
同作は、テレビアニメシリーズ第5期で描かれた冬のヒーローインターン(学校の許可を得て行う校外活動)の最中に起こった事件が描かれており、オセオン、日本、フランス、アメリカ、アジア、エジプト、シンガポールなど舞台も世界へと広がり、まさしくヒロアカ史上最大級のスケールとなっている。
フレクト・ターンを指導者とする組織“ヒューマライズ”は、「“個性”は病気で、“無個性”な人間こそが純粋な存在」という思想を持っており、世界中の“個性”保持者を殲(せん)滅させようと企んでいる。世界中に仕掛けられた“個性”を暴走させる爆弾を2時間という制限時間内に見つけ出して排除しなくてはいけない。もちろん市民の安全も確保しながら、ということを考えると最高難度のミッションが課せられた。
ここで考えさせられるのが、“ヒーローとは何か?”“’個性’とは何か?”ということ。人間に発現した超常的能力である“個性”は総人口の8割が保持していて、名前の通り、その能力は人それぞれ違っている。その“個性”を生かして事故や災害から人々を守るのが“ヒーロー”。敵<ヴィラン>も“個性”を持っており、ヒーローとは逆で、それを悪用して犯罪を起こしている。ヒーローも敵<ヴィラン>も持っている“個性”をフレクト・ターンがなぜ忌み嫌うのか、その理由も気になるところ。
仕掛けられた“個性因子誘発爆弾”は、“個性”を暴走させて崩壊に導く爆弾。多くの人が“個性”を持っているとは言え、“個性”を生かして平和を守っているヒーローの方が受けるダメージは大きいはず。自らを犠牲にしても市民を守るという覚悟があるのか。そんなヒーローとしての資質も問われる物語でもある。
今回の敵の象徴と言えるのはフレクト・ターンだが、もう1人の新キャラクターの“ロディ・ソウル”も重要なキーパーソンである。オセオンでデクは敵か味方か分からないロディに遭遇し、あるトラブルから、大量殺人犯として全国指名手配となって追われる身となってしまう。お調子者だけど憎めないキャラのロディと相棒のピノの存在と行動がどう影響するのか、今回の事件にどう関わっているのかなども注目したいポイントである。
ロディの声を演じているのは俳優の吉沢亮。ヒロアカの大ファンというだけあって、この世界観にうまくなじんでいる印象を受けた。他に、ピノの声を演じる林原めぐみをはじめ、本名陽子、野島裕史、伊瀬茉莉也など、実力派声優陣が映画オリジナルキャラクターを演じている。
世界が舞台というスケールの作品なので、おなじみのキャラもたくさん登場。そして、ヒロアカの本質的なテーマでもある“ヒーローとは”“’個性’とは”ということについて改めて考えさせられる内容でもあるので、今後クライマックスへと向かうテレビアニメシリーズをより深く楽しむためにも今作を見ることは必須と言える。
(文・田中隆信)
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