2022年5月、新型コロナウイルスの影響で公開が延期になるなどしていたが、36年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』が公開された。80年代を代表する名作の続編ということで期待値もハードルも上がったが、公開されると絶賛された。前作をリアルタイムで観た世代だけでなく、若い世代まで取り込み夢中にさせ、8月15日までで国内興行収入が110億円を突破している。Rakuten TVでも9月9日から配信が始まり、さらにハマる人が増えそうだ。
さて、なぜこんなに『トップガン マーヴェリック』が絶賛され、ロングランになっているのかを考えた時、ストーリーの良さ、リアルな映像の迫力、複雑な人間模様など、いろんな要素が浮かんでくる。それらをまとめて、トム・クルーズの“本気”と言うことができる。
人気映画作品はファンの期待に応えて続編が作られてきた。『トップガン』も続編を期待する声がずっとあったが実現してこなかった。それは主演であり、今回の作品ではプロデューサーにも名を連ねているトム・クルーズがGOサインを出さなかったから。そんな状況が長く続いたが、納得できるストーリー、納得できる撮影スタイルが見えたことで動き出すことができた。
トム・クルーズがこだわったことの一つが「CGではなく本物を撮ること」。前作で俳優陣が戦闘機に乗り込んで訓練を受けたことは冒頭で触れたが、トム以外の俳優は強烈なG(重力加速度)によって体調を崩し、戦闘機に乗って演技をする余裕はなかった。しかし、今回はキャスト全員が3カ月にも及ぶ飛行訓練を受けて、飛行や重力に関するメカニズムなどを学んだ。訓練の中には水中訓練もあったという。飛行中のGによる顔の歪みも含めて全てが“本物”。訓練を乗り越えた者たちだけが出来うること。
撮影機材の進化も今回の続編が実現した大きな要素となっている。観客が“まるでコックピットに乗っているようだ”と感じる映像となっているが、1機の戦闘機の中に6台のIMAXカメラを積み込み撮影したから、そのリアリティを生み出すことができた。このカメラもGの負荷と飛行する高度に耐えられるものでなくてはならない。そう考えると、今だからこそ実現できたというのも腑におちる。
それにしても、俳優が戦闘機に実際に搭乗して、しかも自ら撮影も行う“という前代未聞の撮影は、トム・クルーズが関わったからこそ実現できたことで、誰かがこれを真似することは恐らくできないだろう。 “本物”と“本気”を味わえるこの作品をぜひ体感してもらいたい。
(文・田中隆信)
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