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『DNA Says Love You』歐陽ママとお勉強ちゅう♡ #44

『DNA Says Love You』歐陽ママとお勉強ちゅう♡ #44
中国語映画・ドラマの翻訳や、日本で開催されたアジアBLドラマイベントMCなどに携わり、アジアドラマをこよなく愛する歐陽ママが、注目するドラマの台詞をきりとり、読者の皆様に中国語の表現の面白さなどをお伝えする「歐陽ママとお勉強ちゅう♡」。

DNA Says Love You = 基因決定我愛你。このタイトル、奇麗だなと思う。一つの比喩なんでしょうけど、目の前にいる自分の大好きな人に、自分が相手をどれだけ好きなのかを伝えるのって時と場合によっては難しいもの。日本人的には語らずに傍に寄り添うことが最大級の愛情の表現だったり、でも好きな人を落とすためには言葉を尽くしてしっかり伝えないと伝わらなかったり。本作のCP二組の主人公たちは心のどこかにそういう思いを抱えてるんだよね。紹介文にも書いたけど、みんな思いが言葉にならないときの表情がいいのよ。

『DNA Says Love You』× お決まりタイトル

今日はね、タイトルの話にかこつけて現代日本語の怠慢さを嘆く回になるわよ。新しい概念って世界中でどんどん生み出されているわけだけど、それは往々にして抽象的なもの。目に見えるものでないから理解にはちょっとした工夫が必要なはずだった。例えば明治の翻訳「哲学」は“Philosophy”を訳したものだけど、「愛智学」という候補もあったそう。「智を愛する学問だから」ってのが理由だけど高級な学問に「愛」はないだろうと却下されたみたい。翻訳には先人の苦労がこもっているのね。

作品紹介

DNA Says Love You

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帰来庵の伝説を聞いたことがある?

幼なじみのプー・ラージエン(浦楽建)、ジュアン・シーウェン(荘喜文)、シエ・ユーホー(謝雨荷)は共に過ごした子供時代に、一生離れずにそばにいようと誓う。だが思いもよらず理由もなく別れ、ラージエン、シーウェンはお互いの人生から消えていた。数年後、ラージエンが自分の探検チャンネルのアクセス数が減り続けてることを悩んでいる時、映像制作の勉強をしているアンバーという青年が現れる。そして彼はラージエンたちと共に「帰来庵」を探しに行くのだった。

出演:リン・フイミン、ホアン・シンハオ、レオ・クオ、リン・ウェイジエ、ホアン・ユンシン、リー・ジエントン
監督:ハオ・シンシアン
脚本:ワン・インジン、北府店小二

まずは定番のタイトルの話から!

“基因決定我愛你” 英訳:DNA Says I Love You

https://im.akimg.tv.rakuten.co.jp/content/50/92/410529/main.jpg

お決まりタイトルの話から。こういうの見ると、現代日本語の「弱さ」が透けて見えるよう。どう? 何か感じられるかしら? 決してあたしが日本語嫌いだってわけじゃないんだけどね。明治の日本人たちは西洋の抽象的な概念を次々に漢語に翻訳していった。“Republic”を「共和国」に、“Philosophy”を「哲学」にっていうふうに。それまでの日本にはそんなものなかったんだもんね。「共和国」も「哲学」もそんなものはなかった。
それがどうですか、現代日本は英単語をそのままカタカナ表記にすることになってしまった。“Compliance”を「コンプライアンス」に、“DNA”なんてそのまま「DNA」だもんね。中国語はいまでもせっせと母語に翻訳をしている。“DNA”は“基(ㄐㄧ|jī)因(ㄧㄣ|yīn)”だけど、「基礎的な因素」ということで分かりやすいものね。

“基因決定我愛你” 訳:「生まれたときから愛してる」

https://im.akimg.tv.rakuten.co.jp/content/50/23/410532/main.jpg

タイトルの“基因決定我愛你”、“基因”は「DNA」、“決(ㄐㄩㄝˊ|jué)定(ㄉㄧㄥˋ|dìng)”は「決める、決定づける」でそのままなんだけど使い方にはちょっとした使い方に違いがあるのね。だってこのタイトルだって、何が決定づけられているのかと言うと“我(ㄨㄛˇ|wǒ )愛(ㄞˋ|ài)你(ㄋㄧˇ|nǐ)”、「私はあなたを愛している」。“決定”に英語の“say”の意味はないでしょう? これはだから意味に従った訳になってるのよね。「DNAがあなたを愛することを決定づけている」じゃあ色気も素っ気もない訳だもの。あたしも考えてみたんだけど、DNAは生まれ持った特質のことですもの、要は生まれたときにすでに決まっているものだから、「生まれたときから愛してる」っていうふうにしてみたわ。主語もなければ目的語もない、こういうちょっとぼんやりした感覚が日本語のタイトルには好まれるように思うわ。気に入っていただけるかしら?

あたし新語をウォッチしてイライラしてます

最近の言葉、いろいろなものに違和感を抱きながら毎日過ごしてます。ときどきがっかりして元気がなくなるくらいよ。何、「見える化」って。「可視化」じゃなんでダメなの? 「ウォッチする」に至っては鳥肌立ったわ。「鋭意注視する」で十分事足りているように感じるんだけどなあ。コロナ禍でよく聞いた「サプライチェーン」だって「供給網(鎖)」のほうが分かりいいと思うのよねえ。こんなもん、あたしゃ絶対口にしないからね! 

執筆者情報

歐陽(オウヤン)ママ

早稲田大学大学院修了。論文のテーマは台湾の文化。
2012年から2013年にかけて台湾で生活、日本語の先生などしてふらふらする。
新宿二丁目では2021年10月15日に新しいお店「美麗島」をオープン!

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