7月第3月曜は国民の祝日「海の日」。「海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う日」と定義されている。また、7月1日~31日は海に対する理解と認識を高めるためのさまざまなイベントが開かれる「海の月間」でもある。そこで、海について知ることができるドキュメンタリー映画を4作品ご紹介。美しい映像も必見だ。
オーシャンズ
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『オーシャンズ』は、ドキュメンタリーとしては破格の制作費70億円をかけた。撮影期間は4年にわたり、最新の映像機材で世界50カ所の海の姿をとらえた。地球の生命の源である海。海中に漂う小さな息吹をはじめ、そのかわいさに自然と笑顔になったり、形態のユニークさに驚いたり。捕食シーンもあるが、それは生きていくには必要なことだ。どれほどに不思議で、神秘的で、生命にあふれた場所なのかが映し出される。しかし、美しさだけでなく、脅威にさらされていることも伝える。それは人間の文明の発達が関わること。人間が出したゴミなどで汚れてしまった海で泳ぐ生き物たちの姿が、それまでの澄んだ青い海と対照的で胸が痛み、考えさせられる。
エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ
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深海に焦点をあてた『エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ』は、『ターミネーター』や『タイタニック』の大作映画で知られるジェームズ・キャメロン監督の作品だ。出演もするキャメロン監督は、「私にとって深海探査ほど刺激的で胸の躍るものはない。作り物の映像とは迫力が違う」と言うほど、深海に魅了されている様子。深海と宇宙が似ているとして、両方の生物研究者とチームになり、深度3,000mを超す世界に挑んだ。太陽光が届かない極限の世界に生きる生命の神秘。潜水艦に乗り込んだ研究者たちと同じように、臨場感ある映像に魅入ってしまう。独自の生態系を保つ深海生物たちは、まるでエイリアン=異性物として、宇宙のロマンも感じさせる壮大さも興味深い。
アース
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イギリスの放送局、BBCが制作した『アース』は、生きるために太陽のエネルギーが不可欠な地球上の生き物たちの姿を、北極から南極へと移動しながら映し出していく。陸だけでなく、海の生き物も太陽の恵みで命を育む。なかでも印象的なのはザトウクジラ。暖かい熱帯の海で子を産むザトウクジラが、そこからエサを求めて南極大陸の端まで長距離移動する、“母子二人旅”をじっくりと追う。熱帯から冷たく荒れる海では、強い風や潮にかき回されて、養分たっぷりのエサが海底から上がってくるのだという。仲間と群れになってエサを食べるための知恵には感動を覚える。照り付ける太陽の熱で温まった海から水蒸気が立ち上り、それが地球規模で天候に影響を及ぼすという仕組みも、あらためて思い出させてくれる。
ライフ いのちをつなぐ物語
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『アース』と同じくBBC制作の『ライフ いのちをつなぐ物語』は“動物と同じ目線”にこだわって撮影された。地球上に500万種類もいるという生物のなかから、陸・海・空、それぞれの生物をとらえるのだが、“すべてのいのちは出産から”というテーマに沿いながら紹介していく。海の生物としては、出産のために“新居”を探すミズダコ、いのちをつなぐため円を描くように泳いでエサとなる魚を追い詰めていくバンドウイルカ、ザトウクジラのメスがオスを呼び寄せる様子などが見られる。海の生き物たちはもちろん、地球上のすべてのいのちがつながれていく未来が明るいことを願わずにはいられない。
(文・神野栄子)