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特撮の醍醐味、恋愛模様、シュールな言葉の応酬──さまざまな要素が詰め込まれた『大怪獣のあとしまつ』

特撮の醍醐味、恋愛模様、シュールな言葉の応酬──さまざまな要素が詰め込まれた『大怪獣のあとしまつ』
映画『大怪獣のあとしまつ』が、713日からRakuten TVにて配信中。同作は松竹と東映が創立以来初タッグを組んだ空想特撮エンターテイメント作品として話題を呼んだ。

人類を未曽有の恐怖に陥れた大怪獣が、突如現れた光エネルギーに包まれ絶命する。国民は歓喜に沸くが倒された怪獣の死体処理は、果たしてどうするのか? これまでに描かれたことのない題材を、TVドラマ「時効警察」シリーズ(EX)などで人気の三木聡が監督・脚本を手がけ、特撮ならではのスリリングさと、その中での人間模様をユーモラスに描いている。

絶命し水辺に横たわる大怪獣は、最全長380m、東京ドーム長径の約1.5倍という圧倒的な存在感。しかも、死後の腐敗による体温上昇で徐々に膨張が進み、表皮に現れた隆起からガス爆発の危機が迫っていることが判明する。政府は「大怪獣の死体処理」という極秘ミッションを直轄部隊である特務隊に依頼。現場担当者には、数年前に突然姿を消した過去を持つ帯刀アラタが選ばれた。

主人公の帯刀アラタを演じるのはHey! Say! JUMP山田涼介、そしてアラタの元恋人で環境大臣秘書官の雨音ユキノ役を土屋太鳳、ユキノの夫で総理秘書官の雨音正彦を濱田岳が演じる。

言葉数の少ないアラタの繊細な心の動きを“表情”で表現する山田涼介。突然現れたアラタへの思いを隠し切れない恋心を可憐に演じる土屋太鳳。そしてユキノのアラタへの思いに気づきながらも結婚した夫の愛憎を怪演した濱田岳。複雑に絡んだ3人の恋愛模様は本作の大きな見どころ。そしてそんな彼らの恋愛模様が特務隊のプロジェクトに大きな影響を及ぼす点にも注目したい。

3人のほか、「死体処理」の現場には、特務隊をライバル視する国防軍の大佐(菊地凛子)や、死体の処理方法を売り込みにくる町工場の社長(松重豊)、過去には特務隊に所属し爆破のプロとされた通称ブルース(オダギリジョー)が呼び寄せられるなど個性的な俳優が顔を揃える。そこに、大怪獣の姿を配信して1億再生を狙う迷惑系動画クリエイター(染谷将太)まで登場し物語は大きく動いていく。

現場で特務隊たちが試行錯誤する一方で、政府は、怪獣が爆発すれば北西20km圏内に腐敗臭が広がり、ガスには有毒性物質が含まれているかもしれないという未曾有の事態を前に混迷。

会議室では、西田敏行が演じる内閣総理大臣を中心に、官房長官、環境大臣、文部科学大臣など各機関の代表が集まり、責任の所在を押し付け合ったかと思えば、状況が変われば一転、意見や立場を覆すなど滑稽なほどの変わりようが、社会風刺も交えた視点で描かれる。

とはいえ、重くなりがちな会議室という空間で、笹野高史六角精児ふせえりなどの名優が、怪獣の死体について「一般廃棄物」なのか、それとも「生ゴミ」なのか、はたまた「兵器で倒せなかったから燃えないゴミだ」などと、テンポ良く繰り出される言葉の応酬にコミカルさも垣間見られる。

「あとしまつ」という新しい着眼点に、特撮の醍醐味、謎解き、シュールゆえにコミカルさを生み出す会話の応酬、そして主人公たちの恋愛模様──様々な要素が楽しめる作品となっている。

(文・原千夏)

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