原作は、ドラマ化されて大ヒットした『鎮魂』『山河令』でも知られる人気作家Priestのベストセラー小説。それだけでも注目の的だったが、“視聴率女王”ともいわれるチャオ・リーインの出産後の復帰作であり、『陳情令』で一躍トップスターとなったワン・イーボーとの初共演ということで期待が高まっていた。チャオ・リーインとワン・イーボーは、中国のテレビドラマ賞の一つ、第30回中国電視金鷹奨(2020年)で、最も視聴者に愛された女優と男優に選ばれた2人なのだ。
すると、配信初日のわずか2時間で再生数1億回を突破。中国のSNS「Weibo」でのトピック閲覧数935億回以上など驚異的な数字を記録した。そしてキャスティングだけでなく、物語自体の面白さも相まって、中国のレビューサイトなどで2020年度、2021年度と続けてランキング1位を獲得した。
舞台となるのは南北朝時代。山中に築かれた砦・四十八寨(しじゅうはちさい)の当主の娘・周翡(しゅうひ、チャオ・リーイン)は、ある目的から砦の固い守りを破って侵入した謝允(しゃいん、ワン・イーボー)と出会う。半年後、任務のため下山した周翡は謝允に思いがけないところで再会。やがて2人は民を苦しめる宿敵の陰謀に立ち向かっていくことに。
母から厳しい指導を受け、武芸の修練に励む周翡。正義感が強く、最強の刀術といわれる破雪刀(はせつとう)を継承するが、未熟さが残る。一方、謝允は高く跳んだりする軽功の名手で身のこなしが軽やかではあるが、とある理由から武芸には秀でていない。だが、巧みな話術を持ち、博識な人物で、男気もあり、素性は謎だがそこはかとなく気品がある雰囲気。
チャオ・リーインは負けん気が強い周翡を凛々しくチャーミングに、ワン・イーボーは『陳情令』のときの冷静沈着な青年から一転して軽妙洒脱な青年を活き活きと演じる。物語をけん引する2人のキャラクターとして実に魅力的だ。
道中でさまざまな人と出会い、技や“気”を伝授されていく周翡は、強きヒロインとして謝允や仲間たちを守っていく。謝允はまったく戦えないわけではないのだが、難敵に立ち向かう彼女を支え、弱ったときには介抱して守るという様相。正反対のようだった2人が互いに特別なものを感じて、惹かれ合うロマンスに胸がときめく。
例えばロマンスの始まり。謝允は周翡のために小さな木製の刀の飾りを作るのだが、周翡を思ってコツコツ彫っていたことを思うとキュンとする。また、「周翡と生死を共に」とサラリと言う場面も。対して、周翡は初め正体のよく分からない口達者な謝允を警戒していたが、いつしか変化。「こんな怪しげな男をなぜ信頼してしまうの? 顔がいいからかしら」というモノローグに思わずクスリと笑ってしまうほどかわいい。
周翡の頑張りや、謝允の謎が明かされながら、決死の闘いに共に立ち向かうなかで絆が芽生え、お互いを信じあい、愛が深まっていく。顔立ちの整った2人の甘いラブシーンは見惚れる美しさで、危機が迫るなかで挟み込まれる愛情を感じるシーンにグッとくる。
周翡&謝允のほかに、周翡の両親や祖父、周翡をライバル視するいとこの李晟(りせい、チェン・ルオシュエン)らのロマンスも描かれつつ、闘いのなかでの周翡らの成長譚と、厚みのあるストーリーが展開。華麗なアクションシーンも見応え十分。最強のバディであり、カップルへと突き進む周翡と謝允が迎えるラストまでたっぷりと楽しませてくれる。
(文・神野栄子)
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