ベイビー・ブローカーのサンヒョン(ソン・ガンホ)とドンス(カン・ドンウォン)は、ソヨン(イ・ジウン)が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそり連れ去る。赤ん坊がいないことに気付いたソヨンに通報されそうになり、3人は里親探しの旅に出ることに。ベイビー・ブローカーたちの現行犯逮捕を目論む刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩イ刑事(イ・ジュヨン)は、静かに3人の後を追っていく――。
是枝監督といえば、『空気人形』(2009年)の主演に韓国人女優のペ・ドゥナを起用。彼女は日本アカデミー賞優秀女優賞などに輝き、日本でも高く評価された。『空気人形』は韓国の俳優を招いた日本映画だが、この『ベイビー・ブローカー』では、是枝監督が韓国に出向き韓国映画を撮った。ペ・ドゥナはもちろん、アカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』(2019年)で世界の注目を集めたソン・ガンホを主演に、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020年)のカン・ドンウォン、歌手・女優としてのトップクラスの人気を誇るイ・ジウン(IU)や、ドラマ『梨泰院クラス』(2020年)で新世代スターの仲間入りを果たしたイ・ジュヨンらが参加。さらに撮影に『バーニング 劇場版』(2018年)のホン・ギョンピョ、音楽にドラマ『イカゲーム』(2021年)のチョン・ジェイルと一流スタッフが是枝の下に集結し、名作を作り上げた。
是枝監督のように日韓の映画界を行き来して、現地で活躍する俳優たちを紹介しよう。
日本エンタメ界で活躍する韓国人
シム・ウンギョン
中国、ベトナム、日本でリメイクされた大ヒット映画『怪しい彼女』(2014年)で主演を務めたシム・ウンギョン。2017年から日本の事務所とマネージメント契約を交わし、日本でも舞台、映画、ドラマに出演している。松坂桃李とW主演を務めた映画『新聞記者』(2019年)では、第43回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、最優秀主演女優賞、第74回毎日映画コンクール女優主演賞、第11回TAMA映画祭最優秀新進女優賞を受賞。日本アカデミー賞で演技部門の優秀賞を外国人が受賞するのは、ペ・ドゥナ以来2人目だが、最優秀賞受賞は史上初の快挙。もちろんせりふもすべて日本語で挑んだ作品だ。日本アカデミー賞では、日本語での素晴らしいスピーチを披露した。ほかにもドラマ『七人の秘書』(2020年)、『アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜』(2021年)に出演。NHKドラマ『群青領域』(2021年)では主演を務めた。
ヤン・イクチュン
監督デビュー作『息もできない』(2009年)が、インディーズ映画ながら高評価を受け、日本でもキネマ旬報ベスト・テン外国映画ベスト・テン第1位・外国映画監督賞を獲得したヤン・イクチュンは、俳優としても活躍。寺山修司の長編小説「あゝ、荒野」を原作にした2部構成の大作映画では、菅田将暉とのダブル主演で因縁を抱える孤独なボクサーを好演した。
イ・ビョンホン
韓流四天王も日本映画に出演している。木村拓哉の大ヒットドラマ『HERO』(2001年~2015年)の劇場版第1作目にイ・ビョンホンが、共に事件を追う韓国のエリート検事役で友情出演。久利生(木村拓哉)と雨宮(松たか子)の関係に影響を与える一言「彼女を離すなよ」という名せりふも登場した。韓国ロケも行われ、韓国でも公開された。人気韓流スターと日本の大スターの共演は話題に。映画『HERO』も興行収入81億円で、2007年日本映画の1位に輝いた。
韓国エンタメ界で活躍する日本人
國村隼
韓国でもっとも知られる日本人俳優は、國村隼かもしれない。日本のテレビドラマでは気のいいおじいちゃん役も多いが、『チェイサー』『哀しき獣』のナ・ホンジン監督が、クァク・ドウォン、ファン・ジョンミンら名優を主演に起用した『哭声/コクソン』(2016年)での國村は、ふんどし一丁で山の中を駆け回る不気味な役。國村の怪演あっての大ヒットといえるだろう。國村は韓国の第37回青龍映画賞で外国人俳優として初受賞となる男優助演賞と人気スター賞のダブル受賞を果たした。
上野樹里
韓国でもドラマ『のだめカンタービレ』(2006~2010年)で人気が高い上野樹里は、映画『ビューティー・インサイド』に、毎日違う容姿で朝を迎える男・ウジン役で出演。なんと主人公・ウジンは、123人もの役者が演じた。上野樹里が演じたのは、ヒロイン役のハン・ヒョジュとウジンとの繊細で重要なシーン。ほかにもウジンをパク・シネ、パク・ソジュン、イ・ジヌク、ソ・ガンジュン、イ・ドンウクなど人気俳優たちが演じている。
豊原功補
映画『新しき世界』(2013年)のファン・ジョンミンとイ・ジョンジェが7年ぶりに共演したノワールアクション作『ただ悪より救いたまえ』。殺し屋インナム(ファン・ジョンミン)は、引退前の最後の仕事として、豊原功補演じる日本のヤクザ・コレエダを殺害。コレエダの義兄弟、殺し屋レイ(イ・ジョンジェ)は復讐のためインナムを執拗に追う。ドラマ『イカゲーム』のイ・ジョンジェ演じるスタイリッシュでイカレタ殺し屋が、とにかく殺しまくる。コロナ直前の日本で撮影が行われた日本パートでは、豊原の韓国語のせりふも見どころとなっている。
(文・坂本ゆかり)
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