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――劇団☆新感線が大好きでずっとご覧になっていたそうですが、外から見ていた新感線と、劇団の中に入ってから感じる違いはありますか?
本読みをさせていただいて、これからお稽古が本格的に始まっていくところです。いろんな刺激をいただきながら、皆さんとの時間を作っていくところなので、まだドキドキしている段階です。舞台を拝見していた時から、華やかでエネルギッシュなだけでなく、温かい印象もありました。キャストの方のみならず、劇場のお客様も皆さんが温かいイメージがあったんです。そのイメージは、初めて顔合わせをした本読みの日にも感じまして。ああ、イメージ通りで温かいなあと思いましたし、両手を広げて「ようこそ」と言ってくださっている雰囲気が、すごく印象的でした。ですから、観ていた時の印象と今の印象というのは、通ずることが多くて、これから頑張るぞと気合が入っています。
――実際に今回の脚本を手にされて、どういう印象を持たれましたか?
台本を初めて開く時は、緊張感がいつもあるんですが、今回も書き下ろしてくださった台本の1ページ目を開いた時も、身の引き締まる思いで、読み進めていきました。私が演じる紅子(べにこ)という存在がすごく好きで、その生き方や葛藤、迷い、苦しみ、そういうものに個人的にも心を掴まれました。自分がやるお役だからというだけでなく、心が自然と引っ張られて、魅了されるお役をさせていただけることが、すごく嬉しかったです。
紅子は鬼という架空の存在ですが、その鬼を演じさせてもらえるのがすごく嬉しくて。新感線さんの作品に出られることがまず嬉しいのに、さらにこんな素敵な紅子というお役だということにすごく感謝しました。
物語も面白くて、読んでいるうちに本当に心を動かされる場面がいくつもあります。それだけじゃなく、ギュッと心をひねり潰されるような、いのうえさんも製作発表の時に仰っていましたが、本当に生々しくて、ちょっとグロテスクで、という魅力もあります。いのうえさんの演出で、これが一体どのように舞台で息づいて作られていくんだろうかということが、読みながら、とても刺激的で、わくわくしました。
――紅子を演じること、そして、新感線の世界で生きるということで、ファンの皆様に、どんな新しい柚香さんをご覧いただけそうか、どこを期待してほしいかなどを教えてください。
まず「鬼」というは架空の存在ですが、私たち日本人にとって「鬼」と聞いたら、皆さん頭のなかにすぐイメージが湧くぐらいに、幼少期から身近な存在で、そういう架空の、人間じゃない役を、今の私が演じるということで、見せられる面がいくつかあるんじゃないかと思っています。さらに、鬼というだけではなく、娘時代から描かれている一人の女性であり、母親であり妻である彼女の「母親」「妻」というところが、今まではなかった役どころなので、新鮮さもあるんじゃないかなと思っております。
そして、新感線の舞台に出るということで、新感線の世界観であったり、音楽・照明の使い方などによって、私の新しい面がどんどん開いて、また引っ張り出していただけるんじゃないかと思います。また、今回のキャストの皆様と一緒にお芝居をすることで、新しく見える面が、本当に何面もあるんじゃないかと思います。
それに加えて、紅子というお役は、台本の中で本当に多くの面が描かれているんです。儚くて、切なくて、苦しくて、哀れで、という場面もあれば、「鬼だ!」みたいな場面もあり、さらに母としての姿、妻としての姿、自分の両親と関わる子どもとしての姿など、本当にいろんな面が表されるように、脚本の青木豪さんが場面を書いてくださっています。新しい「一面」だけではなくて、「何面」も皆様に楽しんでいただけるんじゃないかと思っています。
――妻で母親で鬼という、難易度の高い役を演じられますが、役作りや、気持ちの持っていき方とか、本読みに臨むにあたって、自分としてはこういうイメージでまずやってみようとか、何か思い描いていることはありますか?
まずは自分でイメージを膨らます前に、平安時代の貴族の暮らし、そして農民たちの暮らしなどを調べて、本読みの前に土台作りから準備しました。妻であり、母であり、鬼であり、でもそこにはまた違う事情があるという、いろんな立場を持っているということで、すごく複雑ですし、どういうふうに作っていくのか、架空の存在だけに難しいところもたくさんあると思いますが、いのうえさんの頭に描いていらっしゃるもの、青木さんの頭に描いてらっしゃるものを、柔軟に取り入れて、作品作り、役作りをしていくことがすごく大事だと思うので、今は、自分の役を固める前の段階のところを大事にしようと思っています。
――ポスタービジュアルもすごく素敵ですが、撮影したあたりから、ご自身のなかでビジュアル的にも少しイメージが湧いているものがあったんでしょうか?
真っ赤な衣装を身にまとって、下には長袴を着ていたのですが、その力で、おとぎの世界、平安の時代に対して、心が寄っていくことはありました。赤い衣裳のパワーを感じましたね。赤という色は強いエネルギーを持っていますし、赤を身にまとうだけで気持ちがカッと入るみたいなことを感じたり。
2025年劇団☆新感線45周年興行・夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』
●あらすじ
昔々、そのまた昔。都には鬼が現れ、人々を襲っていた。
貴族である源蒼(鈴木拡樹)の家臣、坂上金之助(喜矢武豊)も鬼に襲われるが、反撃して片腕を斬り落とすと、鬼は捨て台詞を吐いて飛び去った。
これを蒼に報せると、それを聞いた同じく家臣の碓井四万(千葉哲也)は、蒼の奥方が神隠しに遭ったのも、鬼の仕業ではないかと言い出した。
10年前のある朝、奥方の紅子(柚香光)と娘の藤(樋口日奈)は忽然と姿を消した。庭には鬼らしき足跡が一対、残されていたという。
それから紅子たちの行方は杳として知れない。
それでも「紅子と藤は生きている」と信じる蒼は、鬼の根城を探し出し、二人を取り戻そうと心に決めて、金之助、四万、そして桃千代(一ノ瀬颯)らと陰陽師の阿部辺丁迷(あべべていめい)のもとへ。だが、そこに金之助を襲った鬼の栃ノ木(早乙女友貴)がやってきて、桃千代を連れ去ってしまう。栃ノ木を追いかけ、蒼たちはシノナシ国へ向かった。
その頃、紅子と藤、紅子の両親は、シノナシ国の小さな村に身を寄せていた。紅子と藤の舞の見事さに村長の八十八(粟根まこと)は感心するばかり。そして八十八に尋ねられた紅子は、村を訪れた経緯を語り始めるが……。
ともに生きるか、ともに死ぬか――。
血の宿命に引き裂かれた二人の、哀しきお伽噺が今、幕を上げる。
●キャスト・スタッフ
出演:柚香光/早乙女友貴、喜矢武豊、一ノ瀬颯、樋口日奈/粟根まこと、千葉哲也/鈴木拡樹 ほか
作:青木 豪
演出:いのうえひでのり
●公演情報
【大阪公演】SkyシアターMBS
2025年5月13日(火)〜6月1日(日)
【東京公演】シアターH
2025年6月24日(火)〜7月17日(木)
スタイリスト:大園蓮珠