呉比はアーティストだった亡き母が作った遺作の人形と蘇御が似ていたことを理由に彼にちょっかいを出すが、偶然出会った蘇御の父親がとてもいい人だったことから彼に接近。そして、貧しくも助け合う蘇御親子やご近所さん母娘の姿を見た呉比は、少々強引に彼らの食卓に混ぜてもらい、笑いの絶えない家族だんらんの光景を味わうのだった。家では常に父親といがみ合っている呉比が、蘇御の父親やご近所さんの娘・朶朶（ドゥオドゥオ）と仲良く笑い合っている光景はなんとも切なく胸に響く。そうして、呉比は蘇御だけでなく、彼の家族同然の人々とも仲良くなっていく。

呉比が事実を知った上で自分をからかうために近付いてきたのだと誤解した蘇御は、彼を拒否。さらに、売り言葉に買い言葉なのか、この親子はこんな風にしか会話ができなくなっているようだ。父親の無理強いは余計に親子仲を悪化させ、呉比はマンションからも逃げて、蘇御らの家の近くの古民家に引っ越す。この頃から2人の仲は急接近していく。2人で抱き合うようにして自転車に乗り、進行方向に背を向けた方が後ろ向きで自転車を漕ぐ第５話の「後ろ乗り」は、バカバカしいほどに面白く、甘酸っぱい。安全な乗り方ではないので推奨はできないが、あのシーンは傑作だ。他にも自転車に二人乗りしながら、呉比が蘇御に肉まんを食べさせるなど、自転車を通して甘い時間を過ごすが、蘇御を捨てた母親の再婚相手が呉比の父親だったことが発覚した途端に2人の仲に亀裂が走る。

呉比が事実を知った上で自分をからかうために近付いてきたのだと勘違いした蘇御は、彼を拒否。蘇御への思いが大きくなっていた呉比が、今まで見せたことがないくらい落ち込んだことで呉比の旧友たちが勘違いし、蘇御を陥れるために虚偽のうわさを流してしまう。この行動が2人の仲をさらに引き裂いてしまうが、そんな時に解決してくれたのはノー天気な蘇御の父親の言葉だった。さらに朶朶もファインプレーを見せて、2人の仲をつないでくれる。こうして、再び2人の時間が動き出すのだった。

だが、なかには問題児ならぬ、問題親も。実の息子にも義理の息子にも煙たがられ、かまってもらえない蘇御の実母が何かとちょっかいをかけてくるが、逆に蘇御と呉比の絆は深まっていく。あの自転車で過ごす、2人の時間に期待したい。そして、父親や朶朶らも含めた、心温まる家族時間にはきっとまだまだ癒やされることだろう。リメイク版は全24話だが、1話30分強なのであっという間に見切ってしまう。ボーイズラブ好きだけでなく、ファミリードラマ好きの方にもおすすめの癒やし系BLドラマだ。

（文・及川静）