作品紹介
DNA Says Love You
410524
幼馴染の秘密、思いがつながる秘密の庵
幼なじみのプー・ラージエン(浦樂建)、ジュアン・シーウェン(莊喜文)、シエ・ユーホー(謝雨荷)は共に過ごした子供時代に、一生離れずにそばにいようと誓う。だが思いもよらず理由もなく別れ、ラージエン、シーウェンはお互いの人生から消えていた。数年後、ラージエンが自分の探検チャンネルのアクセス数が減り続けてることを悩んでいる時、映像制作を勉強する海外帰りのアンバーという青年が現れる。そして彼は新たな探検の場所探しに悩むラージエンに、ラージエンも母からよく聞かされていた伝説の「帰来庵」の情報を渡し、探しに行くのだった。
2022年の青春BLアイドルドラマ?
待望のBLドラマ 待ってました!
https://im.akimg.tv.rakuten.co.jp/content/50/23/410532/main.jpg
2022年は1月の『返校 言葉が消えた日』、2月の『私のボスはネコ!?』、3月の『君、花海棠の紅にあらず』、4月は『時をかける愛』のご紹介をしてきたんだけど、今月5月のご紹介はなんと待望のBL(?)作品!
ふれこみは「青春BLアイドルドラマ」よ。期待せずにはいられないでしょ?まあとにかく4人ともかわいいわ。浦樂建が一番の好みですけどね、他の3人も個性的で可愛い。主人公4人のうち3人が20歳で、もう一人が23歳の設定だということで、みんなキラキラしてますよ。今のところ第4話までの配信だから、この先にどういう展開が待っているのかは毎週の楽しみにするとしても、いまのところあんまりBLっぽくないっていうか、お決まりの感じじゃないことは確かね。
例えばゲイが当たり前の存在になっている
冒頭で「今の台湾」っぽいっていう話をしたんだけど、それがどういうところに表れているか、例えば出てくる小李(李慶龍)は阿琯(琯宇宸)のことが好きで仕方ないゲイの役どころ。同性婚ができるようになったとはいえ、自然に出てきて周りも自然に受け入れているように見える点、こんなところは「今の台湾」の一つの側面でしょう。いちいち説明を加える場面も、その人物の性自認を受け入れていく過程も、登場の時点で秘密にもされないし描かれていない。周りのセクシャルマイノリティの存在が日常の一部になりつつあることが透けて見えてくる。「わざわざ声に出して言うことじゃない」というように。この二年、台湾には行けていないけれど、台湾は二年分進んでいるんでしょうね。
まずは魅力的な人物紹介から
メインCPの二人
https://im.akimg.tv.rakuten.co.jp/content/50/03/410530/main.jpg
メインCPの二人は浦樂建(プー・ラージェン)とアンバー。中華系の苗字って日本と比べるとすごくバリエーションが少ない(日本が多すぎともいう)んだけど、あたし浦さんって初めて見たわ。プーさんかわいいです。あたし笑った顔の人に弱いんですよね。なんていうか、実直な学生、台湾によくいるタイプといったところ。このドラマの主人公たちは「ああ、いるいるこういう人」っていう感じが随所に見られるのも特徴と思ったわ。
相手役のアンバーは、しばらく見ていかないとどういった人物なのかが分からないのね。海外から台湾に帰って来た、ということくらいしか明かされない。「秘密」が一つのテーマでもあると思うんだけど、アンバーの思いが交錯する表情は見ものよ。それにしてもキャスティングが素晴らしい。この役どころぴったりのルックスだもの。ミステリアスで、美しくて、とにかく言うことなしね。アンバーがカフェを訪れるシーンが前半にいくつかあるんだけど、浦樂建の表情が一気に明るくなるの。知らぬ間に二人、ひかれあってたのね。
サブCP 意外な組み合わせ?
https://im.akimg.tv.rakuten.co.jp/content/50/13/410531/main.jpg
サブの二人、琯宇宸(グアン・ユーチェン/阿琯:アーグアン)は一人、23歳。このドラマの役はみんな若い!阿琯以外の三人はハタチですもの。この四人で一緒にいるところを見ていると、阿琯だけは大人びて見える。阿琯は落ち着いていてとにかく勉強ができる。ずっと学級委員だったそうで、まあ言ってみればガリ勉タイプね。見た目は90年代の日本のトレンディドラマに出て来そうで、さわやかそのものなんだけどね。
相手の李慶龍(リー・チンロン/小李:シャオリー)は対照的よ。とにかく派手であたしら二丁目組合の中にもいるいるって感じのイケイケゲイ。アイデアが思いついたらすぐに実行するようなタイプで、落ち着いている阿琯とどうやって付き合うことになったの!? と言ってしまいたくなる。正直言って付き合っているようには見えないんだけど、まあでも恋人って当事者二人がよければ世界中が反対したってオーケーな世界ですもの。それにしばらく見ていると小李の阿琯に対する気持ち、痛いほど伝わってくるんだから。
迷信の島、台湾?
ドラマの中で重要なスポット、「帰来庵」。訪れた者は不思議なご利益を得られるという…。台湾に行ったことがある人ならきっと「龍山寺」や「行天宮」なんかのお参りスポットには
行ったことがあるという人も多いはず。そしてそのあたりには占い師の多いことに気づくことでしょう。台湾の人は占い好きよお。あたしも行ったことあるけど、見ていて不思議だと思ったのは占い師のいうことを素直に訊くこと。「運勢を変えるために名前を変えなさい」とアドバイスされて本当に名前変えちゃった友達もいたわ。
台湾では仏教、道教、キリスト教を信仰している人が多いんだけど、中でも道教のお寺は興味深いわよ。神様と対話ができるんだから。日本ではお金を納めればすぐにひけちゃうおみくじも、台湾では「くじを引いていいかどうか」をまずは神様にお伺いする。赤い半月状の木片二つを使って、同じ目がそろって出るまで祈り、投げ続けるの。やってる人本気だから。あたしが理性的に過ぎるのかも知れないんだけど、あたしの目には台湾の人って迷信ぽいところあるんだなと見えたのでした。
ドラマの中に出てくる「帰来庵」もそんな台湾の雰囲気を知っていると突然出てきたものなのではなくて、それこそ「本当にありそう」に思えてくるわ。
BLドラマとLGBTQの作品の違いってなんだ?
「これはBLじゃない」とか、「これは普通のゲイ映画だ」とか、よく話されているテーマだと思うんだよね。本作もご多分に漏れず「BLじゃない!」って言う声がちらほら聞こえてきたんだとか。あたしは個人的にはそこまで厳密じゃないし、面白ければそれでいいんだけど、気になる人は気になるんでしょうね。「セクシャルマイノリティ当事者として」という語り口は、実は危ないんじゃないかと思うのよね。だってただセクシャルマイノリティなだけで、自分でそのコミュニティーを代表するわけにはいかないでしょ? あたし日本人だけど日本人代表なんかにはなれないもの。みんなもあたしが日本人代表だったらこまっちゃうよね!
いろんな見方をするいろんな人がいる、それでいいんじゃないかしら?
執筆者情報
歐陽(オウヤン)ママ
早稲田大学大学院修了。論文のテーマは台湾の文化。
2012年から2013年にかけて台湾で生活、日本語の先生などしてふらふらする。
新宿二丁目では2021年10月から新しいお店「美麗島」をオープン!