RECCOMENDイチオシ
SERVICE関連サービス
今回は、『このミステリーがすごい!』大賞受賞作ほか、小説が原作となっている邦画のなかからSFミステリーがテーマの3作をご紹介。科学的な空想世界が描かれるSF作品は、その世界の不思議さと謎の相乗効果でどんどん引き込まれていく。映像化ならではの表現も醍醐味だ。
96254 映画「リアル~完全なる首長竜の日~」【TBSオンデマンド】(C) 2013「リアル~完全なる首長竜の日~」製作委員会
2010年の第9回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞に輝いた、乾緑郎の「完全なる首長竜の日」は、佐藤健、綾瀬はるか主演で『リアル~完全なる首長竜の日~』として映画化。1年前の自殺未遂で昏睡状態に陥った漫画家の敦美(綾瀬)を目覚めさせるため、浩市(佐藤)はセンシングという最新医療で彼女の脳内へ入っていく。「なぜ自殺したのか」という問いに、「首長竜の絵を探してきてほしい」と頼む淳美。絵を探しながら彼女の脳内へ入って対話を続ける浩一だったが、やがて見覚えのない少年の幻覚を見るようになる。原作の姉と弟の物語から、主人公たちが幼なじみで恋人同士になっているほか、脚色が施されて、結末も異なる展開に。サスペンスやホラー映画を多く手がけ、鬼才とも称される黒沢清監督により、ゾクッ、ドキッとする場面も多々あり、不自然に思える表現もミステリアスさを高める。現実世界と淳美の意識下という仮想世界をさまよう浩市が迎える真相は驚きに満ちたものに。
322067 『パラレルワールド・ラブストーリー』(C)2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会 (C)東野圭吾/講談社
Kis-My-Ft2・玉森裕太が主演を務める『パラレルワールド・ラブストーリー』は、現代のミステリー、サスペンスの分野をけん引する小説家の一人、東野圭吾の同名小説が原作。物語の始まりは、主人公の崇史(玉森)が大学への通学で利用している電車。決まった曜日・時間に並走する電車にいる麻由子(吉岡里帆)のことが気になっており、学生生活最後の日に意を決してその車両に乗り込むが、その日彼女はなぜか自分がいつも乗っていた電車にいてすれ違ってしまった。その後、社会人となった崇史は、麻由子が親友・智彦(染谷将太)の恋人である世界と、自分の恋人である世界に迷い込むことになる。2つの世界の真実はどうなのか…。序盤、見る者も2つの世界に翻ろうされ、謎が深まっていく。冒頭の崇史のモノローグで語られた“記憶”が鍵となる。2度目の鑑賞をしたときの発見もまた面白い作品だ。
414524 『夏への扉―キミのいる未来へ―』(C)2021 映画「夏への扉」製作委員会
山﨑賢人主演で2021年に公開された『夏への扉-キミのいる未来へ-』は、1956年にアメリカで発表され、タイムトラベルものとして多くのハリウッド映画に影響を与えたともいわれるロバート・A・ハインラインの名作を全世界で初めて映画化。舞台を日本に移し、年代も変更して、冷凍睡眠など科学技術的には現実とは違ったパラレルワールド的ともいえる世界線で描かれる。科学者の宗一郎(山﨑)は、罠にはめられて冷凍睡眠させられ、30年後の2025年に目を覚ます。その間の出来事を知り、大切な人である養父の娘・璃子(清原果耶)を救うべく1995年へと時を超えることに。2025年の世界では、原作にはない、人間そっくりのロボット=ヒューマノイドロボットが登場し、宗一郎と行動を共にするヒューマノイドロボットを演じる藤木直人がとてもいい存在感。古典的でありつつ、こんな世界が実現していたら楽しいなというSFのワクワクとミステリーのドキドキ、そしてハートフルな展開も魅力となっている。
(文・神野栄子)
96254,322067,414524