今回は家にまつわる日本ホラーを紹介。窓に映る影、風に舞うカーテンなど、家で“あるある”な状況に背筋が寒くなる……。
残穢 -住んではいけない部屋-
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雑誌で読者から募集した怪談話の連載をしている小説家の主人公「私」(竹内結子)の元に、女子大学生の「久保さん」(橋本愛)から手紙が届く。1人暮らしするマンションの部屋で、奇妙な“音”がするのだという。和室の畳をするような音で、その後、あるはずのない着物の帯のようなものを見かける。好奇心を抑えられず、「私」と「久保さん」は調査を開始する。
音から始まる恐怖。1人で部屋にいて不意な音に驚くことは、誰しも経験しているのではないだろうか。日常の中で立てられるような音であればあるほど、ドキリとする。
「私」は怖い話を書きながらも、心霊現象には否定的な人物。「久保さん」は、建築デザインを学び、ミステリー研究会の部長もしている。そんな2人が謎をたどっていくのだが、大前提でそのマンションでは一度も自殺や死亡事故などが起こっていないのだという。しかし、マンションの過去の住人たちが、引っ越し先で自殺や心中などを起こしていたということで謎が膨らむ。
現在は、前の借主が事件や事故などで亡くなった場合、心理的瑕疵(かし)物件として告知義務がある。しかし、本作では「住んではいけない部屋」なのに、そういった物件ではないというミステリアスさ。では、その真相は…というところで、自分の住んでいるところは大丈夫なのかという思いを抱く。謎の解明に引き込まれているうちに、身に迫ってくるような感じなのだ。そして、ひとところだけでは収まらない連鎖性。日本ホラーらしい怪奇さで、ジトっとした怖さが立ちのぼってくるのである。
事故物件 恐い間取り
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前述の心理的瑕疵物件、通称・事故物件をあえて借りるというのがこの物語。“事故物件住みます芸人”の松原タニシの実話を、『リング』などを手掛けた日本ホラーの名匠・中田秀夫監督が映画化した。
売れない芸人の山野ヤマメ(亀梨和也)は、テレビ番組への出演を条件に事故物件で暮らすことに。その部屋で撮影した映像に白い“何か”が映っていたことで番組は盛り上がる。やがて、ネタ欲しさに事故物件を転々としていく。
“何か”はただの偶然なのか、心霊現象なのか。初めはささいな現象だったが、芸人・ヤマメのファンで、テレビ局でメイクアシスタントをする梓(奈緒)が霊感を持っていることで恐怖をあおられる。彼女の目に映るものが怖いのだ。
事故後にきれいに清掃された部屋であっても、血痕が残っていたり、洗面台の排水口に髪の毛が詰まっていたり。そんな気味悪さは単に不動産会社にちゃんとしてほしいと思うところだが、それ以外に部屋でゾワっとするような現象が次々と発生。チャイムが鳴ってドアを開けても誰もいなかったり、誰もいないのに隣の家の防犯センサーが光ったり、ドアが勝手に開いたり。思わず自分の部屋を見回してしまうような、起こりうると想像できる現象ばかりだ。家というシチュエーションであるがゆえ、こんなことあったかもという記憶がもたげてきて、それが恐怖心を呼ぶ。
そして、自分の意思に反して首吊り寸前になるといったヤマメの身に危険が迫るだけでなく、留守電に奇妙な音声が残されたり、ヤマメの元相方で放送作家として事故物件番組に関わる中井(瀬戸康史)の家族に不幸が起きたりと、不可解な出来事が外にも広がっていく展開へ。
説明のつかない出来事という日本ホラーの薄気味悪さを重ねて、怨念がある場所に住むことの恐怖が襲い掛かってくる。
パラノーマル・アクティビティ第2章/TOKYO NIGHT
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本作は、ある一軒家で起きる怪奇現象を描き、大ヒットしたアメリカ映画『パラノーマル・アクティビティ』の日本版続編。フィクションだが、ドキュメンタリーのような映像の「モキュメンタリー」といわれる演出スタイルで、これがホラーとの相性が抜群(!?)なのだ。
東京の閑静な住宅地にある一軒家で、父と姉弟の3人で暮らす山野家。長女の春香(青山倫子)は、旅先のアメリカで事故に遭い、しばらく車いす生活に。父は海外出張が多く留守がちで、自力で歩けない春香の世話を浪人生である弟の幸一(中村蒼)がすることに。しばらくして、寝ているうちに車いすが移動しているなど謎の現象が起こる。幸一は、買ったばかりのビデオカメラを春香の部屋に仕掛け、謎の現象を撮影しようとする。
ラップ音に始まり、盛り塩が荒らされたり、コップが突然割れたり、部屋のドアが勢いよく開いたり。超常現象のオンパレードを、ザラッとした映像で映し出すのだからたまらない。また、部屋にカメラが設置されている設定で、定点での映像で何が起きるのか見守るドキドキ感もある。コップが割れるなどあり得ないと思っても、もし起きたら…と考えたらゾクリ。
実は、本家アメリカ版と話がつながるのだが、アメリカ版を見ていなくても十分に日本ホラーとして恐ろしい。日本の生活感を感じる家
でジワジワ追い詰められる空気感がヒンヤリと漂う。
(文・神野栄子)
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