心の奥にくすぶっていた初恋との運命の再会。大人になった2人の関係値はどのように変わるのか？

「花様年華」とは、人生の中で最も美しく輝く時を意味する言葉。大学時代には信念を持って学生運動を率いていたハン･ジェヒョン（ユ・ジテ）だが、現在は財閥の娘婿となり、富と名誉のために働く冷徹な事業家になってしまった。一方、ジェヒョンに猛アタックして恋人になったピアノ専攻の女子学生ユン･ジス（イ･ボヨン）は、学生時代の裕福さから一転し、アルバイトをしながら息子を養うシングルマザーに。かつての恋人たちたちは20数年後、いじめの加害者と被害者の親として再会する。

彼らが初恋のまま別れてしまった理由を含め、過去と現在が上手く交錯しながら物語が進む。特に話題になったのが、彼らの美しい青春時代。ジェヒョンの過去を演じたジニョン（GOT7）とユン･ジスの過去を演じたチョン・ソニの初恋は、まさに「花様年華」という言葉がぴったりで、ジニョンの爽やかさは、「あ～昔、この人のことが好きだったわ」とすべての女性に思わせてしまうくらいの好青年という意味で「初恋記憶操作男」という言葉まで生んだ。初恋時代とは境遇が逆転した2人の運命の再会。想いが手繰り寄せられていき、恋心が再燃。普通に考えれば不倫ドラマなのだが、初恋パートの瑞々しさ故に、単なる不倫ドラマを超えた大人の恋愛ドラマとして支持された。

大ブーム中の韓国BLドラマでおススメしたい新作が、初恋の人との運命の再会を描いた『僕らの恋愛シミュレーション』だ。

高校の卒業式の日、親友のシン・ギテ（イ・スンギュ）に意を決して告白をしたまま彼の前から姿を消したイ・ワン（イ・ジョンヒョク）。Webにマンガを発表していたイ・ワンは、7年後にゲーム会社のキャラクターデザインの仕事にスカウトされ、その面接で初恋の人、シン・ギテと再会した。告白されたまま消えてしまったイ・ワンに、7年間モヤモヤした気持ちを抱えていたシン・ギテ。この再会は、どうやらシン・ギテが仕組んだもののよう。7年間昇華できなかった2人の気持ちが、再び動き出す――。

7年間もお互いを想い続けてきた2人だけに、想いが通じ合った後のカップルぶりが可愛い。自己肯定感の低いイ・ワンは、自分の才能を見出してくれたシン・ギテのおかげでどんどん輝きを増していく。ずっとイ・ワンのことを想い続けてきたシン・ギテは、会社ではツンケンした厳しい態度でイ・ワンに接するが、告白されてからずっと自分の前から消えてしまったイ・ワンのことを探し続け、彼を陰から応援してきた。シン・ギテのツンデレな甘やかしぶりは、見ている方が幸せな気分になってニヤニヤしてしまうほど。幸せダダ漏れながら、みんなにバレたくない秘密のオフィスラブというのも可愛いが加速する要素になっている。ハラハラする事件が起こるわけではないが、なんともほっこりとした気分になれる作品だ。ゲーム会社を舞台にしているだけに、話の最後に2人の高校時代のエピソードが恋愛シュミレーションゲームのように見られる構成もおもしろい。

人の心に大切な思い出としていつまでも残っている初恋。甘酸っぱい初恋は、果たして大人になってどのような関係値に変わるのか――、これらの作品でそれぞれの初恋の行方を確かめてみてほしい。

（文・坂本ゆかり)