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――私も改めて拝見して、和物多かったなという、今のお話につながるなと思ったんですが、3作品を選んでくださった理由はありますか?
どの作品も思い入れがすごくありますし、いつも「この作品が退団公演になっても悔いはない」と思う気持ちで、すべての作品に対して、自分のその時の最高の力を出し切るという気持ちで挑んでいたので、選ぶのが難しいんですが、3つ選んでくださいと言われたので…(笑)。
その中でも自分がというより、出演者のみんなが、その子たちにとって「この作品によって自分がひとつ階段を登れたんだ」と思ってもらえるようなものにしたいというのは、自分が座長の時にいつも思っていました。何を教えてあげられるかとか、伝えてあげられるかというのは、その作品によって中身は違うんですが、とにかく下級生の子たちが生き生きとそれに挑むことができたかというものが自分の中で選んだ理由のひとつです。
それぞれが卒業する時に、『風の次郎吉 -大江戸夜飛翔-』に出られてよかったなとか、『THE ENTERTAINER!』に出られてよかったなとか、そういう風に言ってくれる子たちが非常に多かったので、そういう声が多かった作品を選びました。
――最初に『風の次郎吉 -大江戸夜飛翔-』を選んでくださった理由や、当時の思い出、ご覧いただく方に伝えたいことなどをお聞かせください。
186010 (c) 宝塚歌劇団 https://tv.rakuten.co.jp/content/186010/
立ち回りが非常に好きだったんですが、次郎吉は、武器も刀も何も持っていないので、素手で戦うしかなかったのと、蜘蛛の巣を出すくらいしかない中で、結構立ち回りが多くて、それが大変だったなという気持ちもあります。当時の花組が「刀を持ったことがないの!?」とびっくりしてしまうくらい、立ち回りを経験したことのない下級生が多かったので、基本のところから全部教えて、稽古したのが本当に大変でしたね。ただ、どんどん成長してくれていたので、そういう部分では本当に面白かったです。
三味線をみんなで生演奏するシーンがあったので、三味線を扱ったことのない子たちが一からみんなで稽古したりもしました。あの時の花組さんは、何もやったことがないものにいろいろとチャレンジすることが多かったので、教えるほうはもちろん大変ですけども、その子たちにとって、やれてよかったと思ってくれているので、非常に良かったんじゃないかなと。
また、私は専科に3年間いたんですが、いつ自分が辞めても悔いがないような挑み方をしたいとも思いましたし、次の飛躍につながるタイミングだと思っていました。その時の千秋楽の挨拶で、「尺蠖(しゃっかく)の屈するは伸びんがため」という言葉があって、尺取り虫が屈んでいるのは前に前進するためのことなんだよという言葉を話したんですけども、ちょうど自分自身が本当に尺蠖が縮んで前に進んでいない、何とも言えない停滞していた時期でしたので、自分自身への応援でもありましたし、励みでもありました。
――これからご覧いただく方に、ここが見どころというのはありますか?
自分というよりは、この作品に出ていた隅から隅までいる子たちが、みんな立派な役者さんに成長して、今、活躍している子たちも多いので、そういう下級生の子たちの若かりし頃の部分を楽しんでもらえたら嬉しいかなと思いますね。
――すごく鮮やかに人々が生きている物語だなと思いました。
そうなんですよね。
――それぞれの個性を下級生の皆さんが作っていくなかで、アドバイスされたりしましたか?
自分自身がそうですが、何かの役やパフォーマンスをする時に、萎縮するような環境を作ってはいけないと思っていました。もちろん上下関係というのは、どこの仕事場にもありますが、自分が実際に戦場に出て、力を発揮するとなったら、各々の己の問題なので。そういう部分では、本人たちが今の自分が持っている最高の力を出し切れるような環境を作ってあげるというか。
だから、みんなが本当にのびのびやっていたんですよね。自由でしたからね。どんな芝居しようが、全部こっちがキャッチしてフォローしますという感じでした。大暴れする子もいるし、転ぶ子もいるし、でもそれを全部端から端までキャッチしてアドリブに変えていくという、だから何でも来いでしたけど。
――きっと北翔さんならではの環境ですね。
いえいえ(笑)。
北翔海莉 & 錬磨 「PULSE」
186010,241953,267182