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主演作『エゴイスト』「劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』」が配信中、鈴木亮平が積み上げた絶対的存在感

主演作『エゴイスト』「劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』」が配信中、鈴木亮平が積み上げた絶対的存在感
(C) 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
ドラマや映画を見るとき、この俳優が出ているなら選んでみようということがある。多くの主演作がある鈴木亮平も、その一人だという人も多いかもしれない。いまや日本のドラマ、映画界に欠かせない鈴木の最新主演映画2作がRakuten TVで配信中。そこから彼の魅力をひも解いてみたい。

鈴木亮平は、2006年に俳優デビュー。その後、ハリウッド俳優ロバート・デ・ニーロにちなんで“デ・ニーロ・アプローチ”と言われている見た目の変化を含めた徹底した役作りをすることでも知られるように。代表的なところでは筋骨隆々の体に際どいコスチュームで女性用パンティを被った“正義のヒーロー”を演じた『HK/変態仮面』(2013年)や、実年齢32歳のときに巨漢の高校生主人公にふんした『俺物語!!』(2015年)がそうだ。

貪欲なまでに役に向き合うアプローチで、突飛な役でも説得力と感動をもたらし、俳優として第一線で活躍するようになった鈴木。2018年には大河ドラマで主人公・西郷隆盛を演じたほか、普段のインタビューなどでも見せる優しい声色と柔和な笑顔を活かした役どころから、映画『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)のような観ているだけで恐怖心にとらわれる悪役まで、主役、脇役問わず、さまざまなキャラクターで存在感を放ち、物語を彩ってきた。

そして2023年。鈴木は相次いで公開された主演映画2作でまったく異なる表情を見せた。

まず、『エゴイスト』。コラムニストである故・高山真氏の自伝的小説を原作にした本作で鈴木が演じたのは、ゲイの編集者・浩輔。田舎町で育ち、ゲイであることを隠していた思春期を経て、まるで自分の鎧であるかのようにハイブランドの洋服を身にまとい、どこか虚勢を張って生きている。そんな浩輔が、パーソナルトレーナーの龍汰(宮沢氷魚)と出会い、惹かれ合う。

本作には、性的な描写を含むシーンにおいて役者のサポートをし、動きや所作も監修するインティマシー・コレオグラファーと、性的マイノリティがどのように描かれるかを監修するLGBTQ+インクルーシブ・ディレクターが参加。その活躍により、リアルな描写が生まれているのだが、言葉使いから歩き方、ふとした指先の仕草まで、鈴木は見事なまでに会得し、“浩輔”というキャラクターを作り上げている。

そんな鈴木について、映画の公式ホームページにアップされているインタビュー動画で松永大司監督は「優秀な表現者」と評し、共演した宮沢は「作品との向き合い方が超一流」と答えている。鈴木自身は、監督の撮影法により「本当に“自分が浩輔だ”と信じて、そのまま生きればいいんだという状況をつくってくれました」と語っているが、まさに“生きている”のだ。

物語は、浩輔の大きな情愛が包み込む。描かれる性愛と情愛。男性同士の恋愛ではあるのだが、愛とはエゴなのかという普遍的な命題を、浩輔という役を通して突きつける。印象的なシーンをピックアップすると、2度ほど出てくる浩輔が眉を描くところ。その時々の感情がヒシヒシと伝わり、鈴木の演技の真髄が見られるともいえる。ちなみに、本作で鈴木はニューヨーク・アジアン映画祭でライジングスター・アジア賞を受賞するなど評価されている。

続いて「劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』」は、2021年に放送されて人気を博したTBS系ドラマを映画化。同作で鈴木は、オペ室を搭載した大型車両=ERカーで事故や災害現場に駆け付け、人々の命を救う救命医療チームのチーフドクター・喜多見にふんしている。

『エゴイスト』で浩輔が体を鍛えるシーンが差し込まれるが、本作の喜多見も筋トレするキャラクター。偶然にも“筋トレ”が共通であっても、当然ながらまったく異なる両者。

死者を一人も出さないという使命を持ち、「待っているだけじゃ、救えない命がある」という信条のもとで喜多見は、危険な現場に自ら突入する行動力を発揮する。負傷した人々に向かって「医師の喜多見です!もう大丈夫ですから安心してください」と呼びかけるときは、優しさに満ちた声色でありがなら、心強い。また、優秀な救命救急医ということで、手術などの処置の確かな手さばきは医療知識がなくても惚れ惚れするほど。ここでも鈴木の役作りの深さがよく分かる。

劇場版の見どころは、喜多見の心が揺れる場面だ。東京都知事肝いりのTOKYO MERに対し、厚生労働省がけん引するYOKOHAMA MERが新たに誕生し、対立の様相を見せるなか、70階建ての横浜・ランドマークタワーで爆発事故が発生。そこで喜多見の妻・千晶(仲里依紗)が巻き込まれていることが分かる。妊娠後期で切迫早産のリスクを抱える千晶。喜多見の脳裏には、ドラマで描かれた妹・涼香(佐藤栞里)を亡くした悲しみが蘇る。絶望的な状況のなかで喜多見はどう判断するのか、それを鈴木は丁寧に表現する。

身体的に体現するだけでなく、心の動きをも繊細に見せて、そのキャラクターを成立させる。これまで培ってきた演技力で絶対的な存在感を生む。今回新たに配信された2作は、それがよく伝わってくるように思う。

(文・神野栄子)

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