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ーーところで、「エンターテイメント」には人の心を揺さぶり動かす「力」があると思うのですが、高橋さんはどう思いますか?
もちろん思っていますし、今、そういうふうに言ってくださったことが救いです。
なぜかというと、「心を揺り動かされる」と上辺で言う人は多いですが、2020年以降どうなったのか。文化や芸術や娯楽に対して一部敬意が損なわれたことは、僕は忘れたくないです。
ーーコロナ禍においては「自粛」という名のもと、さまざまな規制が設けられました。
オペラ歌手の方にフェイスシールドの着用を求めたりなど、それらがすべて“そのときの空気”のもと醸成されていった、あの背景を見てきた人間としては、これはちょっと忘れちゃいけないなと思っている風景の1つではあります。
ーー今、振り返ると、エンタメ界でも深い心の傷を負った人は多かったかもしれません。
外出禁止のような雰囲気になっていましたけれど、しっかりとした法律があったわけでもなく、ただ外にでただけで叩かれたりすることもあったと思います。
「不要不急なことはやらないでください」という言葉は、本当に恐ろしい一言だなと今でも思います。5年も6年も経つと忘れがちになりますが、これは絶対に忘れちゃダメだなと思っていて。
ーー忙しい日常に埋もれると、辛い記憶もつい頭の片隅に追いやられてしまいます。
あれから5年、僕はずっと考えていました。もっと前から考えていたとは思いますが、言語化してしっかりと自分のなかに体系づけたのは、あれがきっかけでした。むしろ僕は良かったと思っているんです。これだけ考え方がはっきりしてきましたし。
結局、芸術とは何かといったら、高尚なものでも何でもなく、ティッシュの箱のデザイン1つとっても「芸術」であり「文化」なんです。その文化の尊厳に関しては、俳優として自分がもっと危機感を持っていなければいけないな、ということがはっきりわかりました。
ーー自分の仕事に対する思いが明確になった。
僕らも俳優として文化の端っこのほうにいると思うんですけれど、その文化というものを守っていくことはやっていかなければならない。ただ、先ほどお答えしたように、それがどれだけ伝わっているかは、そのときの社会の空気などによるので、こればかりは本当に運だなと思っています。
「娯楽」は「文化」の土壌になっていると思うんです。ここ最近は、自分はどうなってもいいから、しっかりと「文化」を守らないと、と本当に感じています。
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連続ドラマW 1972 渚の螢火
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