じれったさが生み出す“むずキュン”に萌える、韓流BL『ボールボーイ・タクティクス』

主人公のハン・ジウォン（ヨム・ミンヒョク）は、かつて“国民の孫”と呼ばれ、人気を博した体操選手。金メダルも獲得したが、ケガをきっかけに引退。辞めた理由を明確にしていなかったため、マスコミに好き勝手に書かれ、大学でも身を潜めるようにして生活していた。もう一方のクォン・ジョンウ（チェ・ジェヒョク）はまさに今、脚光を浴びている大学のバスケット選手で、性格は勝気。率直にものを言う、ジウォンとは真逆のタイプだ。

そんな2人が、大学の体育館で偶然知り合ったことをきっかけに急接近する。写真科の同期との飲み会で酔っ払ったジウォンがたまたま車の近くにいたジョンウを運転代行と間違えて送ってもらったり、同じ講義を取っていたことで課題を共にすることになったり…。さらにはジョンウが彼女と揉めている場面に出くわすなど、ジョンウに「ストーカーか？」とからかわれるほど、彼と遭遇してしまう。これはもう偶然ではなく、必然とも言えそうだが、そうこうしているうちに2人は仲良くなり、気の回るジョンウがジウォンのいろんな点に気付いていく。

例えば、第2話ではジウォンがお菓子の袋で指を切ってしまうが、控えめな彼はそれを隠す。すると、一瞬でそのことに気付いたジョンウがジウォンを買い出しに誘い、ばんそうこうを差し出す。しかも「女にはこんなことしない。お前だからだ」と言って、指に貼ってやるのだ。些細なことに気付くのは愛情の証だと言えるし、どこからどう見てもジョンウのセリフは告白だが、同性に恋愛感情を抱いたことのない2人はまだ友達以上ですらない。だが、互いに胸の高鳴りを感じていることは間違いなく、1話ごとにその思いを募らせていく。

1話30分弱の全8話のため、展開はスピーディーで、全ての瞬間に恋の予感が詰め込まれている。第3話ではジョンウに恋愛初心者であることを知られたくないジウォンが思わず見栄を張ってしまうのだが、うそがバレた後のジウォンが実にかわいいのだ。一緒に歩くジョンウの腕を掴んで足を止めさせ、向かい合った状態で「君によく見られたくて、カッコつけた」と正直に釈明するのだが、その見上げる眼差しが愛らしく、吸い込まれそうになったジョンウは慌てて目を逸らす。その顔は、もう恋する男だ。

同性を好きになるのはジョンウも初めてのせいか、恋多き男も困った様子で、第4話では柄にもなく熱を出してしまう。“看護フラグ”が立つが、ジョンウはどうやら恋愛免疫のないジウォンに合わせてゆっくり進めることにしたらしく、グッと気持ちを抑えて、彼の気持ちに寄り添う。しばしじれったい時間が続くが、これが功を奏したのか、2人の関係はここから急速に発展していく。

だが、スポーツ界の頂点に立った経験のあるジウォンは、注目株のジョンウが同性と付き合うデメリットを考え、単純に好きな人ができたことを喜べない様子だ。そんな2人がどんな道を選ぶのかが終盤の大きな見どころとなるのだが、悩んでいる時もラブラブの時も見上げるジウォンとそんな彼を見つめるジョンウの構図がとても美しく、何度見ても癒やされること請け合い。もう一度、あの“むずキュンシーン”が見たい！と何度も見たくなるキュートなラブストーリーだ。

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（文・及川静）