そして、後編ではRakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品から、おすすめ作品をセレクトしてもらい、それぞれのセレクト理由や思い出を語ってもらった。
(文&写真:岩村美佳)
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ー稽古が始まってすぐにミリーに戻れるものですか?
台本上でマイナーチェンジがありまして、一路さんのお役、ミセス・ミアーズの設定が変わるんです。プロローグのお財布を取られたところからの流れが、今回の方が繋がっていて、出会いが変わりました。全然違う始まり方なので、稽古当初は全然違うかもしれないと思っていたんですが、本読みをしてみたら、演出の小林香さんや訳詞の竜真知子さんに、「やっぱりミリーが染み込んでるね」と言っていただいたので、そうなんだなと。それがベースにあってのマイナーチェンジとブラッシュアップができたらいいなと思っています。自分以外の新キャストの方々との化学反応など、いろいろと繊細にキャッチしながらやっていきたいなって思っています。
ーマイナーチェンジがあっても、ミリーは朝夏さんの中に揺るぎないものがあったんですね。
あったみたいです。でも今回の目標として、もっとミリーのバイタリティを上げていきたい、女性が自分で選択をして幸せになる道を見つけていくというメッセージを、より強く打ち出したいと言われています。前回は結構笑いに振り切っていて、アメコミみたいに、と目指していました。今回はリアリティをプラスしつつ、笑いはレベルを上げてという注文がありました。
ー前回拝見してたくさん笑いましたし、スカッとして面白かった感覚が残っているのですが、そこにもう少し現実味が加わってくるのでしょうか?
現実味というか、現実を生きているお客様に、ちょっとの勇気というか、例えば一歩踏み出せない方とか、今の日常に刺激がなくてつまらないとか、嫌な思いをしていたりとか、普段を普通に楽しく生きている人でも、もっと楽しいことを見つけに行ってみようとか、その一歩を踏み出す力を、少し添えられたらと思っています。
ーミリーという女性の魅力や生き方、また共感する部分はどんなところでしょうか?
やっぱり生い立ちが似ているのでシンパシーを感じます。ミリーは女優を目指しているわけではないですが、田舎から出てきて、手に職をつけて都会で生きていきます。ここまでシンパシーを感じる役はミリー以外にないので、改めてわかるなという気持ちです。夢があって、田舎で収まりたくない、そこでお母さんやおばあちゃんになりたくないと思っている。私も外に出たい願望はやっぱりあったので、通ずるものがありますし、自分が宝塚に入ったときもそうでしたが、そういうときって揺るがないんですよね。
ー何が揺るがないのでしょうか。
決意です。どんなことがあっても。目標を立てて、その目標に向かって、多分当時若かったというのもあると思うんですが、猪突猛進になるのはすごくわかりますし、自分も同様にやってきたからこそ、その部分が役としてリンクすると思いますね。ミリーは私よりもっとひどい状況にいますよね。スリをされて、全財産盗られて。でもそれでもめげなくて、ミリーは私よりも全然強いです。そして、嫌味じゃないのがこの人の魅力で、ちょっと抜けていたりとチャーミング。一生懸命で誰に対しても真摯に向き合っているところは大切にしたいなと思っています。
ーキャストの方々が変わることによる変化はいかがですか?
変わることだらけですね。前回もみんな(役と)ぴったりだなと思ったんですが、またまたこんなにぴったりの人がいるんだという驚きです。ビジュアルを見た時点でぴったりだと思いましたが、台本を読んだらますますぴったりでしたから!
多分それぞれ役作りに悩みながらやっていらっしゃるとは思うんです。でも、ぴったりだからすごいですよね。ミリーはジミーによってどんどん変わっていきますが、まりまり(田代万里生)は優しいので。ジミーは最初に結構いろんなきついことを言ってきますが、やっぱり優しいから一緒にいると楽しく、自覚がなくてもミリーが惹かれていっちゃうんです。そして、ジミーはすごく頭がいいんですよ。返しがウィットに富んでいて面白い。まりまりが音楽を語るところなどご本人と似ていて、そういうスマートさを感じるジミーになっています。
そして、ねねちゃん(夢咲ねね)のドロシーが本当にぴったりで! ねねちゃんも、まりまりも、お芝居をするのは初めてです。ねねちゃんは『笑う男』で共演はしているんですが、絡みがなかったので、お芝居をするのは初めて。それなのに、1日目で「親友感ばっちり」と香さんに言ってもらったぐらいに、阿吽の呼吸でできます。もう本当に、超かわいいし面白いし、一緒にやっていて楽しいから、絶対に観ている方も楽しいと思います。出会ってその場で親友になるってすごいことですが、リアリティがあるんです。二人が目指しているものは全然逆なのに、阿吽の呼吸みたいなものは、ねねちゃんとだから出るのかなと思っていますね。
そして、マジー・ヴァン・ホスミア役の土居(裕子)さんがおっしゃるセリフが、スーッと入ってくるのですごいなと思っています。前回(保坂)知寿さんも大好きで、たくさんセリフを受け取っていたんですが、また新たなものをいただいています。本読みの時点で自然に涙が出てくる経験をしてすごいなと思いました。言葉を伝える力がすごいんだと思っています。楽しみでしかないです。
ー皆さんに伝えておきたいことはありますか?
再演ですが、全然違います。前回観てくださった方には楽しんでいただけたと思いますが、きっと同じものを観にきていると思えないと思います。ぜひ観て確かめて頂ければ嬉しいです。
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作品情報
ミュージカル『モダン・ミリー』
【東京公演】シアタークリエ
2024年7月10日(水)~7月28日(日)
【大阪公演】新歌舞伎座
2024年8月3日(土)、4日(日)
【愛知公演】Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
2024年8月11日(日)
【福岡公演】博多座
2024年8月16日(金)〜8月18日(日)
【東京公演】昭和女子大学人見記念講堂
2024年8月24日(土)、25日(日)
■あらすじ
1920年代のニューヨーク。「大切なのはロマンスよりも理性!」をモットーに、モダンガールに憧れて田舎町から出てきたミリーは、下宿先で知り合ったドロシーや偶然の出会いを繰り返すジミーと仲良くなったり、玉の輿を狙って就職した会社の社長・グレイドンに猛アプローチをかけたり、世界的歌手マジーのパーティーに参加したりと新しい生活を楽しむ。
そんな時、ドロシーが行方不明に!下宿先の女主人ミセス・ミアーズが、身寄りのない彼女を誘拐したと知ったミリーたちは、ドロシー救出作戦を決行!
果たしてミリーたちの運命は!?そして、ミリーが見つけた本当に大切なものとは――。
■キャスト
朝夏まなと 田代万里生 廣瀬友祐 夢咲ねね 大山真志
土居裕子 一路真輝
入絵加奈子 安倍康律
砂塚健斗 高木裕和 常住富大 堀江慎也 村上貴亮
伊藤かの子 島田 彩 橋本由希子 湊 陽奈 吉田萌美 玲実くれあ