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467139 (C) 1997 天樹征丸 金成陽三郎 さとうふみや/日本テレビ 講談社 バップ 電通 https://tv.rakuten.co.jp/content/467139/
バラエティ番組出身の堤監督がドラマディレクターとして注目を集めるようになったのは、1995年にドラマ化された「金田一少年の事件簿」シリーズだ。名探偵・金田一耕助の孫である金田一一(はじめ)が難解な事件に挑む、人気コミックを原作とした本格ミステリー作品で、堤監督は堂本剛主演の初代シリーズ(1995年~1997年)の演出を手がけ、ヒットへと導き、シリーズ化のきっかけを作った。
密室殺人、怨念殺人、衝撃の真犯人など、本格ミステリーならではの要素も踏襲しつつ、主人公・一をカッコいいだけでなくコミカルな人物として描き、キャラクターを際立たせた。さらに、独特なカメラワークや派手なトリック演出でエンタメ性の高いミステリー作品に仕上げ高視聴率を獲得。1997年にはその人気の高さから劇場作品『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』も公開されるなど、堤監督の出世作となった。また、謎解きをメインにするだけでなく、犯人の悲しい過去や復讐劇の奥深さを描き“人間ドラマとしてのミステリー”という視点を持たせたことも堤作品らしさの原点といえるだろう。
(レンタル:330円〜)
111022 (C) 2002 「トリック劇場版」製作委員会 https://tv.rakuten.co.jp/content/111022/
「金田一少年の事件簿」シリーズで確立した映像表現と演出のスタイルは、2000年の「トリック」シリーズでさらに進化する。
「トリック」シリーズは、超常現象を科学的に解明するというテーマのもと、仲間由紀恵演じる自称超売れっ子マジシャン・山田奈緒子と、阿部寛演じる騙されやすい天才物理学者・上田次郎が、不思議な現象の裏に潜む“トリック”を暴いていくという新感覚ミステリーだ。本作では金田一シリーズよりもさらに遊び心が増し、演技力の高い主演2人に変人キャラを真顔で大げさに演じさせた。さらには、バラエティやワイドショーのような時事ネタ、小ネタをふんだんに加えるなど、ユーモラスな演出が際立つ仕上がりに。だが、謎解きの本格度は高く、視聴者を驚かせるトリックが随所に仕込まれている。堤監督ならではのシュールな映像表現や独特の間の演出が光る作品はシリーズ化され、14年間にわたるロングヒット作品となった。
(レンタル:330円、購入:2,200円〜)
https://news.tv.rakuten.co.jp/wp-content/uploads/2025/03/サブ8.jpg (C)2013 「劇場版 SPEC ~結~ 漸ノ篇」製作委員会 https://tv.rakuten.co.jp/content/118456/
2010年に始まった「SPEC」シリーズは、「トリック」シリーズのDNAを引き継ぎながら、さらにスケールの大きなストーリーへと発展する。戸田恵梨香演じる天才・当麻紗綾と、加瀬亮演じる警視庁特殊部隊(SIT)出身の瀬文焚流が、特殊能力(SPEC)を持つ犯罪者たちと対峙する異色のミステリーだ。本作では、オカルト的要素が色濃くなり、世界観もよりディープに。コミカルの比重はこれまでの作品より控えめとなり、“人間の心の闇”を掘り下げる作品となった。
(レンタル:330円、購入:2,200円〜)
496501 (C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024 映画「夏目アラタの結婚」製作委員会 https://tv.rakuten.co.jp/content/496501/
2024年、堤監督は全く新しい形のミステリー映画『夏目アラタの結婚』に挑んだ。
主人公・夏目アラタ(柳楽優弥)は元ヤンの児童相談員。ある事情から、世間を沸かせた連続バラバラ殺人犯として死刑判決を受けた品川真珠(黒島結菜)と獄中結婚をすることになる。刑務所での1回20分の面会を重ねては真珠の狂気に翻弄され、彼女の闇に引き込まれていく。真珠の口から飛び出した「ボク、誰も殺してないんだ。」という言葉で、真犯人を探ることになったアラタの前に、真珠の秘密が浮き上がってくる。真珠は本当に殺人を犯していないのか。アラタの結婚に愛はあるのか――。
この作品で堤監督は、従来のミステリーとは異なる「心理戦」に重点を置いた。金田一少年のような明確な謎解きや、「SPEC」シリーズのような超常現象ではなく、人間の深層心理を巧みに描き出している。特に、アラタと真珠の駆け引きは、まるでチェスのように緻密に計算されており、一瞬たりとも目が離せない。
堤作品の伝統である「映像のトリック」も健在だ。真珠の表情やしぐさに潜む違和感を、カメラワークや編集で巧みに強調し、“彼女の本心はどこにあるのか?”という疑念を観る者に抱かせる。
堤監督作品には、常に「人間の闇」と「真実の追求」が根底にある。表面的にはユーモアやトリックに彩られながらも、その奥には、普遍的な人間の欲望や恐怖が描かれている。『夏目アラタの結婚』は、そんな堤監督の新たな挑戦であり、ミステリーの新境地を開く作品となっている。
(レンタル:440円、購入:2,200円〜)
2025年には、世界各国のファンタスティック映画祭で上映されている新作映画『THE KILLER GOLDFISH』の公開も予定されている。70歳を前に、「ユキヒコツツミ」監督名義で夢を追う才能たちと自主制作で挑んだ作品だという。今後、堤幸彦がどのような形でミステリーの系譜を進化させていくのか、注目せずにはいられない。
(文・坂本ゆかり)
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