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510478 (C)2025「1ST KISS」製作委員会 https://tv.rakuten.co.jp/content/510478/
2025年2月に公開されるや、松たか子と松村北斗が演じる夫婦の愛の形に感動の嵐が巻き起こり大ヒットした映画『ファーストキス 1ST KISS』。
結婚15年目のすれ違い夫婦が離婚を決意した矢先、夫・駈(松村北斗)が事故で命を落としてしまう。あまりにも突然の喪失に「時間が戻ればいいのに」と願う妻・カンナ(松たか子)は、彼と出会った15年前の夏にタイムリープする術を手に入れ、未来を変えようと尽力する。
タイムリープというファンタジックな設定を通して描かれるのは、後悔の念を埋める作業だ。奇跡的な時間の巻き戻しを与えられた妻は、夫の優しさや当たり前だった日常の価値にもう一度気づいていく。家族に甘えてしまうことや、わかっているつもりになっていることなんて誰にでもあるからこそ、観客は彼らの間に横たわる距離に自分自身の記憶や後悔を重ねてしまう。しかし妻の時間が戻っても、未来は思うように変えられない。過去の夫へのアプローチは、空回りばかり。その“もどかしさ”が物語全体に丁寧に織り込まれ、失敗を重ねながらも徐々に変わっていく2人の関係値にワクワクする。
2人が出会ったのは、29歳。29歳の夫は45歳になった妻と出会い、また妻に恋をする。2人が恋に落ちる運命はどんな状況でも変わらない。未来を変えられるかもしれない希望と、もしかしたら何も変わらないかもしれない不安の狭間で視聴者はもどかしさに苛まれるが、そのもどかしさの中に変わらない愛を見出し、勇気づけられるのだ。
(レンタル:440円〜、購入:2,200円〜)
402652 (C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会 https://tv.rakuten.co.jp/content/402652/
『ファーストキス 1ST KISS』が29歳で出会った夫婦の15年の物語ならば、『花束みたいな恋をした』では、学生というモラトリアムから社会人というリアルな世間の荒波にもまれる変化の大きな世代のカップルの物語を描いた。
大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は趣味も価値観も驚くほど一致し、運命のように恋に落ちていく。しかし社会に出て、それぞれのキャリアや生き方の違いが顕在化しはじめると、2人の間に少しずつ亀裂が入り始め、明確な裏切りや事件があるわけではないのに微細な変化が積み重なり、「もう前のようには戻れない」と感じるようになり、別れにつながっていく。
坂元裕二は、この“なんとなくのズレ”を描かせたら比類ない才能を持っている。多くの恋愛ドラマでは、浮気や喧嘩といった明確なトリガーによって別れが訪れることが多いが、『花束みたいな恋をした』では、サブカルカップルの男性が社会人になったら“パズドラしかやらない男”に変貌してしまう。『ファーストキス 1ST KISS』の夫婦も、いつの間にかお互いを気遣うことを忘れてしまうが、付き合いの長いカップルには身に覚えがある変化だからこそ、観客はそこに“リアルな別れ”を感じるのだろう。
また坂元作品で特に印象的なのが、別れた後もお互いを否定しない姿勢だ。愛し合っていたことに嘘はない。けれど一緒にはいられない。この複雑な感情のバランスが、“もどかしい純愛”の核心なのかもしれない。
(レンタル:440円〜)
100842 (C)2004「世界の中心で、愛をさけぶ」製作委員会 https://tv.rakuten.co.jp/content/100842/
片山恭一の原作を行定勲監督と伊藤ちひろとの共同脚本で臨んだ映画『世界の中心で、愛をさけぶ』。
白血病で命を落とす少女・アキ(長澤まさみ)と、それを見守る少年・朔太郎(森山未來)の恋が始まる瞬間のきらめきと、終わりに向かう儚さが同時に描かれている。好きという気持ちは確かにあるが、死が迫る中でその気持ちをどう表現していいのかわからない。言葉や行動がどれだけ無力かを痛感する場面が幾度となく訪れる。
坂元脚本では、恋愛が“今を生きること”と密接に結びついている。『世界の中心で、愛をさけぶ』では、時間を超えても癒えない痛みが大人になったサクに影を落とす。過去の喪失が、未来の行動を決定づけるという構造は、『ファーストキス 1ST KISS』の妻と通ずる。
この作品が多くの人に支持されたのは、単に感動的な作品だからではない。大切な人に「言えなかったこと」や「してあげられなかったこと」という後悔が、誰の記憶にもひとつはあるからなのではないだろうか。
(レンタル:330円〜、購入:2,200円〜)
恋愛映画において、ハッピーエンドは魅力的だ。しかし坂元裕二は、「完成された愛」よりも「未完成な関係性」に価値を見出す。それが“もどかしさ”の根源だ。
“もどかしさ”とは、ただのすれ違いではない。それは、真剣に向き合おうとしたからこそ生まれる葛藤であり後悔、そして純愛だ。届きそうで届かない、言えそうで言えない。でも、だからこそ本気だったと信じられるような愛の記憶。それは観終わった後に、誰かの顔をふと思い出させる。だからこそ坂元裕二の描く“もどかしい純愛”は、いつまでも心の片隅に残り続けるのかもしれない。
(文・坂本ゆかり)
https://news.tv.rakuten.co.jp/2024/03/k-kaibutsu.html 監督・是枝裕和と脚本家・坂元裕二がたくみな構成と映像、演出で見せる『怪物』
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