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監督・是枝裕和と脚本家・坂元裕二がたくみな構成と映像、演出で見せる『怪物』

監督・是枝裕和と脚本家・坂元裕二がたくみな構成と映像、演出で見せる『怪物』
(C)2023「怪物」製作委員会
日本映画界をけん引する監督・是枝裕和。そして、テレビドラマを中心にオリジナル作品を多く手掛けてその手腕を発揮する脚本家・坂元裕二。2人が初タッグを組んだ映画『怪物』がRakuten TVにて配信スタートした。劇場公開時に傑作と評判を呼んだ本作を、監督&脚本家の魅力から迫る。

番組制作会社でドキュメンタリーディレクターとしての活躍を経て、映画監督へと進んだ是枝裕和。映画『誰も知らない』(2004年)、『そして父になる』(2013年)、『万引き家族』(2018年)、『ベイビー・ブローカー』(2022年)など、多くの作品で社会を捉えている。

一方、坂元裕二はテレビドラマでは『東京ラブストーリー』(1991年、フジテレビ系)をはじめとする、いわゆるトレンディードラマと言われるものから硬派な作品まで手掛け、映画では『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年※伊藤ちひろ行定勲監督との共同脚本)、『花束みたいな恋をした』(2021年)をヒットに導いている。

そんな2人が描き方は違っていても思いを同じにしていることとでもいうのか、“子ども”を巡り、家族やその周囲の人々の物語を描いているという点がある。是枝監督では先に挙げた作品などがそうで、坂元作品では、例えば女性のための物語とされたドラマ『Mother』(2010年)は、主人公の女性が親から虐待されていた女の子を救うために逃避行し、『Woman』(2013年、共に日本テレビ系)はシングルマザーの主人公が貧しいながら愛する子どものために懸命に生きる姿を描いた。

今回の『怪物』も子どもがポイントになる。舞台は、大きな湖のある郊外の町。ある日、シングルマザーである麦野早織(安藤サクラ)の一人息子・湊(黒川想矢)が通う小学校でけんかが起きる。彼らの食い違う主張は次第に周囲を巻き込む騒動に。そしてある嵐の朝、子どもたちが姿を消す――という展開を見せる。

是枝監督はほとんどの作品で自ら脚本も担当してきたが、本作では信頼を寄せる坂元がつむぐ物語の映像化に集中した。物語は、3つの視点で構成される。早織、湊の担任である保利道敏(永山瑛太)、そして湊とその友だちの星川依里(柊木陽太)だ。

町で起きる火事に始まり、嵐の日までが繰り返されるのだが、初めにこうだと思った出来事が覆され、そこに秘められていたことが浮かび上がっていく。モンスターペアレントと呼ばれてしまう早織、誤植を見つけては出版社に手紙を送ることが趣味の保利、また、小学校校長の伏見(田中裕子)や教頭の正田(角田晃広)、依里の父・清高(中村獅童)、そして、湊と依里の葛藤と“怪物”と名付けるしかなかった思いも。あそこで見た風景が、聞こえた言葉や音が、違う印象を持ち始めるのだ。

いじめや学校という枠組み、親子関係など、現代が抱えるいくつもの問題がある中で、視点を変えて掘り下げていくうまさ。あのときのセリフが大きな意味を持っていたのだとふと気づくとき、心がざわつく。固定観念であり、価値観が生む恐ろしさ、自分の中に潜む加害性を突かれるようでもある。

連続ドラマのようにぐんぐんとクライマックスに向けて引き付けられる構成力とセリフでつづるたくみさに是枝流の表現力が重なり合う。登場人物の心情を映像としてどう見せていくか。3つの構成の空気感をどうつなげていくのか。特に子どもたちのパートとラストは是枝流演出が生きているし、新しさもある。

これまで是枝監督は子役には現場でセリフを口伝えしていたというのは知られているが、今回は坂元脚本であることなどからその手法はとっていないとインタビューで答えている。とはいえ、湊と依里役の黒川と柊木の演技力もすばらしいが、輝きや楽しさ、その一方で悲しみを引き出し、自然に捉えているのがやはり見事だ。

第76回カンヌ国際映画祭では脚本賞と、独立部門のクィア・パルム賞を受賞する栄誉を手にした。

ラストをどう捉えるかは劇場公開時にさまざまな意見が寄せられていた。その実、そこで見た“世界”を素直に受け取るのがいいようにも思う。湊と依里のこの先を思って。

(文・神野栄子)

Rakuten TVで視聴する

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