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香港電影金像獎10部門ノミネートした映画『毒舌弁護人~正義への戦い~』の主人公が追い込まれる“悪の沼”とは?

香港電影金像獎10部門ノミネートした映画『毒舌弁護人~正義への戦い~』の主人公が追い込まれる“悪の沼”とは?
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元治安判事の弁護士が根深い社会問題に切り込んでいく映画『毒舌弁護人~正義への戦い~』。2023年の旧正月に公開された本作は多くの人々の心をつかみ、瞬く間に香港映画史上初の1億香港ドル=約17億円を突破し、最終的には22億円を記録。4月14日に最優秀賞が発表される香港のアカデミー賞「香港電影金像獎」の作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞など、計10部門にノミネートされた。人々を魅了したのは、複雑には見えない児童虐待事件をきっかけに悪の沼に飲まれていく主人公の生きざま。ここでは彼がたどる道を解説しよう。

『毒舌弁護人~正義への戦い~』を観る

物語の主人公は、50代の治安検事のラム・リョンソイ(ダヨ・ウォン)。彼は組織になじまぬ食えない男だが、確固たる正義感を持ち、一つ一つの事案に向き合っていた。しかし、ソリの合わない同僚が昇進して上司になったことで、わいせつ物審査所への降格を命じられる。つまり飛ばされたのだ。腹を立てたラムは、判事席の内壁に「天に眼なし」と皮肉を彫り、弁護士へと転身。リタイア前に法律事務所でひと稼ぎしようとしていた。その最初の裁判が「児童虐待事件」だった。元トップモデルで未婚の母であるツァン・キッイ(ルイーズ・ウォン)が、耳の不自由な娘を虐待した疑いで逮捕された。娘は後頭部をテーブルの角にぶつけて意識を失い、集中治療室で眠っていた。

当初は万が一、有罪になったとしても短い刑期で済むはずだと見ていたが、証言台に立った管理人が突如、被告に不利な証言をしたことで事態が一転。そんな中、意識を取り戻した娘が「ママにぶたれたことはない」と手話で証言したことで、ラムらは勝利を確信するが、その直後、娘が死亡。容疑が虐待から過失致死に移行し、一夜にして、無実の女性が殺人罪を着せられる事態に陥ってしまったのだ。

観念したツァンは、実は自分以外に恋人で医師のチュン・キンイも現場にいたことを弁護士たちに告白する。だが、このキンイが香港の名門で経済界を牛耳っているチュン家の娘婿だったことから、ラムらは窮地に立たされることになる。当初、キンイはツァンの家の玄関は施錠されていなかったとラムに話していた。それが事実ならツァン以外の人間が危害を加えた可能性が高く、娘の証言も加えて、ツァンの無実を立証できる。しかし、キンイが突如、施錠されていたと証言を変えたことで、状況は振り出しに戻ってしまった。

通常、証言者は証言内容を書面化するが、キンイは特権階級だったことから慣例に従ってラムが省いていたため、弁護側はなす術なし。ラムは簡単な裁判だと高をくくっていたが、彼の怠慢がアダとなり、ツァンは有罪に。被害者である娘自ら否定したにも関わらず、無実の女性に禁錮17年もの重罪を着せることになってしまった。

この失態を受けて、ラムは入ったばかりの弁護士事務所を辞め、個人事務所で1からやり直していた。まるで自らの罪を罰するかのように。そして、それから2年過ぎたある日、偽証した管理人が遺言書で自らの罪を告白したことが明らかになる。それを知ったラムらはもう一度、控訴するが、警察は再捜査してくれない。そのため、自分たちで真犯人を突き止めるべく、保存してあるツァン家の現場検証を行うことにする。すると、驚くべきことが明らかになる。

どうやら、この事件にはチュン家が大きく関わっているらしいのだ。香港の経済界に鎮座するチュン家には法的アドバイザーとして裁判所にも顔の利く弁護士がおり、警察上層部を動かし、マスコミをコントロールする力もある。権力者が、不都合な存在を“法的”に排除しようとしてくるため、法律家であるラムでも対抗するのは容易ではない。まるで底なし沼のように、進めば進むほど、ラムを飲み込んでいくのだ。

しかし、ラムは諦めずに戦いを挑んでいく。知恵を絞り、裁判所や警察署のなかでわずかな味方を増やして、無罪の獲得と、本当の被疑者に光が当たる道を編み出していくのだ。権力に怯まずに何度でも突き進むラムの姿は、2020年前後より激動の時代を生き抜いてきた香港の人々の心に強く響いたはずだ。だからこそ、ヒットへとつながったのだろう。しかし、我が物顔の特権階級は世界中に存在している。つまり、ラムの毒舌はどの国の人の心にも響くことだろう。

(文・及川静)

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