韓国でBLドラマが制作されはじめた当初は、やはりまだメインストリームとはいえないジャンルだけに、大手事務所のトップアイドルが出演するというより、メンバーの入隊で活動休止中のグループメンバーや、グループを脱退したメンバーたちの知名度アップや俳優への足掛かりというポジションだった。
そんな状況下、韓国BLというジャンルを一気にメジャーに押し上げたのが、ドラマ『セマンティックエラー』(2022年)だ。韓国を代表する映画雑誌「CINE21」の表紙を飾るなど異例の大ヒットを記録し、出演していた元KNKのパク・ソハムとDONGKIZのジェチャンが俳優として大ブレイクし、流れが変わった。
このヒットを受け、2023年についにトップK-POPアイドルグループB1A4の末っ子メンバー、ゴンチャンがBLドラマ『俺は恋愛なんか求めてない!』に出演。大きなニュースとなった。B1A4といえば2011年4月のデビュー以降、数々の音楽番組で1位を獲得してきたK-POPのトップアイドルグループ。日本での初単独ライブが横浜アリーナということからも、その人気が推し測られる。
B1A4は、メンバー各人が俳優としても活躍している。元メンバーのジニョンは、現在は俳優業をメインに活動し、ドラマ『警察授業』で主演を務めるほどの実力派に成長。元メンバーのバロもドラマ『応答せよ1994』でブレイク。現メンバーのシヌゥとサンドゥルは、ミュージカルなど舞台で活躍している。メンバーの入隊に伴い、2019年以降は俳優業が増えてきたゴンチャンにとっても、本作は挑戦作。原作のウェブトゥーンを読んでその魅力にハマって出演を決めたという。
ゴンチャンの相手役のチャ・ソウォンは、ドロドロの復讐ドラマ『二番目の夫』で「2021 MBC演技大賞」毎日ドラマ部門最優秀演技賞を受賞し大ブレイク。人気バラエティ『私は1人で暮らす~シングルのハッピーライフ~』で“ナント”(ロマンチックな狂人)というニックネームで人気を得たが、現在は入隊中。この『俺は恋愛なんか求めてない!』が、入隊前最後の作品となった。アイドル同様、経験の少ない若手俳優にとっての主演、準主演の登竜門的ポジションだったBLドラマに、最旬の俳優が登場したのにも驚かされた。
『俺は恋愛なんか求めてない!』でゴンチャンが演じるのは、一流企業総務課入社2年目のチ・ウォニョン。上司の不正の巻きぞえで停職処分を受け旅に出た先で、会社の会長の大のお気に入りで、突如世の中から消えた天才陶芸家ユン・テジュン(チャ・ソウォン)を見つける。ウォニョンは復職のためにテジュンに近付くことに――。
ゴンチャン演じるウォニョンは、明るくピュアな好青年。切れ長二重が印象的な爽やかイケメンのゴンチャンにぴったりの人物だ。チャ・ソウォン演じるテジュンは、クールに振る舞うが心は温かいツンデレのお手本のような人物。2人の関係はどう発展するのか、そしてテジュンが失踪した原因は? とにかくこの美しい2人のなかなか進展しない関係にヤキモキしながらキュンキュンする作品となっている。
人気Web漫画原作。ドラマを支えるスタッフも、韓国初のBLドラマとして高く評価されている『君の視線が止まる先に』の脚本家シン・ジアン(シン・ユ)と、『Peach of Time/ピーチ・オブ・タイム』『トゥモロー・ボーイ~恋の始まりはすれ違いから~』のチャン・ウィスン監督と強力な布陣となっている。
ゴンチャンとチャ・ソウォン。ここまでのスターキャストがそろったBLドラマに、韓国では「レジェンド級の韓国BLドラマ」という称号も。これを機に、今後は一線級のアイドルや俳優たちがBLドラマに出演するかもしれない。日本でも、『おっさんずラブ』の田中圭、林遣都、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』の赤楚衛二、町田啓太、『美しい彼』の萩原利久と八木勇征(FANTASTICS from EXILE TRIBE)など評価の高いBLドラマに注目の俳優陣が出演し、アジアでの人気を高めている。今後は韓国でも『俺は恋愛なんか求めてない!』のように、どんどん人気アイドルや俳優が進出してくるかもしれない。これは、期待せずにはいられない!
(文・坂本ゆかり)
https://news.tv.rakuten.co.jp/2024/04/bl-list.html BL関連記事一覧
Rakuten TVで視聴する
447612