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梨泰院の屋根部屋を舞台に、韓国Z世代の愛と青春と成長を描くBL映画『Made in Rooftop』

梨泰院の屋根部屋を舞台に、韓国Z世代の愛と青春と成長を描くBL映画『Made in Rooftop』
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韓国BLといえば、主人公が自分のセクシャリティに悩み、誰かを好きになったせいで深刻な事態に陥っていく物語が多いが、この『Made in Rooftop』には、暗さがない。

本作の監督、キム=ジョ・グァンスは韓国で初めて同性同士の結婚式を行った映画監督で、その模様は『MY FAIR WEDDING』(監督:チャン・ヒソン)という映画にもなっている。当事者だからこそ、クィアの恋愛を普通の恋愛として描いたのかもしれない。

物語の主人公は、二人の青年。就職浪人中のハヌル(イ・ホンネ)は同棲中の恋人のジョンミンとケンカをして、心無い言葉をジョンミンに浴びせて家を飛び出してしまう。ハヌルにとっては恋の駆け引きにすぎないケンカだったが、このケンカのせいで同棲は解消。家から追い出されるハメに。もうひとりの主人公は、韓国版ライバー(ライブ配信者)である人気BJ(Broadcasting Jockey)のボンシク(チョン・フィ)。派手な服と奇抜なヘアスタイルで電動キックボードを乗り回し、「40歳までに死ぬ」を目標に、宵越しの金を持たずにブランド品を買いあさっている。

家から追い出されたハヌルは、友だちであるボンシクが住む屋根部屋(Rooftop)に転がり込む。しかしジョンミンへの未練を引きずり、ジョンミンに連絡をしてはまた、駆け引きをするが、すべてが裏目に。一方ボンシクは、彼の配信のファンだというバーテンダーのミンホに猛烈にアプローチされるが、ある秘密のせいで新しい恋に踏み出す勇気が出ない。

この作品では、主人公二人が恋愛関係になるのではなく、二人の主人公それぞれの恋愛模様が描かれている。愛に素直に向き合えない韓国のZ世代たちが、失敗を重ねながら本当に大事なものが何なのかに気付く青春ラブストーリーは、人を愛することの大切さを主点に描かれおり、苦難を乗り越えた先の恋愛成就を描いてきたこれまでの韓国BL作品とは少し異なる、明るく爽やかな作風となっている。

タイトルに出てくる「Rooftop」とは、韓国ドラマではお馴染みの「屋根部屋」のこと。韓国映画初のアカデミー賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』で注目された半地下同様、屋根部屋も収入の少ない人々が住む住居で、ビルの屋上に建てられたプレハブ小屋のようなところ。エレベータなしの最上階、夏は暑くて冬は寒いといったハンデがあるが、屋上スペースが使えることや、そこからの眺めが美しいこともあり、お金のない若者が多く住んでいる。『屋根部屋のプリンス』、『シークレット・ガーデン』、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』、『この恋は初めてだから』などなど、韓国ドラマのヒロインの住居としてもたびたび登場している。また、韓国のバンドN.FlyingはZ世代の恋愛を描いた「Rooftop」という曲を歌い、若者世代からはリアルとして、年配世代からは懐かしい思い出として、その世代にも寄り添う恋愛ソングとして支持されるなど、韓国では馴染みのある場所といえる。

屋根部屋の屋上部分はビル居住者の共用部となっていることが多く、住民たちが洗濯ものを干したり、プランターを置いて野菜を育てたり、焼肉や飲み会をしたりと楽しみも多い。『Made in Rooftop』にも階下に住むおばさんが登場し、野菜に水をやりながら2人の成長を暖かく見守ってくれているが、このおばさんを演じているのは『パラサイト 半地下の家族』の家政婦を怪演したイ・ジョンウンというのも豪華。また、この梨泰院の屋根部屋から見える南山タワーの美しい夜景もアクセントに。韓国らしい今どきの若者の屋根部屋生活を垣間見つつ、ハヌルとボンシクの愛と成長を見守ってほしい。

(文・坂本ゆかり)

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