1981・1982年に週刊少年チャンピオン(秋田書店)に連載された作品で、代役専門の天才役者にして泥棒の顔をもつ「七色いんこ」を描く犯罪活劇。七海ひろきが、七色いんこを演じる。また、格闘術と射撃術に秀でた警視庁の刑事で、いんこを追うヒロイン・千里万里子を、有沙 瞳が演じる。
同じ宝塚歌劇団星組出身の七海と有沙だが、共演は5年ぶり。宝塚時代に、ショー作品などで組むことはあったが、深く芝居をするのは初めてだという。作品や、久しぶりの共演への想いなどを聞いた。また、印象に残っている、お互いの宝塚時代の作品についても語ってもらった。
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――ミュージカル「七色いんこ」にご出演が決まった想いをお聞かせください。
七海:私は手塚治虫先生の作品がすごく好きでしたので、手塚先生が手がけた原作の作品に出演できるのが、とても嬉しいと思いました。『七色いんこ』という作品は元々読んでいて、出演が決まって改めて読み直しました。子供の頃に読んだ時はあまりわかっていなかったことが、読み返すとわかってくることもあり、読む手が止まらず……。こんなに魅力的なキャラクターを演じられることが、さらに嬉しいなと思いました。
有沙:私はこの作品のことはあまり知りませんでしたが、宝塚に在団していた時に、手塚治虫記念館が近くにあって、いつか手塚先生の作品もと思っておりました。宝塚でも、『ブラック・ジャック』など上演された作品はあるのですが、なかなかご縁がなく、いつか何かご縁があればいいなぁと思っていたので、今回出演させていただけて嬉しいです。
実は、あまり本を読むのは得意じゃなくて(苦笑)なかなか読み進めないタイプだったのですが、拝見したら終わりまで全部見たくなって、一気に見ることができました。個性的なキャラクターやお話の展開が面白く、内容もわかりやすいのでスッと入ってきやすい作品でした。そして、私が演じさせていただく千里万里子ちゃんが、とても可愛くて面白い(笑)。
七海:可愛いよねぇ。一生懸命でね。
有沙:そう! まっすぐで。だから本当に嬉しいなと思います。
――原作や舞台の脚本をご覧になった印象を伺えますか?
七海:原作は、読めば読むほどキャラクターの素敵なところやストーリーが、より深掘りできる作品だなと思いました。最後の3話ぐらいを読んで、七色いんこがなぜ、この格好をして、こういう生き方をしているのかがわかり感嘆しました。漫画やアニメという、今の日本の文化があるのは、手塚先生のおかげだなと、改めて思いました。
有沙:かっこいい~。名言が出ましたね!
七海:また、舞台の脚本を読んだときは、ここまで深い作品を、集約できる脚本力が素晴らしいなと思いました。原作にあるエピソードのなかで、ここはぜひ描いてほしいというところがしっかり描かれ、印象的な台詞は残されている。このミュージカルは、脚本の畑 雅文さんをはじめ、演出の三浦 香さん、音楽の浅井さやかさん、沢山の人の想いが凝縮されて出来上がっていくんだなと思いました。
有沙:本当にミステリアスというか。いんこの場面から始まり、面白いコミカルな可愛らしいところもあり、最後はアッ!と心に残るというか。ときめく部分もちゃんと凝縮して、大切なところが本当に詰まったミュージカルになっているんだなとすごく思いました。原作はどのカットを見ても魅力的で面白いと思ったのですが、漫画とはまた違うというか濃く、観やすくした部分が、脚本に描かれていて、素晴らしいなと思いました。
七海:わかる。原作を人間が演じるとなると、こういう風に作っていくんだみたいなのを、脚本を読むと感じるよね。
有沙:はい。
――手塚治虫さんのキャラクターの絵の印象が強いと思うのですが、それを人間に落とし込む作業が、何か要るのかなと想像します。これまでも原作がある舞台作品にご出演されていますが、この手塚治虫作品のキャラクターを演じるというのはいかがですか?
七海:手塚先生の絵は、キャラクターの気持ちが表情に現れていてすごくわかりやすいんです。さらに漫画だと、コマの形や後ろに入っている効果線などでも気持ちが表現されていたりするので、原作のそういう細かい部分を脚本の台詞や場面に当てはめて作っていけたらなと思っています。
声優のお仕事をしていて、アニメのアフレコをする時に、まだ線画だけのこともあるので、キャラクターの表情がわからなかったりするときがあるんです。どういう表情なんだろうと原作がある場合は原作漫画を見て確認したりしています。舞台でも原作の漫画があると、そういった細かい部分まで考えていけるので、すごくありがたいなと感じています。
――有沙さんも、宝塚で漫画原作の舞台にご出演されていますよね。『伯爵令嬢』のアンナが印象に残っています。
有沙:やりましたねえ!
七海:懐かしいね。とても面白かった!
有沙:研3(研究科3年生)くらい……?
――最初の大きいお役とかじゃないですか?
有沙:そうです。オーディションというか、私はちゃんとした宝塚の娘役みたいになりたかったのですが、押しが強かったのか、生田(大和)先生に「お前はこれや!」みたいな(笑)。すごく抵抗はあって、なかなか自分との葛藤でした。どちらかというとちょっとオーバーというか、わかりやすく、本当に幼い子から年配の方まで観てわかりやすくというのが結構印象的かなと思うのですが、あの時もそれがすごく思い出ですね。
――今回はどういう風に取り組んでいかれますか?
有沙:雪組に在籍していた時の『るろうに剣心』、星組では『Thunderbolt Fantasy東離劍遊紀』など、キャラクター物を舞台でするということで、はっきり、わかりやすく表情をコロコロ変える印象が結構ありました。最近は心を素直に、美しくじゃないですが、丁寧に演じていたところがあったので、久しぶりの感覚です。わんぱくに……(笑)。
七海:そうだよね。すごく楽しみ。
有沙:いんこは、それを、スッと見ていらっしゃる。いんことひろきさんは、本当にぴったりですよ。
――ビジュアル撮影の時の印象や、どんなことに注意して撮影したかなどお聞かせいただけますか?
七海:素敵な衣裳だったり、照明や小道具など、撮影現場にはすでに『七色いんこ』の世界観が広がっていたので、割とすんなり気持ちが入って撮影できました。全てにこだわりがあって、例えばこの鬘は、被る位置によって全然印象が変わってくるので、被り方を話し合いながら細かく調整しました。あと5ミリ上にあげようみたいな……。
有沙:ええ~!?
七海:特に前髪の感じとかに数ミリのこだわりがあります。サイドや後ろの見え方もかなり話し合って。実は撮影後にもう一度フィッティングを行ったりしました。その時は2パターンの形を用意していただいて、どっちがより雰囲気に合うかなどを話し合いました。
有沙:へえ~~!
七海:みなさんがすごく細かく考えてくださり、とてもありがたかったですし、気合も入りました。
――この鬘が一番印象に残りますよね。
七海:いんこがこのビジュアルになっていること=普段この格好でいることに意味があるんですよね。ですので、妥協せず納得するビジュアルを目指そうとこだわりました。
有沙:私はパンツスタイルでいることがなかなかなくて、宝塚の時も少なく、新しいですね。でも、ロングブーツは在団中でもショーなどで履くことが結構多かったんです。『Thunderbolt Fantasy東離劍遊紀』で演じた獵魅(リョウミ)ちゃんの時にもロングブーツを履いていて、だから、来たー!と思って(笑)。
七海:そうだったね!
有沙:ロングブーツを履く時は、結構大人で、ガツガツ動き回る活発さのある役が多かったので、来たよー!?動くよー!と思って(笑)。銃を持って撮影させていただいたり。ちょっと可愛く、でもかっこよく、ナチュラルなところもあったり、いろんな部分を見せられるように加減を意識したので、ビジュアル的にも見えたらいいなと思っています。でも、ひろきさんの、青い鬘が似合う方って、いらっしゃるんだ!と思って(笑)。
七海:嬉しいなあ(照)。
――お役についてですが、原作と脚本で印象に残っていることや、大切に演じたいと思っていることはありますか?
七海:この作品は「芝居」というものがひとつのテーマになっています。いんこは代役専門の役者なので、いんこが舞台に立つという場面、いわゆる劇中劇があったりします。とにかく「芝居」について考える時間が多く、『どうして芝居をするのか』『どういう芝居が良いのか』など、こんなにも芝居について考えることのできる作品にかかわることができて役者冥利に尽きるなと思っています。
でも、芝居って正解がないから、考えても答えは出ないし、いつまでも「できた!」と思う日は来ないと思います。だからこそ、千穐楽までの1回1回の公演を全力で行い、芝居が好きという、いんこと同じ気持ちになって進んでいくことを大事にしたいなと思っています。
有沙:かっこいい……。全部名言ですね。
七海:そんなことはないよ(苦笑)。
――きっと役者の皆様に共通する想いなのかなと思いました。
有沙:本当ですね。過去にもちゃんと理由があって、そして今生きている理由もあって、おひとりずつの物語が、人生がちゃんとあって、そこに相手が絡んで生まれるものがギュッと詰まっている作品だなと思います。本当に繊細に、心を大切に想いたい部分と、原作のイメージもきっとあると思うんですよね。そこもうまくミックスしながら、ひろきさんが仰っていたように、決めすぎないで、毎回毎回、ご一緒する人と心を通わせて、1回ずつを生きていきたいなと感じます。
万里子ちゃん自身、本当にいろんな要素があるので、もちろんバランスも大事かもしれないのですが、1回1回を楽しんでやりたいです。ひろきさんとも、ほぼ初めてぐらいでお芝居をさせていただくので……。
――宝塚で共演はしていても、お芝居のなかで関わりがそんなになかったんですね。
七海:そうなんですよ。あんまり台詞を掛け合った記憶がないもんね。
有沙:全然ない……。だから、絶対緊張しちゃうから。
七海:アハハハハ!
有沙:千里万里子として、体当たりしていく! 有沙 瞳だったら、コロッとなっちゃうから!
――撮影でも、七海さんにぽーっとしたり、キャッとなっていましたよね(笑)。
有沙:はい(笑)。
七海:なんか意外だなと思って。
有沙:なんでですか~!
――ぽーっとなってしまううのがですか?
七海:そう! そんなイメージじゃありませんでしたから(笑)。
――どんなイメージだったんですか?
七海:割と大人っぽいカッコいい場面を見ていたので、本人がここまでヒャ~!みたいな感じのキャラクターだとはあまり知りませんでした。
――私も、以前、初めて取材をさせていただいたときに、明るい方なんだと思ってちょっと驚きました。
七海:そうですよね。この作品で一緒になって、黒点のない太陽みたいな人だなって(笑)。私とかなり真逆のタイプです。
――なるほど、太陽と月のようですね。
七海:そんな私たちなので、いんこと千里万里子の役柄的にもぴったりと思って。そうそう。この間の製作発表記者会見の時も、緊張とかするのかな?と思ったら「全然緊張してないですー!」みたいな!
(現場全員笑)
七海:そういうところに憧れています。
有沙:優しい~!
七海:すごく素敵だと思います。その魅力を思う存分舞台上で発揮してもらいたいです。
有沙:いつも包んでくださるから。本当に宝塚の時は、大人っぽくてしっかり芯がある役ばかりだったので、卒業して初めてのミュージカル(『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』)で演じたアーシャちゃんが、太陽背負っているみたいな、ちょっと幼い感じの役ではあったのですが、初めて素に近い役だなと思ったんです。
「そのままでいい」って、どうやってそのままで舞台に立つのか 、役作りをあまりしないで舞台に立つのが逆に難しいと思っていたところもあったのですが、
一度経験したから今回はできるのかなと思うので、いっぱい暴れ回りまーす!
七海:原作を読んでいても、もう有沙ちゃんがやっているのが想像つくんだもん。
有沙:ずっと仰っている(笑)。
七海:なんかもう、「うんうん、わかる~」って。
(現場全員笑)
――おふたりが宝塚で、ご一緒した作品で、印象に残っている作品はありますか?
有沙:「POP STAR」の場面……?
七海:ショー作品『ESTRELLAS(エストレ―ジャス)〜星たち〜』で一緒に組んだことがすごく印象に残っています。あとは、さっき話していた『東離劍遊紀』。
有沙:かっこよかったぁ……。
七海:あれは、有沙ちゃんがちょっとクールな戦う女性役をやっていて、それもすごく素敵でした。共演作品ではないですが、有沙ちゃんの出ていた作品でいうと、『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』がすごく印象に残っています。
有沙:ルイーズ(・ド・レナール)ですね。大人でした……。
七海:すごく大人っぽい役で素敵でした。どちらかというと、あの印象があったから……。
有沙:あれっ(笑)。
七海:『1789 -バスティーユの恋人たち-』のアントワネットも、ピカイチでした。アントワネットの、奔放さと心の幼さみたいなのを絶妙に表現していてピッタリでした。
有沙:すごく嬉しいです~~!
――逆に、有沙さんから見た「七海ひろきさんのおすすめ作品」はありますか?
有沙:ええ~! ひろきさんのおすすめ…! ひろきさん、本当に役者様ですから……。
七海:ハハッ。
有沙:でも、もちろんお芝居も好きなのですが、ショーでもどの場面も……うわ~難しい~! だって全部かっこいいんだもん。
七海:ありがとう!
有沙:どうしましょうね……『燃ゆる風』。私、日本物も結構好きだったので。日本物が似合う男役さんがまさに大好きだったんですよ。
七海:おお~。
有沙:スーツとか、やはり綺麗に素敵に着こなされている方は結構多かった。あとは、本当に『東離劍遊紀』の……
七海:殤不患(ショウフカン)。
有沙:そう。良い感じに渋さもあって。
七海:おじさんだったからね(笑)。
有沙:あと、オーム……
七海:『オーム・シャンティ・オーム』のムケーシュ? やってたやってた。悪役だね。
有沙:あれもかっこいいんですよね~! もうだめだ、全部出てきちゃうから。
――次々出てきちゃいますね。
有沙:すみません、ファンを抑えます!
(現場全員笑)
七海:ありがとうございます(笑)
――ありがとうございました。最後に、配信でご覧いただく皆様にお伝えしたいメッセージをお聞かせください。
七海:配信には、劇場では味わえない面白さがあると思っています。表情や動きの細かい部分に着目して見ることが出来るし、私は画面に向かっては独り言を言ったりしながら観たりしています(笑)劇場で舞台を観た後でも、そんな風に楽しんでもらえたらなと思います。素晴らしい作品だと思うので、ぜひたくさん観てもらいたいなと思います。
有沙:もちろん、生の舞台の良さもすごくあると思います。でも、上演されるのは大阪と東京だけなので、配信は本当にどこからでも見れるから、地方とかにいらっしゃっる方や、家族でも一緒に見られますよね。この『七色いんこ』という作品は、元気になったり、ほっこりできる作品だと思うので、家族の繋がりの1個になったらいいなとすごく思いますし、初日と千穐楽で配信があるということは、きっとその間にも全然違ったものが生まれると思うので、二度おいしいなと思います。基本的に、配信は千穐楽とかしかないじゃないですか。だから、どう変わっていくかという過程も見て楽しんでいただけたら嬉しいなって思います。
ヘアメイク:北崎実莉
七海ひろきスタイリング:藤長祥平
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作品情報
ミュージカル「七色いんこ」
【公演日程・劇場】
<大阪公演>2024年9月14日(土)~ 9月16日(月・祝)
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
<東京公演>2024年9月20日(金)~ 9月29日(日)
品川プリンスホテル ステラボール
【原作】手塚治虫
【脚本】畑 雅文
【演出・作詞】三浦 香
【音楽】浅井さやか(One on One)
【出演】
七色いんこ:七海ひろき
千里万里子:有沙 瞳
トミー:藤田 玲 陽介:土屋直武 朝霞:古谷大和 我利屋:新 正俊
小田原刑事:大森夏向 狐川イナコ:岡村さやか モモ子:髙橋果鈴 古武良:藤本結衣
ヨーコ:倉持聖菜 チルチル:齋藤千夏
警部:高木トモユキ 鍬潟隆介:郷本直也
[アンサンブル]佐藤康道 橋本有一郎 藤村リュウト 柳田英理 山﨑竜之介 渡邉 南
【企画協力】手塚プロダクション
【協力】一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会
【舞台公式サイト】https://musical-nanairo-inko.com
【舞台公式X】@nanairoinko_mu
【舞台公式Instagram】@musical_nanairoinko
【舞台公式Youtubeチャンネル】https://www.youtube.com/@musical-nanairo-inko
【東京公演主催】ミュージカル「七色いんこ」製作委員会
【大阪公演主催】(株)サンライズプロモーション大阪
©︎Tezuka Productions/ミュージカル「七色いんこ」製作委員会
※「手塚治虫」と「手塚プロダクション」の「塚」は旧字体 が正式表記
Rakuten TVで視聴する
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