この連載が始まったのは3月、それがもう12月よ。驚き。今年は台湾BL豊作の年でありました。今年あたしの連載で紹介した順に振り返ると『We Best Love』、『HIStory4 隣のきみに恋して~Close to You』、『Be Loved in House 約・定~I Do』、そして『隔離が終わったら、会いませんか?』。こんなに見られるものが多くなるなんて思いもしなかったけど、いまも新しい作品を撮影中というニュースが入ってきたし、来年もまだまだ期待できそうよね。今年最後の紹介は、HIStory2を取り上げるわ。やっぱりこれがきっかけで台湾沼に来た人たち多いはずだし、繰り返して話してるけどあたしにとっても大切な作品。DVD発売されたけど、やっぱ何回も見ちゃうよね。
『HIStory2 是非~ボクと教授』× オムライス
信じられないことにあたしと同い年の大学教授是奕杰(シー/演:江常輝)、そして性格も見た目も可愛らしい大学生の非盛哲(フェイ/演:張行)のふたりが織りなす物語、はっきり言って最初に見たときは「これくっつくの?」って思うほど、なんて言うか合わないっていうか甘くないっていうか不安になったんだけど、まあ最終的には「ああ、あたしが心配することじゃなかったか」っていう感想でした、はい。そんなわけで今回は第一話「あら、実はもうこの辺から始まってた?」っていうシーンからご紹介。
作品紹介
HIStory2 是非~ボクと教授
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バツイチ子持ちの大学教授×教え子の美男子大学生!心に傷を抱えた2人が人を愛することで成長していくピュア・ラブロマンス
大学教授のイージェ(スティーブン・ジャン)は数年前に離婚し、男手ひとつで幼い娘ヨーヨー(イエ・イーエン)を育てていた。ある日、ヨーヨーは大学生のフェイ(ハント・チャン)と出会う。ヨーヨーを心配したフェイは彼女の家で家事代行をすることに。育児に無頓着なイージェに内心不満を募らせるフェイだが、後日大学の講義でイージェに出会い、教授だったことに驚く。イージェとヨーヨーの面倒をみるうちに、フェイは次第にイージェに想いを寄せるが、過去のある事件から人を愛することを恐れ、恋心を胸にしまう。一方、イージェもフェイの存在が自分の中で大きくなっていることに気づく。そんな中、イージェの過去を知るある女性が2人の前に現れ―。
出演:スティーブン・ジャン、ハント・チャン、イエ・イーエン
第一話 オムライスを食べて、ベランダでビールを飲むシーン
“我要吃蛋包飯” 訳:「オムライスを食わせろ」
シー先生の娘、ヨーヨーの面倒を見ることになったフェイ、ヨーヨーにもオムライスを作ってあげる。オムライスは中国語では“蛋(ㄉㄢˋ|dàn)包(ㄅㄠ|bāo)飯(ㄈㄢˋ|fàn)”
中国語の料理の名前らしく字面見ればどういうものか分かるわよね。だって「卵で包んだご飯」ですもの。本作のテーマ曲は「愛的蛋包飯」だし、オムライスは本作を象徴するアイテム。フェイに「オムライスが食べたい」というシーなんだけど、ここのセリフよ。
シーさん、“我(ㄨㄛˇ|wǒ)要(ㄧㄠˋ|yào)吃(ㄔ|chī)蛋包飯”って言ってるんですよ!
これ、細かいんだけど普段「私は〇〇したい」っていうときまず出てくるのは“我想(ㄒㄧㄤˇ|xiǎng)〇〇”ですよ。ね?この漢字一つの違いでニュアンスがどう変わるかっていうこと。“想”は英語のwant toで、“要”はneed toに対応するって言うと分かりやすいかしら?「俺はオムライスを食う必要がある(だから作れ)」みたいな、実際にそこまで強くきこえるわけじゃないんだけど、でも“想”よりは強い。拒否させない「オムライスが食べたい」なのでした。(27:45)
“誰想哭啊” 訳:誰が泣くもんか
愛のオムライスを食べてベランダでおしゃべりする二人。「よくやってるよ、ありがとう」と言って、ここでシーがフェイの肩を抱く。「なんだよ!」と返すフェイ。「泣きたいんじゃなかったのか? 肩を貸してやるよ」と言うシーにまた返すセリフ“誰(ㄕㄟˊ|shéi)想哭(ㄎㄨ|kū)啊(˙ㄚ|a)”、字幕の訳は「誰が泣いてるんです?」だったけど、実はこれも英語で考えると分かりやすい。
上で紹介した“想”がここでも出てるから、英語では「Who wants to cry?」直訳は「誰が泣きたいのですか?」よね。でもフェイのシーに対する話し方って先生に対するそれではないのよね。これより前に呼び捨てにするシーンもあったし。ここでのセリフも割合友達とか近しい関係の人に対する言い方に聞こえる。
“誰+V?”の形ってよく出てきて「誰がVするか」って訳せるのね。例えば“誰知(ㄓ|zhī)道(ㄉㄠˋ|dào)?”、「誰が知ってるか」つまり「そんなもん知らねえわよ」とかね。でもこのあたりの二人の感じ、改めて見ると実はもう好意持っているように見えてきたわ。みんなどう思う?(31:50)
台北の「洋食」
台湾でオムライス流行ったのって何年前かしらねえ。15年くらい前に西門町にオムライス屋さんができて話題になったりしたんだけど、ひと昔前のいわゆる「洋食」って、台湾ひどかったわよ。
“義(ㄧˋ|yì)大(ㄉㄚˋ|
dà)利(ㄌㄧˋ|lì)麵(ㄇㄧㄢˋ|miàn)”「パスタ」なんて中華鍋で炒めてて、アルデンテなんてものは存在しなかった。そもそも台湾で食べる麺って伸びてても普通だしね。
それにあたしの記憶の中じゃ“咖(ㄎㄚ|kā)啡(ㄈㄟ|fēi)”「コーヒー」すらおいしくなかったもの。ところが、今はパスタもコーヒーも台湾式のお店を外しさえすればおいしいものが食べられるようになった。まあでも台湾じゃ台湾料理食べればいっか。
執筆者情報
歐陽ママ
早稲田大学大学院修了。論文のテーマは台湾の文化。
2012年から2013年にかけて台湾で生活、日本語の先生などしてふらふらする。
新宿二丁目では2021年10月15日に新しいお店「美麗島」をオープン!