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悪魔か?英雄か? 巨匠リドリー・スコット監督があばく“ナポレオン”の知られざる一面

悪魔か?英雄か? 巨匠リドリー・スコット監督があばく“ナポレオン”の知られざる一面
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「エイリアン」シリーズなどを手がけた巨匠リドリー・スコット監督とアカデミー賞俳優ホアキン・フェニックスがタッグを組んで製作された映画『ナポレオン』。

ナポレオンは、革命の混乱に揺れる18世紀末のフランスで目覚ましい活躍を見せて総司令官に任命。“英雄”として快進撃を続けて、第一統領、皇帝へと登りつめていった。その名は後世にも轟き、日本においても多くの人が知る歴史的人物。「1日に3時間しか睡眠をとらなかった」とか「余の辞書に不可能という文字はない」とか、そうした逸話も多く残されている。

映画『ナポレオン』では、ナポレオン・ボナパルトの活躍を描きつつ、リドリー・スコット監督の独自の視点と解釈で、その人物像に迫る内容になっていて、世界史の教科書に載っているようなパブリックイメージとは違う一面も見えてくる。そもそも、“ナポレオン”ほどの知名度のある人物が、真正面から取り上げられた映画自体がそれほど多くないので、“知らなかった一面”だけでなく、“知ってるつもりで知らなかった一面”も分かる作品にもなっている。

フランス革命で、王妃マリー・アントワネットがギロチンで斬首されるのを、まだ若き軍人だったナポレオンが傍観しているシーンから始まる。痛々しく残酷に感じられるそのシーンから、当時のフランスの情勢がうかがえる。

映像を通してそういうリアリティーのある場面を見せるのもリドリー・スコット監督の得意とすること。この作品において多く描かれている“戦い”のシーンは大きな見どころだと言える。1793年、港町トゥーロンを舞台にした「トゥーロンの戦い」で、王党派を支援するイギリスやスペインなどの軍隊に占領されていた港の砦を、深夜に奇襲を仕掛けて取り戻した。その功績によって、24歳だった砲兵将校ナポレオンがその名を轟かせることとなった。少しビビり気味な表情も見せていたが、最後には自信に満ちた表情も見せ、この戦いがナポレオンにとって大きなものだということが感じられた。

1798年の「エジプト遠征」では、29歳の少将ナポレオンが4万の兵を率いてエジプトのアレクサンドラに上陸。マムルーク軍に勝つものの、イギリスとオーストリアがフランスを攻撃しようとしていて、しかも妻ジョゼフィーヌが浮気していることを側近から知らされたこともあって慌ててフランスに帰国。“敵前逃亡”という不名誉な形になってしまった。

1805年、戴冠式の1年後に起こった「アウステルリッツの戦い」では地の利を生かして、敵を雪原におびき寄せる。実はその雪原は氷の張った湖に雪が覆い被さったもので、そこに大砲を撃ち込み、湖に引きずりこむという作戦を成功させる。この自然の厳しさと戦いの激しさを表現した映像が素晴らしく、「第96回アカデミー賞」では視覚効果賞にノミネートされた。

ほかにも、1812年のロシアでの「ボロジノの戦い」では、60万人もの兵を率いて進軍するものの、両軍ともに大きな被害を出し、ロシアの厳しい寒さによって飢えや病も蔓延。フランスに帰還できたのはわずかに4万人で、「“冬将軍”に負けた」とも言われた。ナポレオン最後の戦いとなった1815年の「ワーテルローの戦い」まで、戦いのシーンはどれもダイナミックでリアルに描かれている。

戦略家で、多くの戦いで兵を率いた司令官の姿が描かれているが、この映画ではそんな軍人としてのナポレオンとは対照的な人格も多く描かれている。そちらの物語の軸となるのが妻ジョゼフィーヌ。ナポレオンより6歳年上で離婚歴があり、2人の連れ子もいる。そんなジョゼフィーヌにナポレオンは魅せられて結婚する。戦いで遠征している時もジョゼフィーヌのことを考え、まめに手紙を書き、何をしているのか心配でヤキモキしてしまう。「エジプト遠征」がいい例で、手紙を書いても返事が来なくて、側近から浮気していることを知らされ、戦の途中で帰国してしまう。しかも、手紙がなぜか流出してしまっていて、寝取られ将軍と新聞に風刺画が載ってしまったりも。自分のことが世界で一番大切な人だと言えと強要したと思えば、ジョゼフィーヌに「君なしでは生きていけない。君なしでは私はただのケダモノ」と言わされたりする情けない部分もしっかりと描かれている。2人の間に子供がなかなかできず、好きだけど“世継ぎ”問題のために泣く泣く離婚するなど、ある意味“普通の人間”としてのナポレオンの姿が発見できる。“英雄”からは程遠い姿が描かれたことで、ナポレオンのイメージが変わるのではないだろうか。発見の多いこの作品をぜひ観て楽しんでもらいたい。

(文=田中隆信)

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