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1953年の第6回カンヌ国際映画祭で最高賞に次ぐグランプリと男優賞(シャルル・ヴァネル)を、また同年の第3回ベルリン国際映画祭でも最高賞の金熊賞を受賞した。1977年にはハリウッドでリメークされ、サスペンス映画の金字塔として今なお映画ファンの称賛を集めている作品である。
フランス・イタリアの共同製作となるが、物語の舞台は中米ベネズエラのある町だ。500km先の油田で火災が起き、石油会社は爆風を利用して火を消し止める方法をとることにした。そのために必要となる大量のニトログリセリンを運ぶ仕事が2,000ドルの報酬で募られ、マリオ(イヴ・モンタン)、ジョー(シャルル)ら4人が選ばれる。
世界各国からの食いつめ者たちが集まる町。職がない中で、2,000ドルは大金だ。しかし、それと引き換えに仕事は命がけである。少しの衝撃で爆発してしまうニトロを、制御装置などないトラックで荒れた道を通って運搬するのだ。どんな困難が待ち受けているのかに加え、前半でじっくり描かれた人間ドラマがその緊張感に効いてくるのが見事である。そして、まさに予想だにしない結末が待っている。
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イタリアのアリーチェ・ロルヴァケル監督が脚本も担当した本作は、2018年の第71回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した。ちなみに、ロルヴァケル監督は、長編2作目であった『夏をゆく人々』(2014年)でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞している。
舞台は、20世紀後半のイタリア中部の外界とは隔絶された小さな村である。そこでは、純朴な青年・ラザロ(アドリアーノ・タルディオーロ)をはじめとする村人たちが、小作制度の廃止を知らされることなく、領主の侯爵夫人のタバコ農園で昔のままタダ働きを強いられていた。そんなある日、侯爵夫人の長男が誘拐騒ぎを起こしたことをきっかけに、侯爵夫人の悪行が世間の知るところとなる。村人たちは保護され、村を出ていくことになるが、ラザロにはある出来事が起きる。
ラザロは、怒ることも疑うこともない、無垢な魂を持った青年である。侯爵夫人は村人から搾取しているが、その村人たちはラザロをいいように使って搾取している。そんな構図の中にいるラザロの澄んだ瞳に映るものが胸に突き刺さる。寓話のような不思議な世界観のファンタジー・サスペンスである。
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カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭と並ぶ世界三大映画祭の一つであり、世界の映画祭の中でも最も長い歴史を誇るのがベネチア国際映画祭である。その第76回(2019年)で銀獅子賞(審査員大賞)を受賞したほか、フランスで権威ある映画賞・セザール賞第45回では、監督賞・脚色賞・衣装デザイン賞の3部門を制覇した。ロマン・ポランスキー監督が、ロバート・ハリスの小説を原作に、19世紀末に実際に起きたえん罪事件を描いた歴史サスペンスである。
ユダヤ人のフランス陸軍大尉ドレフュス(ルイ・ガレル)が、ドイツに軍事機密を流したスパイ容疑で終身刑を宣告された。対敵情報活動を率いるピカール中佐(ジャン・デュジャルダン)は、ドレフュスの無実を示す証拠を発見するが、軍の上層部は隠ぺいをもくろむ。ピカール中佐は、真実と正義の闘いに身を投じていく。
背景には、腐敗した国家権力と反ユダヤ主義がある。そうした理不尽さに斬りこんでいくピカール中佐の姿が、抑え目の演出のようで重厚、かつ丁寧な作りこみで、観る者を先へ先へと引き込んでいく。当時の空気感が伝わってくるようだ。
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イギリスとアイルランドの合作であり、2017年の第70回カンヌ国際映画祭で脚本賞に輝いたサスペンス・スリラーである。監督を務めたのは、不条理劇の名手として知られ、『哀れなるものたち』で2024年の第96回アカデミー賞において主演女優賞などを受賞した、ギリシャ出身の鬼才ヨルゴス・ランティモスである。
物語の主人公は心臓外科医のスティーブン(コリン・ファレル)。美しい妻アナ(ニコール・キッドマン)と2人の子どもとともに郊外の豪邸で暮らしている。一方で、時おり会っている少年マーティン(バリー・コーガン)がいて、腕時計をプレゼントするなど、何かと気にかけていた。そのマーティンを自宅に招いたあとから、スティーブンの家族に奇妙な出来事が起こり始め、やがてスティーブンは究極の選択を迫られることになる。
奇抜な導入に目を背けたくなる人も多いかもしれない。しかし、なぜか目が離せなくなる。カメラワークや音楽が生み出す終始不穏な空気に包まれ、脚本も手がけたランティモス監督の才能がさく裂した、不条理かつ不可思議な世界にゾクゾクとさせられる作品である。
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2017年の第70回カンヌ国際映画祭で、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』とともに脚本賞を受賞し、主演のホアキン・フェニックスが男優賞に輝いたイギリス映画である。
行方不明者の捜索を請け負うスペシャリスト、ジョー(ホアキン・フェニックス)のもとに、州上院議員からの依頼が舞い込む。ジョーは、ある組織に囚われた議員の娘ニーナ(エカテリーナ・サムソノフ)を救い出すことに成功するが、彼女は感情が欠落しているかのように無反応なままだった。ニーナと議員を待っていたジョーは、議員が自殺したことを知り、直後にニーナが再び連れ去られてしまう。
トラウマを抱える元軍人のジョーを、ホアキン・フェニックスが圧倒的な存在感で演じる。彼の愛用する武器はハンマー。仕事において暴力をいとわない男だが、意外にも直接的な暴力描写は少ない。それでも本作は、確かにヴァイオレンス・サスペンスである。台詞や映像を極限までそぎ落とした演出が、観る者の想像力を刺激しながら物語を完成させていく。
(文・神野栄子)
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