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本作の舞台となるのは1969年。アメリカの宇宙船・アポロ11号が月面着陸に成功し、人類にとって大きな1歩が踏み出されたその年、タイでは学生による民主化運動の気運が高まっていた。軍事政権の抑圧の中で、自由や正しさを求める若者たち。また、多様性のない時代は、彼らの間で密かに生まれる同性を愛する思いも決して表に出せない苦しみがあった。
キンポルとの略称で親しまれている『KinnPorsche』でマフィア一家の息子を演じていたMileは、本作では人気バンドのボーカルで、自由奔放なヒッピーのタンワー役。キンポルでMile演じるマフィアの息子のボディーガードだったApoは、フランス帰りの若き経済学者・トリンに扮する。俳優という職業からすれば当たり前と言ってしまえばそれまでだが、前役を1ミリも感じさせないキャラクター造形は、2人の演技への熱量と技量の高さが垣間見えて、新たな物語に引き込まれる。
532787 第1話 https://tv.rakuten.co.jp/content/532786/
鎖骨まで伸ばした髪をなびかせ、サイケデリックな柄のファッションに身を包むタンワー。対して、髪をきれいに整え、ビシッとしたスーツを着たトリン。一見すれば交わらない2人が、惹かれ合う。陽気なタンワーと禁欲的なトリンだが、2人ともにじみ出るような色気がある。そして、それぞれに胸の奥に秘めた悲しい過去も。そんな2人の恋路には、トリンが教鞭を執る大学の生徒で、学生活動家でもあるビクター(ピーター・デーリー)も交わる。トリンの叔父は軍の大佐なのだが、軍の発電所建設に学生たちが反対するデモを行うというだけでなく、ビクターはトリンに恋心を抱くのだ。
タンワーたちの音楽などヒッピーの雰囲気がありつつも、閉塞的な社会。そのなかにおいて生まれる抗えない恋は、もう1組描かれる。映画や音楽批評のコラムを通じたやり取りをきっかけに恋に落ちる、トリンの叔父である軍人のクライルート(ユック・ソンパイサーン)とジャーナリストのナラン(ヨッサワット・タワーピー)だ。クライルートは妻帯者であり、いわゆる禁断の恋。立場的にも真逆のところにいて、記者会見で顔を合わせてもいたのだが、互いに素性を知らないままやり取りをして、初めて相手がそうだと分かっても、すでに心は動いていて情熱的なキスをする。
532791 第5話 https://tv.rakuten.co.jp/content/532786/
フランスから帰国して国家の発展に寄与しようとしていたトリンが目の当たりにする政権の裏側。混沌とした社会の息苦しさに加えて、彼らは同性を愛する者たちとして世間に認められない息苦しさも抱える。劇中、トリンが「愛とは苦楽を共にするもの」という言葉を言う。激動の時代で決して楽しいことばかりではない揺れ動く愛を描くと同時に、社会に立ち向かう姿から、正義や守るべきものという深いテーマに切り込む。
先に紹介したクライルートとナランのキスシーンを始め、NC(No Children)シーンと言われる濃密なラブシーンもあり、当時の社会背景を知ればエロティックであり、ドラマティック。ただ、それを際立たせるのは、俳優陣が丁寧かつ繊細にキャラクターの心情を体現することにある。多くのBLドラマのような甘く、キラキラしたシーンはほとんどなく、もちろんキュンとするシーンもあるが、“社会派ドラマ”として見ごたえある展開で心を揺さぶられる。
メッセージ性の高さでBLドラマ界の奥深さをまた進化させたともいえる本作。人類が到達した月が夜の暗闇にもたらす輝きのもとで、Mile&Apoたちの演技が輝かせる主人公たちの行く末を見届けてほしい。
(文・神野栄子)
https://news.tv.rakuten.co.jp/2024/04/bl-list.html 【BL関連記事一覧】新作・おすすめ・ランキングをご紹介! https://news.tv.rakuten.co.jp/2024/07/bl-search.html おすすめBLドラマ・映画ガイド|新作や更新中作品をまとめてチェック【2026年版】
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