https://news.tv.rakuten.co.jp/2023/07/ayanokanami02.html 【後編】彩乃かなみさんインタビュー:『カラフル』出演
ーーお稽古が進んでいるようですが、作品の印象はいかがですか。
昨日、最後の場面の振り付けが終わった所なのですが、振り付けの先生が最後その場面を通した時に、号泣されていたんですよ。作品に深く携わっていらっしゃる方が涙を流されているのを見て、パワーがある作品なのだなって実感しました。私も、自分が出ているシーン、出ていないシーンを問わず、思わずホロリと涙がこぼれそうになるような場面が続いていくんですよね。
私が思うこの作品の中心には「生きること」の鮮やかさがあるのですが、人は生きていく中で必ず他の人と向き合わないと、ひとりでは生きていけないじゃないですか。人と関わることによってできる痛みも、直視しなきゃいけない事がたくさんある中で、人の見えている部分って、本当に平面的というか。個人で見ると、実はその人が隠し持って抱えている悩みだったり、喜びだったり、人には知られたくないことだったり、いろいろな多面性がありますよね。例えば、こうやってお話しているときでも、何となく感じる印象とか、自分と関わった接点だけでしか相手の方を見られないけれど、その方にも勿論家庭があって、育ってきた環境があって、その中で生まれた思いや葛藤、出来事や志などをより知ると、その人がもっと立体的に見え始めて、それが、美しさであったり、瑞々しさであったり、人間の魅力になるみたいな、それらが集約された作品だなと思うんです。
登場人物の隠された想いが分かっていく過程でも、それぞれのエピソードに心動かされるところがあります。お話自体は自分とは絶対に違う体験だったりするのに、どこかで共感出来るというのは、作品を通して自分の父や母を感じたり思ったりすることがあるからかもしれません。自身とは同じ経験でなくても、ふと学生時代を思い出したり。多感な頃は特に、痛みを感じないで育ってきた方っていらっしゃらないと思うんですよね。ちょっとした同級生の一言、そんなつもりじゃなかった言葉が刺さっていたりとか、そういうことがありますよね。きっと何かしら皆さんの琴線に触れる場面があるんじゃないかなと、お稽古場にいながら思いますね。
ーーそうですね。<真の母>役を演じていていかがですか?
なかなか変わったお母さんなんですよね。<ぼく>役の鈴木福くんが言う「あんな親切そうなおばさんが」というセリフがあるのですが、一見するととても穏やかそうで親切そうに見えるけど、いろいろと本人は深刻な悩みを抱えていて、睡眠薬を飲まないと眠れないのかもしれないというのが結構重要な鍵だったりもするんです。でも、暗くなりすぎてもお母さんの魅力が伝わらないし、そのバランスを、演出の小林香さんとご相談しています。ちょっと憎めないかわいらしさもあるんですが、内情には、誰にも言えず抱え込んでいるものがあって、それがどうにも自分で処理できなくなってしまって、違うところに向かってしまう人なんです。何かそういう切羽詰まった危機感みたいなのもありながら、本人のシリアスさが端から見たらちょっと面白おかしくもあるような、その絶妙なバランスがここからのお稽古の詰めどころかなと思っています。
ーーある意味、人間の誰もが持つ大変なところというか……。
何て言っていいのかわからないですが、影でしょうか。
ーー作品のテーマが、ミュージカルになることによって伝わりやすいこともあるのかなと思うのですが、音楽はいかがですか?
実は原作を読んだときに、これがミュージカルになるってどんな風になるのだろうと思っていました。結構大事なことを、台詞ではなく音楽とともに運んでいかなきゃいけない場面が、ミュージカルはありますよね。でも、このシリアスでシニカルなシーンを音楽で運ぶからこその良さが存分に感じて頂けるシーンになっているかと思います。どの楽曲も本当に素敵なんですよ!思わず口ずさんでしまうようなメロディーと、真に関わるいろんな人たちのテーマ曲のような旋律が、それぞれの個性をすごく表していますし、楽曲自体もカラフルで色んなカラーがあり素敵です。
色が全然違っていて、またそれを歌う俳優の皆さんが、透明感のある声の方が多いので、稽古場で聞いていても、「浄化される!」っていう瞬間が何度もあるんです。声の周波数の持つ力みたいなものをすごく感じますね。一人ひとりの歌唱のスキルだけじゃなくて、声が折り重なったときに、またもうひとつ透明感が増す重なり合いになってるんです。
すごく思うのは、みんなひとりで生きているけれども、自分以外の誰かと重なるからこそ、勇気づけられたり、前に進むきっかけをもらえたりすると思うんです。またこの世界で頑張ろうとか、生きてみようという悩みの先にある力強さが、重奏と相まって背中を押す力になっているんじゃないかなと、今お話しながら思いました。色んな、それぞれの悩みやカラーを持った人達の声の重なり合いがこの作品の中でとても美しく生かされていて象徴的です。
ーーコーラスというと、一体になる美しさもあれば、それぞれの声が聞き取れるようなものもあると思いますが、どんなコーラスなんでしょうか。
それぞれの役が歌詞が違うものを同時に歌うというのは、今回あまりないのですが、重なり合ったときの癒し効果というか、じんわり深い場所に響いてくる感覚がありますね。多分作品の持つ全体的なイメージからくるものだと思います。歌詞やセリフがすっと入ってくる瞬間が幾度もありますし、作品テーマが重みがあるものですが、押し付ける説教っぽいものではなく、「あ、そうかもしれない」っていう、気づきが生まれる感覚のメッセージ性のある重奏かなと。これは森絵都さんの原作の、軽やかさと重さの絶妙なバランスだと思うのですが、それを香さんがミュージカルにされて、総括している素晴らしさかなと思いますね。
ーーミュージカルに書き換えているのがすごいんですね。
やはり小説なので、舞台作品にするには時間内に収めなきゃいけないということで、原作シーンを「泣く泣く削られた」というお話も伺いました。ですが、いま稽古場で演じていて、凝縮された『カラフル』の中にいる感覚があります。原作と共に、音楽が加わった今のミュージカル台本の世界観の素晴らしさを感じています。
ーーやっぱり彩乃さんの歌も楽しみです。
本当ですか!ありがとうございます。
ーーそれぞれの役に曲があるとおっしゃっていましたが、彩乃さんの歌う曲はどんな曲ですか?
自身の平凡さに不安を抱くお母さんの役なのですが、いろいろな習い事をコロコロと変えて自分探しを重ねていく事でさらに自分を追い込んでしまう場面の楽曲です。音楽的な変化も様々あり、焦っていく様子から、心情の変化と決意、息子への愛を最後伝えるという、起承転結がある、すごくドラマチックな楽曲になっています。その中でタンゴを躍りながら歌わせていただくのですが、自分的にはまだまだ難易度が高いと思いながらも、今までミュージカルで歌いながら踊るとか、ショーでやってきたことが、久しぶりに活かされるかなと楽しく感じてもいます。
ーー作品について、お客様にお伝えしておきたいことをお聞かせください。
原作の森絵都さんが稽古場にいらっしゃったんです。『カラフル』は25年前に生み出された本で、森絵都さんの言葉で言うと、この作品が成長してもう一人歩きしていると。「ご自身が感じられた、その人の役で演じていただいていいです」とおっしゃっていたんですね。多分、同じ作品であっても、ご覧になられる方の生きてきた人生と重ねて、どこが響くか、捉え方など変わってくると思うんです。それがすごく反映される作品じゃないかなと思います。
必ずどの方のお心にも響くところがあって、観てよかったなって思っていただけるかと。時にご自身の痛みにも触れるかもしれないですが、同時に何か解放されるような、優しい作品になっていると思います。見終わった後には、爽快感や、ちょっと壮大ですが地球で生きる素晴らしさや、家族の優しさなど、生きることの尊さが感じられる作品だと思いますので、その辺りをぜひお楽しみに観に来ていただけたら嬉しく思います。
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