英語が堪能な社長秘書だった39歳の主人公・嘉玲(ジアリン)は、シーズン1で家なし、車なし、夫なし、子どもなし状態だったが、結婚を強く意識したことから生活がガラリと変わった。高学歴で自立心が強く、慣例に従わないジアリンが、どんな選択をしていくのか。彼女の生きざまが面白いラブコメディだ。
台湾でも結婚率が減少しており、その原因の一つは他国と同様に自由を求める女性が増えたからだといわれている。2016年に出版されたジャン・オーのエッセイは、まさにそんな台湾の姿を映し出しており、主人公のジアリンは自分らしい人生と自由を求めて生きる現代女性だ。物語は39歳のジアリンの日常と同時に、彼女の幼い頃の回想がインサートされていくことで祖母や母親の時代の結婚の形も浮き彫りにされ、時代と共に移り変わる結婚観が見て取れる。それと同時に、口は悪くて騒々しいが温かい家族の姿も描かれ、笑って泣ける一作になっている。また、アジアで始めて同性婚を認めた国らしく、同性婚についても触れられている。弟のジアミンが同性愛者なのだが、同性愛について母親がどう理解を深めたかが語られるところも興味深い。
384776 シーズン1より (C)2019 CTS, Chinese Television System https://tv.rakuten.co.jp/content/384774/
シーズン1でのジアリンは、大学時代の彼氏の結婚に触発されて、同居人同然になっていた交際4年、同居3年の顯栄(シエンロン)にプロポーズし、結婚することになった。しかし、人がよく、おぼっちゃまの彼は、母親の言いなり。新居の頭金を出してもらったとはいえ、内装リフォームを勝手に決められ、ウエディングドレスも母親が選んだものに勝手にすり替えられ、結婚後は仕事を辞める前提で、毎日、一緒に習い事に行くことになっている。結婚後も仕事を続けるつもりでいたジアリンは、自分が失われていくことを感じて、結婚を破棄する。ジアリンとて結婚を夢見ていないわけではないが、心が従来型の結婚を良しとせず、どうしても受け入れることができない。このジレンマが悲しみとなり、自暴自棄になり荒れた日々を送っていたところへ、弟の嘉明(ジアミン)が現れ、都会の台北から故郷の台南へと救出してくれるのだった。
こうして台南に戻ってきたジアリンだったが、祖母や両親に破談になったことを言えず、隠し続ける。叔母の時代には30歳でも未婚であることが問題視されたのに、ジアリンはまもなく40歳。祖母も両親もご機嫌で浮かれていたため、シエンロンからのある便りで破談になったことを知ると大騒動に。母親からは身勝手でわがままだと全力で非難されるが、祖母はすぐに切り替え、次々とお見合いをさせられる。こうして、幼なじみの永森(ヨンセン)と“祖母公認”で再会し、言いたいことが言い合える二人がカップルになるのに時間は掛からなかった。
440548 シーズン2より(C) CTS, SCREENWORKS, Variety Shows Film. All rights reserved. https://tv.rakuten.co.jp/content/440545/
シーズン2では、台南に戻ったジアリンが大きな買い物をする。なんと、子どもの頃に幽霊屋敷と呼んでいた荒れ果てた家を購入したのだ。台北で住むはずだった新居とは真逆に、ヨンセンの手を借りながら、庭も家も自分の手でリフォームしていく。しかし、ヨンセンと暮らすわけでもないのに女性のジアリンが家を買ったことが納得いかないのか、母親はあれこれ文句を付けてくる。白いソファーは汚れやすいからとすり替えたのは日本人でも理解できるが、風水師を連れてきて、間取りに文句を付けるのは台湾ならでは。ジアリンの留守を狙って、ナチュラルテイストの家に、開運アイテムのどデカいヒキガエルの置物を置こうとするなど、母娘の攻防が面白い。
周囲から一般的な結婚観や価値観を押し付けられそうになるたびに、独自のやり方で跳ね除けていくジリアン。儒教の経典である「易経」も気にせず、間取りもソファーの色も仕事も彼との付き合い方も全て自分で決定し、新しい生活を始めていく。海外からの観光客相手の英語ガイドという新しい職に就いたばかりにジアリンは、まだ結婚も妊娠も考えていないが、妊娠については年齢的なリミットが迫っている。自分らしい生き方を求める彼女がどんな選択をするのかが、シーズン2の大きな見どころだ。
“俗女養成記”=“普通の女性の養成記”というタイトルではあるが、読んでいただいた通り、ジアリンは従来通りの普通の女性ではない。もしかすると、“次世代の普通の女性”の生き方を提示しているドラマなのかもしれない。
(文・及川静)
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