RECCOMENDイチオシ
SERVICE関連サービス
タイBLブームが世界を席巻した当時の主流ジャンルは、学園もの。そこは『Dark Blue Kiss』も同じだが、カップルになるまでの高揚感や障害を描く他作品と異なり、本作の続主人公カップルはすでに交際3年目になる。主人公のピート(Tay=テイことタワン・ウィホクラット)とカオ(New=ニューことティティプーン・テーシャアパイクン)は、もともと男女の恋愛を中心とした『Kiss: The Series』とその前日譚の『Kiss Me Again』に登場したカップルで、視聴者の支持を受け、オムニバス作品『Our Skyy』を経て、ついに単独主演作になったのが『Dark Blue Kiss』だった。
そのため、本作では第1話から次のステップへ進もうとする2人の心の奥に踏み込んでいく。ピートはカオを恋人だと堂々と公表したいと思っているが、カオの方は教師である母親の立場を考慮し、拒んでいる。そんな2人の前に、カオに思いを寄せる高校生のノン(AJことチャヤポン・ジュターマート)が現れ、秘密と嫉妬が重なったことで信頼関係が揺らいでいくことになるのだ。
541041 第2話 https://tv.rakuten.co.jp/content/541039/
一見すると、恋人の間に第三者が入り込む王道の三角関係だが、本作の独自性はもっと深いところにある。カオは家庭教師の収入で母親を支え、その母親はノンの父親が経営する学校に勤めている。ピートとの交際を母親に言うこともできないし、ノンを邪険に扱うこともできない。いずれも母親の仕事に影響を与えかねないからだ。対して、ピートは実力者である父親に関係を明かし、理解を得ている。2人のすれ違いは性格の違いだけでなく、カミングアウトによって追うリスクの差からも生じているのだ。
ここで重要なのは、作品が自分たちの関係を隠したくないピートの気持ちも、母親を失望させることを恐れるカオの迷いも、どちらも否定していないことだ。愛があっても同じ決断ができるとは限らず、同性カップルの間にも家庭環境や経済状況によって“公表できる側”と“できない側”が生じること。Aof監督はそういった事情を恋愛ドラマの中で描き、BL作品に“LGBTQ”の問題を巧みに織り込んでいったのである。
本作が初登場から7年経ってもなお人気を博しているのは、そういった点にある。人気ペア・TayNewの代表作というだけではなく、同性カップルが社会の中で生きていくことのリアルさや難しさを作中で示したところに大きな意味があった。しかも、それをタイ最大大手のGMMTVで制作したことも大きく、追随するBL作品だけでなく、社会全体にも影響を及ぼしたはずだ。
541047 第8話 https://tv.rakuten.co.jp/content/541039/
監督・脚本を担ったAof監督は、2019年以降も『A Tale of Thousand Stars』『Bad Buddy』『Moonlight Chicken』『Last Twilight』『Ticket to Heaven-天国へ行かない少年-』などを制作。いずれでもクィアな人々を特別な存在にしすぎず、社会の中で生きる1人の人間として描き続けている。そして、恋愛を社会や生活と結びつけて描くことも大きな特徴で、例えば『Dark Blue Kiss』ではカミングアウトと家族の生活、『Last Twilight』では視覚障害と自立を恋愛に重ねている。だからこそ、より身近な物語として捉えることができるのだ。
『Dark Blue Kiss』は、TayNewの人気を確立した作品であると同時に、タイBLが“結ばれるまでの物語”だけでなく、“結ばれた2人が社会でどう生きるか”を描くこともできることを示した。加えて、リアルなLGBTQ問題にも踏み込んでいる。相手を理解する過程を描くのに定評のあるAof監督が、世界的タイBLブーム前夜にこれらをどう描いていたのか、今一度味わってみてはいかがだろうか?
(文・及川静)
https://news.tv.rakuten.co.jp/2026/07/info-dark-blue-kiss.html 『A Dog And A Plane』で話題のTayNew出演作。恋人同士のリアルな葛藤と愛の行方を描く『Dark Blue Kiss』全話配信中 https://news.tv.rakuten.co.jp/2024/04/bl-list.html 【BL関連記事一覧】新作・おすすめ・ランキングをご紹介! https://news.tv.rakuten.co.jp/2024/07/bl-search.html おすすめBLドラマ・映画ガイド|新作や更新中作品をまとめてチェック【2026年版】
541039