POVで絶望感を味わうホラー映画4選
オカルトの森へようこそ THE MOVIE
『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』は、ホラー界の鬼才・白石晃士が監督・脚本・撮影を務めるPOVホラー。白石監督はこれまでも「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズや『ある優しき殺人者の記録』などを手掛けてきた、日本のPOVホラーの第一人者。今作は、白石自身が演じるホラー映画監督の黒石光司が構えるカメラ視点で展開していく。黒石は、助監督の市川美保(堀田真由)を引き連れ、実録映画の撮影のため、黒石の映画のファンだという三好麻里亜(筧美和子)の家を訪ねる。山奥にある麻里亜の家に近づくごとに、不吉な言葉が書かれた張り紙が増えていく。ここで引き返せばいいのに引き返さない。到着した麻里亜の家で、二人は不気味な現象を目の当たりにすることになる。
不気味な言動を繰り返す麻里亜を追って森の中へと入っていく二人に、RPGのごとく仲間が加わっていくのだが、この仲間たちや助監督の市川のメンタルがとにかくすごい。恐怖と向き合った時の彼らのテンションがツボにはまる。オカルトやホラーに一番耐性があったであろう黒石が一番ヘタレに見えてくる。観ていくにつれ、登場人物たちのことがやけに愛おしくなってしまうところも面白いポイントだ。襲ってくる“アレ”が悪なのか、人間のエゴが悪なのか、観終わった後、そんな真面目なことも考えさせられる。
テイキング・オブ・デボラ・ローガン
『テイキング・オブ・デボラ・ローガン』は、2014年にアメリカ合衆国で製作されたホラー映画。医大生のミア(ミシェル・アン)はアルツハイマー患者のドキュメンタリー映画の製作のため、クルーを連れてヴァージニア州の田舎町を訪れる。森の中に建つ赤いレンガ造りの家で彼女たちを出迎えたのは、アルツハイマー病のデボラ(ジル・ラーソン)と、その娘のサラ(アン・ラムゼイ)。クルーはデボラの家に住み込み、密着取材を始める。
デボラは身なりもきれいで意識もしっかりしているように見えるが、夜になると自宅や庭を徘徊する。家の至るところに取り付けられたカメラが、奇行を繰り返すデボラの様子を記録していく。“アルツハイマー患者の取材”という前提があるため、不思議な言動もその症状の一つだと思い込んでしまうが、病気という理由では説明のつかない奇行がどんどん増えていくのだ。クルーの一人は途中で「ついていけない」と帰ってしまう。どんどん凶暴になっていくデボラに何があったのか、真実には驚愕するばかり。恐怖におののきつつも、デボラとサラの親子愛にジーンとさせられる。
スナッチャーズ・フィーバー -喰われた町-
カナダの「アトランティック映画祭」で最優秀監督賞をはじめ4冠を獲得したカナダ発のPOVホラー。課題作品の製作のため、車で取材旅行に向かう映画学科の大学生4人が主人公。有料道路の料金所を抜けた頃から、不気味な兆候に遭遇していく。
背中を向けて直立する人、奇妙なメイクをした双子の美女、豚の仮面を被った子供、男の子の弁当に入っていた謎の物体……。小学校、歯医者、銀行と、平穏な町で取材を進めていくはずだった彼らは、その謎を解明できないまま、目に見えない恐怖に巻き込まれていく。
とにかく主人公たちには「引き返すタイミングは何回もあっただろう?」と言いたくなる。気がついたら巻き込まれていたという次元ではなく、最初から不気味だ。学生が撮るカメラ視点なので、映像がぼやけていたり、露出が調整できていなかったり、音声が途切れていたりと、未熟な部分がやけにリアルで生々しい。
ブレア・ウィッチ
『ブレア・ウィッチ』は、POVホラーの代表作の一つで、世界中に大ブームを巻き起こした1999年公開の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の正統な続編ストーリー。“ブレアの魔女”をテーマにしたドキュメンタリー映画を製作するため、ブラック・ヒルズの森を訪れたまま消息を絶った姉・ヘザーを救うため、弟のジェームズ(ジェームズ・アレン・マキューン)が仲間とともに、ブラック・ヒルズの森に足を踏み入れる。
一作目に出てきたスティックメン(木の枝で作られた人型のオブジェ)や、積み上げられた石が出てくるシーンは、一作目ファンにはたまらないシーンだが、同時にひたひたと迫り来る恐怖を実感する。カメラマン役のリサ(カリー・ヘルナンデス)のカメラ視点を通して、救いのない絶望へと加速していく臨場感はやはり白眉ものだし、何よりも切ない。
(文・大窪由香)
https://news.tv.rakuten.co.jp/2023/07/haunted-house.html 【映画】気味の悪い“屋敷”が舞台。背筋が凍るホラー洋画特集
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