夏休みをいただきました中国語講座、少し元気になったあたし、また元気に始めてまいりましょう。
今月はあたしのお気に入り『About Youth』よ。まあはっきり言って可愛い犬やら猫をみているのと気分は変わらないくらいキラキラした別世界に見えるんだけどね。やっと分かったかも。見てるだけでいいの。そういう気持ちになったの初めてだもんね。
高校生のお話なんだけど、そんなに青臭いわけでもないし、現代っぽいっていうのかしら、自然な雰囲気の中で「相手を思う気持ち」が育まれるのね。このドラマいいよ。
https://news.tv.rakuten.co.jp/2022/09/220911mama-aboutyouth.html 『About Youth』歐陽(オウヤン)ママの注目作品紹介
About Youth “默默的我,不默默的我們” × 「第一話 あの日?」
本作は冒頭に声のメモが読み上げられるの。これがまたいいのよね。まっすぐだからそのままこちらの耳に届いて、心のどこかに入ってくる感じがある。第一話の声のメモは葉広。もう一人の主人公、徐啓章にであった「あの日」のことが言及される。そういえばおなじみ『HIStory3』の「あの日」の中国語タイトルは“那(ㄋㄚˋ|nà)一(一|yī)天(ㄊㄧㄢ|tiān)”。このメモ書きの始まりは“那天”、“一”があるかないかの違いだけど、あるとやっぱり少し強調の意味があって、「あの一日、あの日に〇〇があった」のような語り口になるのね。
おなじみドラマの開始
“那天,是我人生最黑暗的一天,我沒考上爸媽期待的第一志願?”
(訳はドラマ本編をご覧ください)
さきにちょっと書いたけど“那天”は「あの日」。でその次の文が“是”と動詞で始まるので一文だとわかる。高校生の葉広が「人生」なんて言うと大げさに聞こえるかもしれないけど、まあ「あの日」は大変な一日だったのね。次の文、なぜあの日が「最悪だった」のかを説明すると言ってよいところ。動詞の“考(ㄎㄠˇ|kǎo)”は“考試(ㄕˋ|shì)”の省略として「試験」や動詞として使えば「試験を行う」、「検査する」という意味なんかがある。ただここの“考”は一文字なのではなくて“考上(ㄕㄤˋ|shàng)”で「試験に合格する」なので、そこに否定の“沒(ㄇㄟˊ| méi)”がついて「試験に合格しなかった」となる。否定の“沒”と“不(ㄅㄨˋ|bù)”の違いについてもどこかでまとめて話せるといいわね。「両親の期待していた第一志望に不合格」という意味ね。
我以為今晚我會是最難過的人,卻遇見一個比我更傷心的人。我想他比我更需要安慰吧。我沒想到的是,之後他開始默默改變了我的世界
(訳はドラマ本編をご覧ください)
後半のほうが長くて文法も見た目が複雑なんだけど実はそうでもないの。見た目が複雑なものは分解してみるといい。
とても素敵な葉広らしいやさしさにあふれた言葉だけど、容赦なく実務的にいくわよ。
“我(ㄨㄛˇ|wǒ)以(ㄧˇ|yǐ)為(ㄨㄟˊ|wéi)是(ㄕˋ|shì)A”
という形で「Aだと思っていた(が本当は/蓋をあけてみれば違った)と思い違いをしていた言い方。次の“卻(ㄑㄩㄝˋ|què)”は「~だけども/~だが/~のに」だから“卻”と、前の述べられた内容を否定でくっつける働きをする。「世界で一番つらいのは自分だと思っていたのに僕より傷ついた人に出会った。次のところが葉広っぽいところで「彼は私よりも慰めを必要としていると思った」、普通の語順だと「より慰めを必要としているのは彼だった」というとすっきりしてるかも。最後の一文、文字数がぜんぜん足らずに「思いもしなかった」というこの文の一番肝になる部分を泣く泣くカットしたの。「(このとき)彼はゆっくりと、私の人生を変えることになるとは思いもしなかった」なんだけどね。やっぱり日本語って長いな。
素敵なドラマがあるとただ嬉しい
見ていて「いいなあ」と思ったの。何がってよくわかんないんだけどね。目から入ってきてる映像が言語化される前の感覚なんだろうなと感じる次第よ。そういえば面白いミスがあった。「自動車」、「二輪車」、「三輪車」、中国語ではみんな一緒“車子”と書く。だって全部車輪がついてるものね。ドラマの中で出てきた“車子”を「車」と訳したあたし、あとからわかったのは車でなくてバイクだったという事実だったのです…。
執筆者情報
歐陽(オウヤン)ママ
早稲田大学大学院修了。論文のテーマは台湾の文化。
2012年から2013年にかけて台湾で生活、日本語の先生などしてふらふらする。
新宿二丁目では2021年10月15日に新しいお店「美麗島」をオープン!
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