中国時代劇ドラマ『楽游原』、ラブロマンスと華麗なる武力と知力の戦いを堪能（※ネタバレあり）

皇帝を倒して実権を握った反乱軍を鎮圧すべく、辺境の地を守っていた鎮西軍と大将軍が率いる崔家軍が立ち上がり、三つ巴の戦いを繰り広げるというストーリー。衣装などから唐の時代を感じられるが、架空の王朝の設定だ。

シュー・カイが演じるのは鎮西軍の元帥・李嶷（りぎょく）。皇帝の17番目の孫であり、十七郎とも呼ばれる彼は、人望も厚く頭脳明晰。しかしながら、父にはその能力が認められず、不吉な星の元に生まれたとして疎まれていた。それでも父が監禁されたと聞いて救出に向かうことに。

一方、ジン・ティエンは崔家軍の軍師として活躍する何校尉（かこうい）を演じる。阿蛍（あけい）という愛称にぴったりな美貌を持ちながら、男装して軍に加わっている。実は公には素性を隠していて、やがて明らかになっていくが、そのことが波乱も呼ぶ。

互いの身分を知らないまま、偶然に顔を合わせることが続いた2人。そんななかで互いの武力と才知を認めるようになり、戦局を乗り越えていく。

李嶷と何校尉が出会い、ひょんなことで顔が近づいて見つめ合うシーンがある。その瞬間は、見ているこちらがハッとする美しさで、これぞ運命というようなロマンスの香りが一気に漂う。見つめ合うシーンはその後、何度も登場して、ロマンスを際立たせる。ただ、反乱軍に立ち向かうという面では同じでも、属する軍が違う2人は、それぞれの立場、情勢によって、見つめ合いの眼差しに疑いの色が生まれたり、切なさを帯びたりもする。

ケンカするほど仲がいいという表現があり、そういったカップルを“ケンカップル”とも呼ぶが、李嶷と何校尉はまさにそうだ。ほほ笑ましい口げんかをしていたかと思えば、距離が近づいて甘い雰囲気になる。けれども次には使命や信念ですれ違ったりする。それぞれに思いを寄せるキャラクターも登場し、ロミオとジュリエットを思わせる展開も訪れてと、思いは盛り上がりながらも、恋路はすんなりとはいかない。

そんな2人の物語が魅力的なのは、頭脳明晰、武力に長けた者同士だからこその深い結びつきと信頼関係を築いていくところ。李嶷は先を読む力に優れ、深い洞察力があり、弓矢が得意で、刀使いもキレキレだ。何校尉もいくつもの戦いを切り抜けてきた経験と勇敢さを持ち、袖口に仕込んだ針を巧みに飛ばして武芸もできる。策略が張り巡らされた中での頭脳戦と肉弾戦を共にすることで愛が深まる2人を、シュー・カイとジン・ティエンが凛々しく、芯のある演技と華麗なアクションで見せる。

いくつもの思惑が絡み合って、先が読めない複雑な戦況の面白さと李嶷と何校尉の知将としての活躍と宿命。一緒に戦う仲間たちとの愛があふれた絆、狡猾な敵や陥れようとする人々に対するギリギリする思い、そこに挟み込まれる甘いロマンス。戦いと愛、どちらにもポイントが置かれ、それぞれの駆け引きのバランスのよさで物語に引き込まれる。グッと求心力を持つのは主人公たちが惹かれ合っていると認識してからだが、強いのにキュートさを持った2人の心が動いていく様子にキュンとする。李嶷と何校尉の精神面＆肉体面の強さで戦いの痛快さが増し、とろけるような甘いひとときと大小の障壁を乗り越える愛の強さに最後まで心が震える。

タイトルになっている“楽游原”は、李嶷と何校尉が幾度も訪れ、愛を確認したり、深めたり、決断したりもする象徴的な地だ。殺伐とした戦場とは打って変わって、緑豊かで、花が咲き誇り、川が流れる風光明媚な場所。その美しさがロマンスとアクションの物語を彩り、つないでいく。

（文・神野栄子）

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