人を寄せ付けず、モデルルームのような家で一人暮らしをしている若き歴史学教授の褚一平は、決して隙を作らず、大学職員や生徒と一定の距離を保って生きてきた。そんな彼が肩を脱臼したことをきっかけに、叔父が経営するAIロボット制作会社で開発されたAI「恒9」と共に生活することになる。恒9は精巧に作られた超ハイスペックのAIで、警戒心の強い一平も思わず至近距離で確認してしまうほど精巧に作られた人型タイプ。優秀なのは本体だけでなく、料理が得意で一平の健康のために適度な塩味の食事を作るなど、ヘルパーとしてこの上ないスキルも持っている。
加えて思考システムも搭載されているため、几帳面な一平のテリトリーをけがすことなく、状況に応じた家事を完璧にこなしていく。掃除をすれば、お掃除ロボットとは比較できないほどに床をきれいに磨き上げ、一平が歯を磨けば、絶妙のタイミングでコップを差し出す。入浴できない間は丁寧に体を拭いてくれたかと思えば、その次はバスルームでマッサージ付きシャンプーをしてくれる。至れり尽くせりのケアにも驚かされるが、もっとも彼の心を打ったのはAIとは思えぬ意外なポイントだった。
それは、恒9の純粋さと“人間らしさ”だ。一平は出会った初日から先入観なく真っすぐに対応してくれる恒9に心を動かされ、かつての愛犬との時間を思い出すほど居心地の良さを覚える。その後も日用品は定期便で取り寄せ、食事は外食かデリバリー、もしくはインスタント食品と効率重視の生活をしていた一平が、恒9からスーパーで商品を悩みながら買う楽しみを教わる。おかしな話だが、AIである恒9のおかげで一平の生活は人間らしくなっていくのだ。そのおかげだろうか。他人の気持ちに無頓着だったが一平が、恒9を気遣うようになり、第4話では恒9が一人で家に残ることを寂しく感じていることに気付いて、大学への同行を提案。そして、仲良く出勤することになる。
だが、その大学で事件が起こる。「告白湖」という大学の名所で二人が「恋愛」について語り合っていると、一平は恋愛未経験なのに対し、恒9は「恋愛シミュレーション」を経験済みであることが判明する。そこで一平がある文化人類学者が発表した距離感が示す対人関係の変化を実践しようと提案し、礼儀正しい距離感から親密距離へと近付いていく。そして、最も親密な距離まで顔を寄せたその時、恒9が突如、一平にキスをする。そしてデータとは異なる感覚であることを述べていると、今度は一平から唇を寄せていく。
この一件で恒9が特別な存在であることを実感した一平は、恒9とずっと一緒にいたいと強く思うようになる。しかし、感情や思考システムがあり、肌触りも人間と変わりなく、さまざまなことが可能な多機能システムが搭載されているとはいえ、恒9はAIにすぎない。何かが故障したり、OSを初期化すれば、一瞬で一平のことを忘れてしまう存在なのである。このことが一平を苦しめていく。タイトルからして「リセット反対!」と訴えているが、果たして二人の結末はどうなるのか?見ているだけで心が温まるカップルだけに、最終話(第10話)でのハッピーエンドを願うばかりだ。
(文・及川静)
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