裏社会の罪深き男たちや警察官がメインで登場し、ハードな世界にある裏切りのドキドキや熱い絆に思わず感動するなどドラマチックな展開が繰り広げられ、一定の支持を得ている。
香港ノワールの名手といわれるのがジョニー・トー監督。一般的に見れば暗黒な世界にいて避けたくなる男たちなのに、その間に通い合う絆とスタイリッシュなガンアクション、そして見事なカメラワークが重なり合って魅力を放つ。監督50作品目となる『ドラッグ・ウォー 毒戦』は、中国・津海を舞台にしつつ“香港ノワール”の雰囲気たっぷりに描き出す。コカイン製造工場を手がけていた香港出身の男・テンミン(ルイス・クー)に、中国公安警察の麻薬捜査官・ジャン警部(スン・ホンレイ)が減刑と引き換えに捜査協力を要請することから始まる物語。巨大麻薬組織という闇に潜入捜査という形で切り込む。香港ノワールの銃撃戦といえば、ジョン・ウー監督作品で有名になった二丁拳銃のシーンがあるが、本作でもチラリと登場。メインの2人ではない人物が操っていたりするのだが、香港ノワールファンの心をくすぐるシーンだ。また、テンミンとジャン警部の関係柄で信頼が生まれるのか、裏切るのではないかというハラハラ感が包み込む。本作を韓国でリメイクした『毒戦 BELIEVER』と見比べるのも面白い。
361875 『追龍』(C)2017 Mega-Vision Project Workshop Limited.All Rights Reserved. https://tv.rakuten.co.jp/content/361875/
ドニー・イェン、アンディ・ラウが共演した『追龍』は、香港ノワールではよく見られるマフィアと汚職警官のつながりが描かれる。警察と黒社会が結託して汚職が横行していた時代である1960年。中国本土から香港に不法移民として渡ってきたサイホウ(ドニー)は、ある出来事から香港警察のロック(アンディ)に助けられる。友情と信頼が生まれた2人は、手を組み、サイホウは麻薬王に、ロックは警察上層部へと出世し、闇の世界でのし上がっていく。トップスターの共演による男たちの世界にどっぷりと浸ることができる。ちなみに、エンドロールまでお見逃しなく。
韓国ノワールからは、まず『犯罪都市』をご紹介。大ヒットゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』で脇キャラながらかっこいいと注目されたマ・ドンソクの主演で、実在の事件を基に、韓国警察、中国の新興勢力、韓国ヤクザの激突が描かれる。ドンソクは韓国警察の強力班に属する刑事に扮(ふん)し、武器を手にしたヤクザを張り手で気絶させてしまう強さで、のっけから痺れる。警察も取り調べのときに監視カメラを巧みに隠して少々暴力的に対応するなど、悪には悪を的な展開もノワール作品らしい。
273441 『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』(C)2017 CJ E&M CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED https://tv.rakuten.co.jp/content/273441/
『名もなき野良犬の輪舞』は、裏社会のトップを目指すジェホ(ソル・ギョング)が、服役中の刑務所で出会った野心あふれる青年ヒョンス(イム・シワン)と犯罪組織を乗っ取ろうと企む物語。ところが、2人の信頼の裏には、ある真実が潜んでいて、さらに隠された秘密があって…と予測不能な展開に引き付けられる巧みな構成だ。ブロマンス的要素がありつつも、クライマックスに向けて非情な世界であることがガツンと突き付けられる。カメレオン俳優といわれるソル・ギョングと、ボーイ・バンドZE:Aのメンバーとしてデビューし俳優としても活躍を広げているイム・シワンの演技の響き合いが見応えある。
(文・神野栄子)
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