1954年にカナダで生まれたキャメロン監督は、幼い頃から芸術・美術面での才能を垣間見せ、15歳の時にスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』を観て、自分でも映画を撮り始めたという。監督を務めた作品のほとんどで脚本も手掛けていたり、自らコンセプトアートを描いたりしているのは、幼い頃から培ってきた芸術センスをうまく生かしていると言える。
2021年に『テック・ノワール ジェームズ・キャメロン コンセプトアート集』という作品集が刊行されたが、この書籍には『ターミネーター』『エイリアン2』『タイタニック』『アバター』といった監督作のコンセプトアートのほかに、幼少期に描いた漫画や学生時代のスケッチ、下積み時代に描いた低予算映画のポスターやデザインなども見ることができる。
1984年に公開されたアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ターミネーター』は、当時のSF映画としては低予算で作られたが、予想を上回る世界的大ヒットを記録し、続編も作られた。“AIの反乱”などは、『2001年宇宙の旅』などからの影響も大きく感じられる。それになんと言っても、骨格(エンドスケルトン)は金属だが生体組織は人間と瓜二つというターミネーターという存在を思いついたことが、リアリティも生み出している。
メカニック的なこだわりといえば、1986年公開の『エイリアン2』で、シガニー・ウィーバーが演じる主人公リプリーが乗り込むパワーローダー(作業用のパワードスーツ)もSFやメカが好きな人にはたまらないアイテムと言える。
62493 『タイタニック』(C) 1997 Twentieth Century Fox Film Corporation and Paramount Pictures Corporation. All rights reserved. https://tv.rakuten.co.jp/content/62493/
1997年の『タイタニック』は史実を元にした悲劇を描いた作品だが、細部にまでのこだわりがたくさん見られる作品となっている。タイタニック号自体が巨大な存在で、それを舞台にした作品を撮ることは難しいことだと誰もが想像できるが、メキシコに世界最大のスタジオを建てて、ほぼ実物大のタイタニック号のレプリカを作って撮影が行われた。タイタニック号が沈む海底シーンは、水深4000メートルで撮影を行ったという。キャメロン監督の作品には水中・海中でのシーンが多く出てくるが、自身が3000時間以上の水中滞在記録を持つスキューバダイバーで、世界各地で難破船探索や深海調査を行っていることから、海や水に対する興味の大きさも感じることができる。
『アバター』では、独自の革新的な3Dカメラを開発し、3D作品における映像技術、映像表現力を飛躍的に高めた。それまでの3D映画作品といえば、浮き出てくるような映像に驚きを感じさせてくれたが、『アバター』の場合は浮き出しや飛び出しだけではなく、逆に“奥行き”を感じさせてくれたことに大きな衝撃を受けた。それによって、スクリーンで見る映像世界がより広がり、没入感を生み出し、同時により“リアリティ”が増している。最新作の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は3D映像技術もさらに進化し、またもや映像界に革新的な変化をもたらすことになるだろう。
(文・田中隆信)
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