「別れ」から始まる次の恋愛――『乗り換え恋愛2』が示す新しい恋愛リアリティの形

この『乗り換え恋愛2』も、設定が斬新だ。「乗り換え」という番組名が示す通り、これまでの恋愛リアリティ番組のように「出会い」だけにフォーカスせずに、出会いを求める原因となった前の恋愛の「別れ」にもフォーカスを当てているのだ。

参加しているのは、さまざまな理由で別れた“元カップル”たち。ひとつ屋根の下で共同生活を送る中で、過去の恋愛と向き合い、新たな出会いとの間で心が揺れ動き、新しい愛を見つけていくという異色の恋愛リアリティショーとなっている。

誰と誰がカップルだったのかは秘密。しかしまだ未練のあるカップル、ふっ切れているカップル、別れたけど友達として再出発したいカップル……などその実情はさまざま。番組内ではカップルが別れた理由にも深く切り込む。長く付き合ったカップルの破局の理由が実に些細なことだったりすることが明らかになったりと、視聴者は単に新しい恋の芽生えを楽しむだけでなく、関係が終わる理由や、別れた後の感情の変化についても深く考えさせられることとなる。

その中でも注目すべきは、「元恋人同士が再び向き合う瞬間」だ。出演者たちは過去の恋愛を「乗り換え」て新しい恋に向かうという目的を持っている。そのために元カップルたちは、過去の恋愛を客観的に振り返り語り合うのだが、これには見ている方も思わず涙してしまう。

別れを経験した人々が時間の経過とともにどのように感情を整理し、どのように新しい関係に向き合うのかという過程が丁寧に描かれているのも本作の魅力だ。

また、元恋人の新しい恋を目にして嫉妬や後悔が生まれたり、自分自身を見つめ直し、最終的には新しい恋ではなく元サヤとなるカップルがいたりするのも、この番組ならではとなっている。

参加者は男性陣が、チョン・ギュミン（ビデオデザイナー）、キム・テイ（ブランドエディター／バリスタ）、パク・ウォンビン（大学生）、ナム・ヒドゥ（アイスホッケー選手）、チョン・ヒョンギュ（大学生）、サン・ミンギ（アートディレクター）。女性陣が、イ・ナヨン（スポーツアナウンサー）、ソン・ヘウン（キャビンアテンダント）、キム・ジス（英語講師）、イ・ジヨン（大学生）、パク・ナオン（大学生）、チェ・イヒョン（メイクアップアーティスト／モデル）とバラエティ豊か。途中でメンバーの入れ替わりもあり、誰と誰が元カップルかという推理も難しい。

視聴者と同じ目線でカップルたちを見守りながらスタジオトークを繰り広げるのは、ラッパーのサイモン・ドミニク、芸人のイ・ヨンジン、女優のキム・イェウォン、ユラ、そしてGOT7のベンベン。ベンベンはこの番組以降、バラエティへの出演オファーが増えたというから、番組の影響力が伺われる。

『乗り換え恋愛2』は、過去の恋愛に囚われずに前に進むことの大切さを教えてくれる一方で、過去の関係を見つめ直すことの意義も示唆している。相手の長所や短所を知り、自分自身の感情と向き合い他者との関係性を再構築していく過程は、視聴者に深い洞察を与えるとともに、自身の人間関係について考える機会を提供してくれることとなる。韓国では、2025年秋に新シーズン『乗り換え恋愛4』の放送が予定されているという。恋愛バラエティを超えた人間ドラマがあるからこそ、この番組が長く愛されているのではないだろうか。

（文・坂本ゆかり）

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