主人公はプーケットに暮らす、高校3年生のオーエウとテーの2人。物語は中学時代にけんか別れした2人が大学受験のための語学学校で再会することから始まる。かつては親友だったが、目を合わせようともしない2人。共に俳優志望のため、ライバル関係となり、互いに憎まれ口を叩き合うようになる。しかし、推薦入学の結果が明暗を分ける。勉強の得意なテーは合格し、オーエウは落ちてしまったのだ。オーエウにひどいことを言ってしまったテーはたまらずにオーエウを追うが、泣きながら拒絶されてしまう。友達として大切な存在なのに素直になれなかったテーは、オーエウが1人になりたい時に決まって行っていた場所へ向かい、謝罪。そして、オーエウの苦手な中国語を教えることを提案する。ようやく笑顔で向き合った2人は再び親友としての時を刻み出すが、徐々にテーの気持ちが複雑に変化していく。オーエウが近くにいるとうれしいし、ほかの仲間と仲良くするとつまらない。テーはこの気持ちが何なのかわからないまま、受験までの3カ月を共に過ごしていくのだった。
オーエウを演じるのは、1999年4月30日生まれのグリット・アムヌアイデシャゴン、通称PP。テーは同じく1999年10月8日生まれのプティポン・アサラタナグン、通称ビウキン。本作は、この2人の存在から誕生した。2人が脇役として出演した男女4人のラブコメ「My Ambulance」でのコンビが人気だったことから、監督のBossがこの2人でドラマを作れないかと練りに練ったのが“ITSAY”だった。同い年で、事務所も同じPPとビウキンはもともと仲が良かったが、オーエウとテーになるためにワークショップからレッスンを開始。オーエウとテーのバックボーン、そして友情が愛情に変わっていく難しい心の機微を徹底的に体に浸透させたことで、本番では2人だからこそ生まれたアドリブもあったという。さらなる詳しい裏話が「メイキング特別編」で語られているので、こちらもぜひチェックしてほしい。
そして、まなざしひとつで感情を巧みに表現する、まさにエモーショナルなお芝居をさらにドラマチックに高めたのがこだわりの映像美。レトロ感漂うプーケットの街並みと、美しいビーチ。そして、昼夜問わず、優しい光に包まれた情景が2人の溢れる想いを包み込む。さらにビウキンが歌うOP曲「Skyline」も物語を盛り上げる。劇中ではオーエウへの気持ちに戸惑うテーだが、曲のなかでははっきりと気持ちを歌い上げているところが面白い。同じ曲をPPが中国語で歌っているバージョンもあり(中国語タイトルは「如何」)、2人が所属する「Nadao Music」のYouTubeサイトで見ることができる。
きめ細やかな演出と、小道具一つの色味にまでこだわった映像美、そして音楽。すべてが純朴な2人の少年の物語を完璧なものに仕立てている。アジア圏だけでなく、世界中の人々の心に響いたのも納得の一作だ。
(文・及川静)
https://news.tv.rakuten.co.jp/2024/04/bl-list.html BL関連記事一覧
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